漆箔とは

漆箔は、漆を接着剤として金箔を押し、器物や像、建物の表面を金色に仕上げる技法である。木彫の仏像では、木地の上に布を貼り、砥の粉などを漆で練った下地を重ねて表面を整え、その上に漆を塗って金箔を置く。修禅寺の大日如来坐像の解説は、この工程を「布貼、サビ下地、漆箔仕上げ」と記している。如来像の全身を金色に表すのは、仏の身体が金色に輝くとされることによる。

金色に仕上げる技法はほかにもあり、記録では書き分けられる。金泥は金の粉を膠で溶いて絵具のように塗るもので、東大寺戒壇院千手堂の千手観音像の解説は「金泥塗」と記す。截金は細く切った金箔を貼って文様を表すもので、漆箔の上や彩色の上に重ねて使われる。鍍金は銅像などの金属の表面に金をかける技法で、木彫像の漆箔とは別物である。材料としての金箔そのものは別の項で扱う。

建物にも漆箔は用いられる。中尊寺金色堂は、縁から軒先に至る内外すべてに黒漆を塗って金箔を押した堂として記録されており、建物全体を金色に仕上げた数少ない例である。

記録と実物で見分ける手がかり

彫像の解説では、漆箔が当初のものか後補かが重要な情報として記される。円教寺の阿弥陀如来坐像は「後補の漆箔」に覆われていると書かれ、修禅寺の大日如来坐像では表面の漆箔の過半が後補とされる。漆箔は傷みやすく、修理のたびに塗り直されてきたため、現在の金色が造られた当時のものとは限らない。

全面を漆箔とせず、一部にだけ用いる像もある。四天王像などでは、冠の台や甲の縁に漆箔を施し、ほかを彩色とする例が見られる。反対に、白檀などの香木で造った檀像は、木肌を見せる素地仕上げとするのが通例で、漆箔を施さない。

実物では、金色の表面に黒や褐色の斑が見えるのは、箔が剥げて下の漆層が現れたものであることが多い。古い像の金色が落ち着いた色合いに見えるのも、箔の摩耗と漆層の露出による。剥落の状態から、下地の構成や塗り直しの回数が調べられることもある。

参考文献

木造大日如来坐像(伊豆市)|しずおか文化財ナビ
https://www.pref.shizuoka.jp/kankosports/bunkageijutsu/bunkazai/1002825/1041003/1041884/1004957/1020740.html
木造阿弥陀如来坐像(円教寺)|文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/197343
中尊寺金色堂|文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/199039
厨子入/木造千手観音立像/木造四天王立像(戒壇院千手堂安置)|文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/199046
木造四天王立像(海住山寺)|文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/154721

最終更新: 2026.09.26