バットレスダムとは

バットレスダムは、水をせき止める薄い鉄筋コンクリートの遮水壁を、その下流側に一定の間隔で並べた扶壁(バットレス)で支える形式のダムである。記録では「バットレス式鉄筋コンクリート造堰堤」と書かれる。遮水壁が受ける水圧を、扶壁が斜めに受け止めて地盤に伝える。

多くのダムは、堤体そのものの重さで水圧に耐える重力式である。重力式は構造が単純で丈夫だが、堤体の全体をコンクリートや石で満たすため、大量の材料を必要とする。バットレスダムは、遮水壁と扶壁だけで水圧を受けるため、材料の量と堤体の重さを大きく減らせる。一方、鉄筋を組んだ薄い部材を精度よく造る必要があり、施工は複雑になる。

日本では、昭和初期に水力発電用の貯水池堰堤として建てられた例がある。群馬県の丸沼堰堤は、内務省土木試験所長の物部長穂の設計により昭和3年(1928年)に着工し、昭和6年(1931年)に竣工した。文化庁の解説は、厳しい立地と地質の条件を克服するため、資材の減量と躯体の軽量化を実現したバットレス式堰堤として、我が国を代表する遺構としている。

記録と実物で見分ける手がかり

記録では、「構造及び形式等」欄に形式と規模が並ぶ。丸沼堰堤は、堤長88.2メートル、堤高32.1メートルのバットレス式鉄筋コンクリート造堰堤で、重要文化財に指定されている。岡山県の平作原発電所恩原貯水池堰堤は、遮水壁を扶壁で支える堤長94メートル、堤高24メートルの同じ形式の堰堤で、記録は耐震に関する物部長穂の研究成果をいち早く取り入れ、躯体の軽量化と資材の減量を図った類例の少ない形式と書いている。

現地では、堰堤を下流側から見る。重力式のダムは、下流面が一様な斜面の壁として見える。バットレスダムでは、下流側に三角形に近い形の扶壁が櫛の歯のように並び、そのあいだから遮水壁の裏側がのぞく。扶壁の頂部を天端の通路や高欄が結んでいることも多い。

重力式の堰堤の記録には「重力式コンクリート造堰堤」「重力式練積堰堤」などと書かれ、形式名で区別できる。

参考文献

丸沼堰堤|文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/149021
平作原発電所恩原貯水池堰堤|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005989

最終更新: 2026.09.26