キングポストトラスとは
キングポストトラスは、中央に一本の束を立て、両側に斜材を配して三角形に組む小屋組である。三角形が変形しにくい性質を利用して力を釣り合わせるため、和小屋のように柱で受ける必要がない。
梁間の大きな建物に用いられる。長野県の坂井銘醸昭和蔵は昭和初期の建築で、「桁行12間梁間6間規模、切妻造、桟瓦葺の平屋建仕込蔵で、内部は板張、小屋組はキングポストトラスとする。外部腰は人造石仕上げとし、高い位置の窓には鉄製持送り付きの小庇をつけて外観意匠を整えている」と解説されている。
香川県の金両醤油蔵は大正期の建築で、「桁行22メートル規模、東西棟、切妻造、桟瓦葺の平屋建で、棟のほぼ全長に亘って越屋根をあげている点に特徴がある。小屋はキングポストトラスとする。もと麹原料混合場及び機械場」と解説されている。
学校建築でも用いられる。秋田県の旧鮎川小学校南校舎棟は昭和29年の建築で、「小屋はキングポストトラス。教室の配置計画や構造など当時の状況を伝えるとともに、木の温もりを感じさせる良質な学校建築」と解説されている。
和小屋との違い
和小屋は梁の上に束を立てて母屋を受け、荷重を垂直に下へ伝える。キングポストトラスは斜材で三角形を組み、力を部材の軸方向に流す。原理が違うため、同じ梁間でも必要な材の大きさが変わる。
記録は両者を書き分ける。宮城県の三事堂ささ木土蔵は大正中期の建築で「小屋組は洋風トラスである」、岩手県の横屋酒造正面蔵は明治35年の建築で「桁行約41メートル、梁間約12メートル、2階建の長大な土蔵造建築…小屋はトラス組」と解説されている。トラスの形式名まで書かれるのは、キングポストトラスのように種類が特定できる場合である。
醸造施設や学校、工場など、柱のない広い内部を要する建物に集中する。土蔵造の外観を持ちながら小屋組が洋小屋という組み合わせは、近代の産業建築によく見られる。
小屋組は建築年代の手がかりにもなる。洋小屋は近代に普及したため、同じ土蔵造でも小屋組で年代の見当が付く。
現地では天井を張らない建物の内部を見上げるとよい。中央に垂直の束が一本立ち、そこから両側の梁端へ斜材が下りていればキングポストトラスである。
参考文献
- 文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
- 国指定文化財等データベース(文化庁)坂井銘醸昭和蔵/高い位置の窓には鉄製持送り付きの小庇をつける
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003099
- 国指定文化財等データベース(文化庁)金両醤油蔵/棟のほぼ全長に亘って越屋根をあげ、小屋はキングポストトラスとする
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003140
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧鮎川小学校南校舎棟/小屋はキングポストトラス、当時の状況を伝える良質な学校建築
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009121
- 国指定文化財等データベース(文化庁)三事堂ささ木土蔵/店舗内部に戸口を開き、漆喰塗の両開き土戸を釣り込む
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005220
- 国指定文化財等データベース(文化庁)横屋酒造正面蔵/桁行約41m梁間約12m、小屋はトラス組
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003034
最終更新: 2026.09.11