藤生家住宅茶室 ― 庭園に臨む書院式の茶室

藤生家の敷地北西、生業の建物から離れて庭に面する小さな平屋がある。これが茶室である。八棟のうち最も数寄の意匠を凝らした建物で、実用ではなく接客と遊興のために建てられた。平成19年(2007年)に屋敷全体とともに登録された。

建立は明治前期(1868〜1911年)。内蔵の北西に位置する木造平屋建で、寄棟造・桟瓦葺、建築面積は約22平方メートル。茶室は4畳半、床棚を構えた書院式とする。

登録の経緯と価値

茶室は平成19年5月15日、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準で登録された。敷地北西の庭園景観の主要素として評価される建物である。主屋や内蔵が農と収蔵を語るのに対し、この茶室は上層農家の文化的な一面、すなわち茶の湯のための一室を常に構えるだけの余力と嗜みを示している。

意匠は細部に見どころがある。南面から西面へは濡縁を回し、室を庭に近づける。東面には鉄板葺の下屋を付けて縁とし、北に便所を突出させる。壁は真壁造とし、柱を露しつつ中塗仕上げにとどめることで、華美に走らない素朴な肌合いを保つ。書院式の床棚が、鄙びた草庵ではなく格式ある茶席であることを示す。

見どころ

茶室は室内から使うと同時に、庭から眺められることを前提に設けられている。低い寄棟屋根、露しの柱、二面を巡る濡縁が、建物を植栽に溶け込ませる。内部の書院式の床棚は、これが草庵風の鄙びた小屋ではなく、整えられた茶席であることを告げる。

茶室は、主屋・隠居屋・内蔵・水車小屋・表門・外塀・稲荷社覆屋からなる屋敷の、北西の一隅を締めくくる。藤生家住宅は暮らしのある私有地で非公開のため、茶室も庭も敷地の外から垣間見るにとどまる。歴史的な室内に座したい場合は、近隣で公開され、折々に茶会も開かれる彦部家住宅を訪ねるとよい。

Q&A

Q茶室における書院式とは何を指しますか。
A床と棚を備えた格式ある接客様式を書院式といいます。草庵風の鄙びた造りに対して建築的に整った作りで、この茶室も床棚を構えた書院式に倣っています。
Q茶室の広さはどれくらいですか。
A茶席は4畳半で、茶室の標準的な広さです。濡縁や便所棟を含めた建物全体では約22平方メートルとなります。
Q濡縁とは何ですか。
A屋根の下に取り込まず、雨に濡れるまま外に張り出した板縁のことです。ここでは南面から西面へ巡らせ、茶室を庭に近づける役割を果たしています。
Q茶室や庭園は見学できますか。
Aできません。いずれも私有住宅の一部で非公開です。広沢町6-877の彦部家住宅(重要文化財)が土・日・祝日の10時〜16時に公開され、入館料は大人500円、小人300円です。

基本情報

名称藤生家住宅茶室(ふじうけじゅうたくちゃしつ)
所在地群馬県桐生市広沢町5-1179
種別登録有形文化財(建造物)
登録年月日平成19年(2007年)5月15日 第54回登録/登録番号 10-0214
時代明治前期(1868〜1911年)
構造及び形式木造平屋建、瓦葺、建築面積約22平方メートル、4畳半書院式茶室
員数1棟
公開状況個人住宅につき非公開

References

国指定文化財等データベース(文化庁)― 藤生家住宅茶室
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006111
文化遺産オンライン(文化庁)― 藤生家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/171392
桐生市 ― 国登録文化財一覧
https://www.city.kiryu.lg.jp/kankou/bunkazai/1010700/kunitouroku/1001989.html

最終更新日: 2026.07.02