鋸屋根とは

鋸屋根は、片流れの屋根を鋸の歯のように連ねた屋根である。一方の面を緩い勾配の屋根、もう一方をほぼ垂直の面とし、その垂直面に窓を設ける。

工場に用いられる。窓を北向きにすれば直射日光が入らず、一日を通して安定した明るさが得られる。広い作業場に均一な光を行き渡らせるための形式である。

群馬県の旧新町紡績所は明治10年の建築を含む建物群で、重要文化財の解説に「わが国最初の官営絹糸紡績工場として、内務省が設立した絹糸紡績工場である。佐々木長淳を総括とし、ドイツ人の指導を受けながら大工の山添喜三郎ら日本人の手で建設された。明治42年まで操業を続け、その間工場の増築や建物の新築が図られてきた。工場本館のコの字形切妻造屋根部は官営期工場部で、独特なトラスなどに洋風建築の技術と日本在来の技術の併用が見られる。鋸屋根の増築部、煉瓦造の機関室や倉庫は、明治期の紡績工場の発展形態を示している」と記されている。

官営期の切妻造と、増築部の鋸屋根が対比されている。工場の規模が大きくなるにつれて採光の要求も高まり、屋根形式が変わっていった経緯が読み取れる。

近代の工場建築のなかで

同じ旧新町紡績所について、記録は「希少な木造の工場建築がほぼ完全な規模で残り、明治初期の建築技術を良く示しており、高い歴史的価値がある。明治期の絹糸紡績工場唯一の遺構であり、絹糸紡績業の発展の過程を示すものとして、高い学術的価値が認められる」と評価している。

鋸屋根は和小屋では架けにくい。連続する片流れを支えるには斜材で組むトラスが向き、キングポストトラスをはじめとする洋小屋と組み合わせて用いられることが多い。

越屋根とは目的が違う。越屋根は棟の上に小さな屋根を載せて排煙や採光を図るもので、町家や蔵にも見られる。鋸屋根は屋根面そのものを連続させる形式で、大規模な工場に限られる。

現地では建物を横から見るとよい。屋根の稜線が三角波のように繰り返し、片側だけに窓が並んでいれば鋸屋根である。窓が向く方位を確かめると、採光の意図が読み取れる。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 国宝・重要文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/kokuho_bunkazai.html
国指定文化財等データベース(文化庁)旧新町紡績所/鋸屋根の増築部、煉瓦造の機関室や倉庫は明治期の紡績工場の発展形態を示す
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00004791
国指定文化財等データベース(文化庁)旧新町紡績所/希少な木造の工場建築がほぼ完全な規模で残り、明治初期の建築技術を良く示す
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00004794
国指定文化財等データベース(文化庁)坂井銘醸昭和蔵/高い位置の窓には鉄製持送り付きの小庇をつける
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003099

最終更新: 2026.09.11