照林坊とは
照林坊は、広島県三次市三次町にある浄土真宗本願寺派の寺院で、寛文5年(1665年)の山門から昭和9年(1934年)の客殿・御成の間まで、境内の8棟が平成23年(2011年)7月25日に登録有形文化財となった。
山号を明鏡山という。寺の伝えでは、親鸞の弟子で関東六老僧の一人とされる明光上人が鎌倉時代に現在の福山市域で開き、移転を重ねたのち、第10代住職のときの慶長7年(1602年)に三次へ移ったという。以来400年あまり、三次町の旧市街に境内を構えてきた。
登録された8棟は、本堂、客殿、御成の間、庫裏、渡り廊下、経蔵、鐘撞堂、山門である。参拝の中心となる本堂、住職一家の住まいである庫裏、来客を迎える客殿と御成の間、経典を納める経蔵、時を告げる鐘撞堂、境内の入口となる山門がそろい、真宗寺院に必要な建物が一通り残っている。
三次観光推進機構の紹介によれば、照林坊では建物の配置が江戸時代から変わっていない。山門をくぐり、本堂を仰ぎ、鐘撞堂へ向かう順路は、江戸時代の参詣者が歩いたものとほぼ同じということになる。
境内の年代
文化庁のデータベースに記された年代を古い順に並べると、照林坊の境内は約270年をかけて今の姿になったことがわかる。
- 山門:寛文5年(1665年)。昭和中期に改修
- 鐘撞堂:江戸時代中期、延享元年(1744年)。平成6年(1994年)に改修
- 経蔵:江戸時代中期、宝暦2年(1752年)。明治45年(1912年)に改修
- 庫裏:享和元年(1801年)
- 渡り廊下:江戸時代後期
- 本堂:嘉永5年(1852年)。明治期と昭和33年(1958年)に改修
- 客殿:昭和9年(1934年)。昭和61年(1986年)に改修
- 御成の間:昭和9年(1934年)
目を引くのは、今の本堂が境内でもっとも新しい部類に入る江戸時代の建物だという点である。山門は本堂より187年古く、庫裏も本堂より半世紀早い。本堂の建て替えを経ても、山門や鐘撞堂、経蔵はそのまま使われ続けたことになる。
昭和9年(1934年)には、客殿と御成の間が同じ年に建てられた。来客を正式に迎える客殿と、貴人が滞在するための御成の間を一度に整えたことから、昭和初期の照林坊が多くの来訪者を受け入れる寺であったことがうかがえる。
境内の配置
照林坊の境内は、中央に東を向いて建つ本堂を軸に組み立てられている。文化庁の解説から、各棟の位置を本堂との関係で整理する。
本堂の前方(東):山門
山門は本堂の正面に構える四脚門で、境内の入口にあたる。門をくぐると、正面に本堂の向拝が見える。
本堂の東南:鐘撞堂
鐘撞堂は本堂の東南、切石積の基壇の上に建つ。壁のない吹放ちの鐘楼なので、境内のどこからでも姿をとらえやすい。
本堂の東北:経蔵
経蔵は本堂の東北に南を向いて建つ小さな土蔵造の蔵である。鐘撞堂とは本堂の前庭をはさんで南北に向き合う位置にある。
本堂の後方(西):庫裏と渡り廊下
庫裏は本堂の後方に建ち、両者を東西に長い渡り廊下が結ぶ。住職一家の暮らす庫裏と本堂の行き来は、この廊下を通って行われてきた。
本堂の西南:客殿と御成の間
客殿は本堂の西南に位置し、その東南に廊下を介して御成の間が続く。昭和の2棟は、江戸時代の建物が並ぶ本堂の東側とは反対の西寄りにまとめて置かれている。
参拝の場である東側に門・鐘撞堂・経蔵を、暮らしと接客の場である西側に庫裏・客殿・御成の間を寄せる。照林坊の配置は、本堂を境に表と奥をはっきり分けた構成として読むことができる。
登録の内容
照林坊の8棟は、平成23年(2011年)7月25日付の第70回登録で登録有形文化財(建造物)となった。登録番号は34-0116から34-0123までの連番である。
登録基準は2種類に分かれる。本堂、客殿、庫裏の3棟は「造形の規範となっているもの」、御成の間、渡り廊下、経蔵、鐘撞堂、山門の5棟は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。
- 本堂(34-0116):木造平屋建、瓦葺、建築面積629平方メートル
- 客殿(34-0117):木造平屋建、瓦葺、建築面積196平方メートル
- 御成の間(34-0118):木造平屋建、瓦葺、建築面積117平方メートル
- 庫裏(34-0119):木造平屋建、瓦葺、建築面積315平方メートル
- 渡り廊下(34-0120):木造平屋建、瓦葺、建築面積60平方メートル
- 経蔵(34-0121):土蔵造平屋建、瓦葺、建築面積20平方メートル
- 鐘撞堂(34-0122):木造、瓦葺、面積16平方メートル
- 山門(34-0123):木造、銅板葺、間口3.3メートル
観光案内の中には8棟の登録を平成25年(2013年)とする記述も見られるが、文化庁と三次市の記録ではいずれも平成23年(2011年)である。
見学とアクセス
照林坊は門徒とともに活動を続ける寺院で、境内に入って建物の外観を見ることができる。8棟の内部については、2026年10月時点で定期的な公開の案内は確認できなかった。拝観料や拝観時間も公表されていない。内部の見学や写真撮影を希望する場合は、事前に寺(電話 0824-62-2284)へ問い合わせたい。
法要や行事の最中は境内の雰囲気が変わる。三次観光推進機構の紹介によれば、照林坊では5月の親鸞の誕生を祝う行事にあわせて音楽会を開くなど、本堂を使った催しも行われている。訪問の際は、勤行や法要の妨げにならないよう心がけたい。
照林坊は三次町の旧市街、巴橋に近い場所にあり、JR三次駅から北西へ直線でおよそ1.1キロメートルの位置にある。この距離は駅と寺の地図上の位置から求めた目安で、寺や市による公式のアクセス案内は確認できていない。駐車場の有無も公表資料では確かめられなかった。
名称について
照林坊の読みは「しょうりんぼう」、正式には明鏡山照林坊と称する。文化庁のデータベースでは、8棟がそれぞれ「照林坊本堂」「照林坊鐘撞堂(しょうりんぼうかねつきどう)」のように、寺名に建物名を続けた名称で登録されている。庫裏の読みは「くり」、御成の間は「おなりのま」である。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「照林坊本堂」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008775
- 文化庁 国指定文化財等データベース「照林坊客殿」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008776
- 文化庁 国指定文化財等データベース「照林坊御成の間」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008777
- 文化庁 国指定文化財等データベース「照林坊庫裏」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008778
- 文化庁 国指定文化財等データベース「照林坊渡り廊下」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008779
- 文化庁 国指定文化財等データベース「照林坊経蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008780
- 文化庁 国指定文化財等データベース「照林坊鐘撞堂」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008781
- 文化庁 国指定文化財等データベース「照林坊山門」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008782
- 三次市「指定文化財一覧」
- https://www.city.miyoshi.hiroshima.jp/soshiki/49/3527.html
- 広島県 文化財一覧(三次市の登録有形文化財を含む)PDF
- https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/591373.pdf
- 三次観光推進機構(みよしDMO)「浄土真宗本願寺派 明鏡山 照林坊」
- https://www.miyoshi-dmo.jp/play/shourimbo/
最終更新日: 2026.10.07
基本情報
| 名称 | 照林坊 |
|---|---|
| 所在地 | 広島県三次市三次町1280 |
| 所有者 | 宗教法人照林坊 |
| 指定 | 登録有形文化財 8件 |
| 座標 | 34.80920, 132.84728 |