森秀織物とは

森秀織物は、群馬県桐生市東4丁目にあるお召の機屋の工場と、経営者一家の住まいである森島家住宅からなる施設で、大正13年(1924年)頃の建物を中心とする15件が平成18年(2006年)8月3日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「もりひでおりもの」。

内訳は、工場や整経場、撚糸場、寄宿舎など織物づくりの建物が10件、事務所を兼ねた主屋と蔵、門、塀からなる森島家住宅が5件である。運営する森秀織物株式会社はいまも同じ敷地で織物を織っており、敷地の北半分では古い工場を使った資料館「織物参考館“紫”(ゆかり)」を開いている。

工場と住まいを別々の場所に構えるのではなく、南北に細長い一つの敷地へまとめて建てた点に、この施設の特徴がある。帳場で商談をし、座敷で反物を検め、通路の向かいの鋸屋根の下で機を動かす。桐生の機屋の暮らしと仕事が、15件の配置のなかにそのまま残っている。

森秀織物の歩み

桐生市の歴史的風致維持向上計画は、森秀織物を明治10年(1877年)創業の老舗とし、初代の森島秀から数えて5代目が営むと紹介している。一方、桐生市の文化財のページによれば、森島秀が森島俊篤(森俊織物)から分家して現在地に工場を構えたのは大正13年(1924年)とされる。桐生織物史別巻に大正15年(1926年)11月の織物同業組合役員当選の記事があることから、大正13年頃には本格的に操業していたと市はみている。

森秀織物は、桐生の高級織物であるお召を専門とする機屋だった。戦時中は当時の商工省から技術保存業者に選ばれ、企業統制を受けず、織機の供出も免れた。そのため戦後いち早く生産を再開でき、昭和30年代以降に最盛期を迎えている。当時の関係者の話では、昭和37年(1962年)の従業員は137人で、そのうち100人ほどが女性の織り手だった。1人で1台を受け持っていた織機は、自動化が進んだ昭和47年(1972年)頃から1人2台になったという。

現在の森秀織物は、お召の技術を生かして文楽人形の衣装や歌舞伎の装束を織り、桐生織物の伝統技術の復元と継承に取り組んでいる。

登録された15件と建てられた時期

森秀織物の15件は、第51回の登録で登録番号10-0172から10-0186として登録有形文化財に加わった。登録基準は15件とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁のデータベースに載る年代で分けると、次のようになる。

  • 大正13年(1924年)頃:森秀織物工場、旧現場事務所(経糸整経場)、旧物置(八丁撚糸場)、旧寄宿舎一(製品加工場)、旧寄宿舎二、旧撚糸場、旧土蔵、旧整経場、旧釜場、森島家住宅の主屋・東蔵・門・内塀
  • 昭和21年(1946年):森秀織物旧工場(昭和27年(1952年)頃に増築)
  • 昭和26年(1951年)頃:森島家住宅西蔵

15件のうち13件が大正13年頃の建築で、工場と住まいがほぼ同時に整えられたことがわかる。旧寄宿舎二は、昭和56年(1981年)に織物参考館“紫”を開くにあたって、市道の北側にあった寄宿舎の一部を切り離し、曳家で現在地へ移したものである。

森秀織物の敷地と歩く順序

森秀織物の敷地は南北およそ130メートル、東西およそ30メートルの細長い形で、中央を南北に通路が貫く。南端の旧道に面して森島家住宅の門があり、本来はここが敷地全体の正面の入口だった。門を入ると、西側に森島家住宅の庭と主屋、東側に工場が並ぶ。

通路の東側には、南から3連の鋸屋根をもつ森秀織物工場、旧現場事務所、旧物置、旧寄宿舎一、旧撚糸場、旧寄宿舎二が続く。西側は森島家住宅の北に旧釜場、旧整経場、4連の鋸屋根の旧工場が連なり、北西の角に旧土蔵が建つ。3連と4連の鋸屋根の工場が同じ敷地にそろう例は、桐生市内でも規模の点で特筆されると市は評価している。

現在、敷地の北側は織物参考館“紫”の駐車場になっていて、見学者は本来の裏口だった北口から入る。そのため工場の奥に住まいがあるように感じられるが、南の門から北へ歩くと、住まいと帳場を抜けて工場へ入っていく当初の順序が読み取れる。各棟の構造や見どころは、それぞれのページで扱っている。

森秀織物の見学とアクセス

森秀織物のうち、旧釜場・旧整経場・旧工場・旧土蔵・旧寄宿舎二・旧撚糸場は、織物参考館“紫”の体験学習室、展示ホール、展示室、織蔵、受付、学習室として使われており、入館すれば内部を見学できる。館内には織物や道具の資料が1,200点余り並び、染色や手織りの体験教室もある。団体での見学と体験は予約が必要である。

桐生市のページによると、織物参考館“紫”の開館時間は午前10時から午後4時まで、休館日は毎週月曜日で、夏季と冬季は月曜日と水曜日が休みになる。入館料は大人800円、大学生・専門学校生700円、高校生・中学生600円、小学生400円で、20名以上の団体は50円引きになる(2026年9月確認)。無料駐車場があり、大型バスも止められる。問い合わせ先は0277-45-3111。

森島家住宅は個人の住宅のため公開されていない。敷地の南側にある門と塀は旧道に面しているので、外観は道路から眺められる。

最寄り駅はJR両毛線の桐生駅で、森秀織物までは歩いて15〜20分ほどかかる。車の場合は北関東自動車道の太田桐生インターチェンジからおよそ25分である。

日本遺産と桐生市の歴史まちづくりのなかの森秀織物

平成27年(2015年)4月、森秀織物の織物参考館“紫”は、文化庁が認定した日本遺産「かかあ天下-ぐんまの絹物語-」の構成文化財の一つになった。

桐生市は、森島家住宅と森秀織物工場を一体のものとして、令和5年(2023年)2月に歴史まちづくり法にもとづく歴史的風致形成建造物(第14号)とした。市は、大正末期から続く大規模な織物会社の居宅の例として森島家住宅を評価し、居宅兼事務所・工場・寄宿舎が一つの建築群をなしている点に有力な機屋の風格を見ている。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)森秀織物工場
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005566
国指定文化財等データベース(文化庁)森秀織物旧土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005572
国指定文化財等データベース(文化庁)森島家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005576
国指定文化財等データベース(文化庁)森島家住宅西蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005578
国指定文化財等データベース(文化庁)森島家住宅門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005579
文化遺産オンライン 森秀織物工場
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/118444
桐生市 森秀織物工場
https://www.city.kiryu.lg.jp/kankou/bunkazai/1010700/kunitouroku/1002000.html
桐生市 森島家住宅
https://www.city.kiryu.lg.jp/kankou/bunkazai/1010700/kunitouroku/1002001.html
桐生市 森秀織物工場(織物参考館“紫”)解説資料(PDF)
https://www.city.kiryu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/000/yukari-2.pdf
桐生市 織物参考館“紫”
https://www.city.kiryu.lg.jp/kankou/spot/kiryu/1001866.html
桐生市歴史的風致維持向上計画 第2章(PDF)
https://www.city.kiryu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/012/273/2024-2syou1.pdf
桐生市 歴史的風致形成建造物 指定第14号 森島家住宅及び森秀織物工場(PDF)
https://www.city.kiryu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/018/437/14gou.pdf
桐生市 報道資料「歴史的風致形成建造物の指定について」令和5年1月31日(PDF)
https://www.city.kiryu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/022/326/050131tosikeikaku.pdf

最終更新日: 2026.09.29

基本情報

名称森秀織物
所在地群馬県桐生市東4-2-24
所有者森秀織物株式会社
指定登録有形文化財 15件
座標36.41017, 139.34481