小林家住宅(旧小武織物有限会社)とは ― 織物工場と住まいがひとつの敷地に

小林家住宅(旧小武織物有限会社)は、群馬県桐生市広沢町にある昭和10年(1935年)創業の織物工場兼住宅で、主屋・工場・倉庫2棟・石垣・塀の6件が平成26年(2014年)10月7日に登録有形文化財となった。読みは「こばやしけじゅうたく(きゅうこたけおりものゆうげんがいしゃ)」。「小武」は「こぶ」ではなく「こたけ」と読む。

敷地は桐生の市街地の南を流れる渡良瀬川の右岸、いちばん低い河岸段丘の上にある。桐生市教育委員会の解説によれば、屋敷には住まいとしての主屋のほか、創業から戦後の高度成長期にかけて建てられた織物業の建物が並び、日本瓦の切妻造の主屋と切妻屋根の工場、水防を兼ねた石垣と板塀がまとまって残っている。

桐生商工会議所の資料では、小武織物は小林武一郎が昭和10年(1935年)に始め、昭和34年(1959年)に小武織物有限会社となった。主に袋帯を織り、座敷に帯を広げて商談をしたという。のちにレース製品も手がけたが、昭和51年(1976年)に織物業をやめている。武一郎は桐生市議会議員や桐生商工会議所の副会頭を務めた人物でもある。

屋敷の配置 ― 石垣の内側に何が建っているか

小林家住宅の敷地は、南面と西面を玉石積みの石垣が囲み、南面の石垣の上には板塀が続く。門は南面の東寄りに開き、入口で石垣と塀が折れ曲がる。門を入ってすぐ東側に倉庫二、その向かいに倉庫一があり、どちらも石垣の上に載っている。

主屋は敷地の西側に東を向いて建ち、北半分の土間がそのまま工場へつながる。工場は主屋から東へ延び、南北方向の切妻屋根の建物を4棟平行に並べた形をとる。桐生市の解説は切妻屋根の工場を5棟と数え、そのうち1棟を登録の対象外としている。桐生商工会議所の資料には昭和42年(1967年)に増築した工場の記述があり、塀の西端がつながる作業員宿舎も登録には含まれていない。

建物の年代は、文化庁の登録データで主屋が昭和6年(1931年)頃、工場が昭和23年(1948年)で昭和29年(1954年)に改修、石垣と塀が昭和28年(1953年)頃、倉庫一が昭和36年(1961年)、倉庫二が昭和37年(1962年)とされる。住まいを核に、工場と倉庫が操業の拡大に合わせて足されていった順序が、配置からも読み取れる。

渡良瀬川と水防の石垣

小林家住宅(旧小武織物有限会社)が低い段丘の上にあることは、この屋敷の姿を決めた条件のひとつである。文化庁の解説は、石垣を台風による水害のあとに築かれたものとし、工場と住宅を守る役目を持つと説明する。桐生商工会議所の資料は、その台風を昭和22年(1947年)9月に渡良瀬川流域へ大きな被害をもたらしたカスリーン台風(資料では「キャサリン台風」)としている。

石垣の総延長は82メートル、その上を走る塀は49メートルに及ぶ。門の入口で両者がそろって折れ曲がるので、敷地の外から見ると、石と板の二段の構えが屋敷の南面をひと続きに縁取っている。倉庫一と倉庫二も、この石垣の上に建てられている。

登録された6件

小林家住宅(旧小武織物有限会社)の6件は、いずれも平成26年(2014年)10月7日の第78回登録で登録有形文化財(建造物)となった。登録番号は10-0313から10-0318までの連番で、登録基準はすべて「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

  • 主屋(10-0313):木造平屋一部2階建、建築面積332平方メートル
  • 工場(10-0314):木造平屋建、建築面積276平方メートル
  • 倉庫一(10-0315):コンクリートブロック造平屋建、建築面積21平方メートル
  • 倉庫二(10-0316):コンクリートブロック造平屋建、建築面積19平方メートル
  • 石垣(10-0317):石造、総延長82メートル
  • 塀(10-0318):木造瓦葺、総延長49メートル

桐生の織物工場といえば鋸屋根が知られるが、この屋敷の工場は切妻屋根を連ねた形で、文化庁の解説も市内の工場建築の一例として位置づけている。工場と住まい、倉庫、防災の構えが一つの敷地にそろって残る点に、6件をまとめて見る意味がある。

見学とアクセス

小林家住宅は個人が所有する住まいで、一般公開の施設ではない。公開日や見学会の案内も、2026年9月時点では確認できなかった。敷地や建物の中には入らず、石垣と塀、その奥に並ぶ切妻屋根を敷地の外から眺めることになる。個人の住まいなので、門前に長く立ち止まったり、敷地内へカメラを向け続けたりするのは控えたい。

所在地は桐生市広沢町5丁目で、JR両毛線の桐生駅から南東へ直線で約4キロメートル、渡良瀬川を渡った先にあたる。駅から歩くには距離があるので、車かタクシーで向かうのが現実的である。専用の駐車場は無い。

参考文献

国指定文化財等データベース「小林家住宅(旧小武織物有限会社)主屋」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010104
国指定文化財等データベース「小林家住宅(旧小武織物有限会社)工場」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010105
国指定文化財等データベース「小林家住宅(旧小武織物有限会社)倉庫一」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010106
国指定文化財等データベース「小林家住宅(旧小武織物有限会社)倉庫二」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010107
国指定文化財等データベース「小林家住宅(旧小武織物有限会社)石垣」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010108
国指定文化財等データベース「小林家住宅(旧小武織物有限会社)塀」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010109
文化遺産オンライン「小林家住宅(旧小武織物有限会社)主屋」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/210027
桐生市「小林家住宅(6件)」
https://www.city.kiryu.lg.jp/kankou/bunkazai/1010700/kunitouroku/1011321.html
桐生商工会議所「旧小武織物」(桐生市の風景資料)
https://www.kiryucci.or.jp/FT/2013fukei/2013fukei-kotake.pdf

最終更新日: 2026.09.24

基本情報

名称小林家住宅(旧小武織物有限会社)
所在地群馬県桐生市広沢町5字福島1111-9他
所有者個人
指定登録有形文化財 6件
座標36.37849, 139.35041