酒都西条の表通りに構える明治の町家

賀茂泉酒造店舗兼主屋は、東広島市西条の街路に北面して建つ。西条は兵庫の灘、京都の伏見と並び、日本三大銘醸地に数えられる酒どころである。木造二階建、瓦葺で、建築面積は約179平方メートル。建築は明治後期、およそ1898年から1912年にかけてと推定される。

通りに向いた正面は、酒蔵全体の意匠の基調をなす。一階の開口部には縦格子を並べ、二階には袖壁を設けて、商家の町家らしい構えとする。落ち着いた外観の奥で、この建物は店舗と住居、そして接客の場を兼ねてきた。

登録有形文化財としての価値

本建物は2016年(平成28年)8月1日、第84回登録として国の登録有形文化財に登録された。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。登録制度は指定より緩やかな保護の枠組みで、築後およそ半世紀を経て周囲の景観を形づくる建造物を対象とする。

平面には見どころが多い。東側に土間を通し、西側には二列六室を並べる。西列の中室を仏間、奥室を十畳の主座敷とし、本格的な座敷飾を備える。店・住まい・接客を一棟に収めた構成は、明治期の西条の造り酒屋の暮らしと商いの姿を伝える。

訪ねて見るべきところ

主屋は、現役の酒蔵の顔でもある。一階の店舗部分は見学でき、その奥の住居部分は通常非公開である。賀茂泉酒造は1912年(大正元年)に前垣酒造場として創業し、後に戦後純米酒復活の先駆けとして知られるようになった。活性炭素濾過を行わないため、酒は淡い山吹色を帯びる。

通りから格子と袖壁を眺めたのち、店舗や近くの喫茶「酒泉館」で試飲を楽しむとよい。JR西条駅からは徒歩約10分。同じ道すがら、赤瓦の屋根と煉瓦煙突が続く酒蔵通りの景観も味わえる。

Q&A

Q主屋の中に入れますか。
A一階の店舗部分は見学できます。奥の住居部分は通常非公開ですが、通りに面した外観はいつでも見られます。
Q建物はいつ頃のものですか。
A明治後期、およそ1898年から1912年の建築で、2016年に国の登録有形文化財となりました。
Q町家とはどのような建物ですか。
A商人の都市住宅で、表に店、奥に住まいを設ける形式が一般的です。ここでは格子の正面と二階の袖壁がその特徴を示します。
Qどのように行けばよいですか。
A酒蔵は西条酒蔵通りの東端にあり、JR西条駅から徒歩約10分です。

基本情報

名称賀茂泉酒造店舗兼主屋(かもいずみしゅぞうてんぽけんしゅおく)
所在地広島県東広島市西条上市町944他
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日2016年8月1日(登録番号 34-0178)
員数・構造1棟/木造2階建、瓦葺、建築面積約179平方メートル
時代明治後期(およそ1898〜1912年)
所有者賀茂泉酒造株式会社
公開状況店舗部分は見学可、住居部分は非公開。JR西条駅から徒歩約10分

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 賀茂泉酒造店舗兼主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011185
賀茂泉酒造株式会社 公式サイト
https://www.kamoizumi.co.jp/
東広島市観光協会 — 賀茂泉酒造
https://higashihiroshima-kanko.jp/spot/kamoizumi/

最終更新日: 2026.07.03