酒造りの工程がそのまま形になった建物

旧本間酒造酒蔵及び釜屋は、群馬県前橋市総社町総社にある大正期の酒造施設で、平成28年(2016年)2月25日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

旧街道に面した店舗兼主屋の背後、敷地の北寄りに建つ。洗米から仕込みまで、酒になる前の米が通る工程はすべてこの屋根の下で行われていた。

中心となるのは酒蔵で、土蔵造の二階建。厚く塗り込めた壁が、榛名おろしの吹く上州の冬でも蔵の中の温度を一定に保つ。屋根を支えるのは和小屋である。内部で目を引くのは、あるものではなく無いものだ。上下階とも間仕切りを設けず、それぞれ一室としている。仕込み桶は背が高く、桶と桶のあいだを人が行き来する必要があったためで、戸や壁は邪魔になった。

東側に付属するのが釜屋で、洗米と蒸しを担い、立ちのぼる蒸気と煙を外に逃がす役割も負っていた。南側には下屋が長く張り出す。地元でオロシと呼ばれてきた部分で、日を遮った作業床が、離れた工程どうしを一本の流れにつないでいる。文化庁の登録では、これらをあわせて土蔵造二階建及び木造平屋建、瓦葺、建築面積524平方メートルの1棟として扱う。

前橋市の解説によれば、本蔵の建造は大正2年(1913年)、釜屋は大正5年(1916年)で、国のデータベースが示す大正期(1912〜1926年)の幅にちょうど収まる。本間酒造は昭和44年(1969年)まで醸造を続け、敷地内では立飲(イノミ)も営んでいた。醸造をやめた後は仕入販売に切り替え、平成26年(2014年)まで営業していた。

登録の理由と、この建物にしかない価値

登録は第83回の登録分にあたり、登録番号は10-0326。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。この一文が指しているのは、一棟の建物の見栄えより広い範囲のことだ。前橋にはかつて多くの造り酒屋があったが、稼働していた蔵の建物はごくわずかしか残らず、工程の配置まで保った例はさらに少ない。

ここでの価値は、読み取れることにある。庭に立てば、東に洗米と蒸し、中央の高い空間に仕込み、その二つを南の下屋がつなぐという並びが、そのまま平面から見て取れる。設備を近代化した蔵では、タンクとポンプが古い空間の理屈を不要にし、壁がまず取り払われる。本間酒造の敷地では、その理屈がまだ壁として残っている。

建物は本間家からの寄付を受けて前橋市の所有となり、街道に面する店舗兼主屋と同じ日に登録された。二棟は別々の発見ではなく、一つのまとまりとして扱われている。

見どころと、訪ねる前に知っておきたいこと

まず壁の厚みを見てほしい。土蔵造は開口部でその厚さを露わにする。窓や戸は壁の短いトンネルの奥にあり、晴れた日に敷居をまたぐと、体感温度が変わるのがはっきり分かる。

次に酒蔵の二階で天井を見上げる。間仕切りが無いおかげで小屋組が端から端まで一続きに見え、煤で黒ずんだ材が、この空間をどれだけの熱が通り抜けたかを示している。

南のオロシは、ゆっくり歩く価値がある。複合施設のなかで最も飾り気がなく、使い込まれた痕跡が最も素直に出ている場所で、作業ごとに床の高さが変わる。

交通は分かりやすい。JR上越線・群馬総社駅から東へ徒歩約20分、関越自動車道前橋インターチェンジからは車で約10分で、敷地内に駐車できる。

実際に行く前に確かめておきたい点がある。酒蔵は常駐の職員がいる資料館ではなく、決まった開館時間を持たない。開くのはイベントのときで、蔵の中でコンサートや展示が催されてきた。隣の店舗兼主屋は土曜・日曜を中心に「HONMAYA(ホンマヤ)」として開場している。外観と敷地はいつでも見られ、撮影も自由だが、内部については当日の催しによって可否が変わるため、その場で確認したい。開場状況は前橋市教育委員会文化財保護課(027-280-6511)で確認できる。

半日とれば周辺も回れる。総社は古代の史跡が集まる地区で、宝塔山古墳・蛇穴山古墳など切石を精緻に組んだ石室をもつ総社古墳群が南へ歩いてすぐ、東日本最古級の本格寺院跡である山王廃寺跡も近い。二つの古墳のあいだに建つ前橋市総社歴史資料館は午前9時から午後4時まで、月曜休館で、最初に立ち寄る場所として都合がよい。

Q&A

Q旧本間酒造酒蔵及び釜屋の内部は見学できますか。開館時間はありますか。
A決まった開館時間はありません。酒蔵はコンサートや展示、地域の催しの会場として使われており、内部に入れるのはそうした開催日に限られます。外観と敷地はいつでも見学できます。開催予定は前橋市教育委員会文化財保護課(027-280-6511)にお問い合わせください。
Q旧本間酒造では今も酒を造っていますか。
A造っていません。醸造は昭和44年(1969年)に終わり、その後は仕入れた酒を売る小売業として平成26年(2014年)まで営業しました。建物は現在、前橋市の所有です。
Q旧本間酒造酒蔵及び釜屋へは公共交通機関でどう行けますか。
AJR上越線・群馬総社駅から東へ徒歩約20分です。JR前橋駅北口からの路線バスも総社地区を通り、「ぐんまみらい信用組合前」下車後、徒歩数分で着きます。車の場合は関越自動車道前橋インターチェンジから約10分、駐車場があります。
Q旧本間酒造酒蔵及び釜屋の「オロシ」とは何ですか。
A酒蔵の南側に広く張り出した下屋と、その下の作業空間を指す地元の呼び名です。洗米・蒸しを行う釜屋側と仕込みの空間とをつなぎ、風は通すが雨は当たらない作業床として使われていました。
Q旧本間酒造酒蔵及び釜屋の近くには何がありますか。
A徒歩圏に総社古墳群があり、宝塔山古墳と蛇穴山古墳は加工した安山岩の切石で組んだ石室で知られます。山王廃寺跡や前橋市総社歴史資料館も近く、資料館は入館無料、月曜休館です。

基本データ

名称旧本間酒造酒蔵及び釜屋(きゅうほんましゅぞうさかぐらおよびかまや)
所在地群馬県前橋市総社町総社字町屋敷南乙1500
指定区分国登録有形文化財(建造物) 登録番号 10-0326
指定年平成28年(2016年)2月25日登録
員数1棟
寸法土蔵造2階建及び木造平屋建、瓦葺、建築面積524平方メートル
所有者前橋市
公開状況常時公開ではない。イベント開催時に内部公開。外観は随時見学可。駐車場あり。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — 旧本間酒造酒蔵及び釜屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010918
文化遺産オンライン — 旧本間酒造酒蔵及び釜屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/298899
前橋市 — 総社・清里の文化財を訪ねて
https://www.city.maebashi.gunma.jp/soshiki/kyoiku/bunkazaihogo/gyomu/3/2/1/5116.html
前橋市 — 「旧本間酒造店舗兼主屋」「旧本間酒造酒蔵及び釜屋」が国登録有形文化財に登録されました
https://www.city.maebashi.gunma.jp/soshiki/kyoiku/bunkazaihogo/gyomu/3/4/5118.html
前橋フィールドミュージアム — 前橋市総社歴史資料館
https://maebashi-bunkazai.jp/modules/site/index.php?action=PageView&page_id=1

最終更新日: 2026.08.08