大正7年竣工、播州織の富が建てた主屋

旧来住家住宅主屋(きゅうきしけじゅうたくしゅおく)は、兵庫県西脇市西脇394-1に建つ木造2階建の住宅で、大正7年(1918年)に竣工し、平成14年(2002年)2月14日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は28-0092、建築面積は242平方メートル、瓦葺。現在の所有者は西脇市である。

施主は銀行家の来住梅吉。来住家は代々糸を商ってきた家で、大正期の西脇は先染め綿織物である播州織が本格的に伸び始めた時期にあたる。加古川・杉原川・野間川が集まり染色に必要な水が豊富だったこの土地に、織物の富が流れ込んでいた。

通りから見た主屋の顔は、驚くほど古風である。軒下に低いつし2階を設け、そこに虫籠窓(むしこまど)を切る。江戸期の町家がそのまま大正まで生き延びたような外観で、近代の匂いはほとんどしない。ところが門をくぐって内部に入ると、その印象は少しずつ崩れていく。

登録の理由―伝統的な外観と近代的な手法

登録基準は「再現することが容易でないもの」。文化庁の解説は、外観の伝統的形式と内部の近代性との落差に注目している。間取りは明治以降に普及した中廊下型に近く、軒や鴨居が垂れ下がるのを防ぐために桔木(はねぎ)と鉄棒が併用されている。木の粘りだけに頼らず、鉄という当時の新しい材料を構造補助に組み込んだわけである。銘木や吟味された良材がふんだんに使われている点も、解説文で特記されている。

中廊下を挟んで南北に2列。南列が接客の空間、北列が家族の空間、東端に台所や風呂が置かれる。この配置自体は当時としてさほど珍しくないが、注目したいのは廊下の床である。板張りではなく畳敷き。廊下が畳であることで、南北の座敷が通路によって断ち切られず、ひと続きの室内として感じられる。

西脇市の説明によれば、建築にあたって釘は一本も使われていない。加えて、建築用材の目録、経費出納簿、家政録といった記録類が残っている。この年代の民家では、施工の順序や用材の出所を継手や仕口から推測するしかないことが多い。ここでは書類から直接読み取れる。数ある高級民家のなかで本件が特に高く評価されるのは、建物の質だけでなく、その来歴が文書で裏づけられているからでもある。

足を止めたい細部

一階大広間の欄間は縞柿(しまがき)を彫ったもので、題材は「蝙蝠」と「月に時鳥」。西脇市の解説では、蝙蝠の目に黒サンゴが嵌め込まれているとされる。蝙蝠は中国語で「福」に通じることから吉祥の意匠として扱われてきた。訪れた客の頭上に、そうした祝意が掲げられている。

座敷の床の間では天井を見上げてほしい。矢筈張(やはずばり)と呼ばれる張り方で、板の継ぎ目が浅い山形を描いて噛み合う。床に立った人がわざわざ顔を上げなければ気づかない位置にある。見えないところにも凝った手法が用いられている、という市の記述は、こうした箇所を指している。

屋根には七福神の瓦が載る。案内がなければ通り過ぎてしまう小ささである。

入館は無料。西脇市教育委員会から管理を委託された西脇TMOのボランティアスタッフ4名が交代で受付と案内にあたっており、希望すれば無料で建物の説明を受けられる。開館は午前10時から午後6時、10月から3月は午後5時までに短縮される。休館は月曜日(祝日の場合は翌日)と12月29日から1月3日まで。母屋の和室は1室1時間につき100円で借りることもでき、茶道や句会、いけばな教室などに使われている。

JR加古川線・西脇市駅からは約1.5キロ、大正期の面影が残る商店街を抜けて徒歩でおよそ20分。路線バスやコミュニティバスを使えば10分足らずで、最寄りの停留所から歩いてすぐである。駐車場はあるが、大型バスは事前相談が必要。館内撮影の可否は公表されていないため、受付で確認するのが確実だ。

敷地内には播州織製品を扱う「西脇情報未来館21」があり、隣には日替わりシェフ制のコミュニティレストランが入る。主屋の一部と蔵はギャラリーとしても使われている。北西の高台には、令和3年(2021年)に国の重要文化財に指定された西脇小学校(旧西脇尋常高等小学校)の木造校舎が現役で建っており、あわせて歩く価値がある。

Q&A

Q旧来住家住宅主屋は見学できますか。入館料はいくらですか。
A内部まで見学できます。入館料は無料です。受付に申し出れば、常駐しているボランティアスタッフが無料で建物を案内してくれます。
Q旧来住家住宅主屋の開館時間と休館日を教えてください。
A午前10時から午後6時まで(10月から3月は午後5時閉館)。休館日は月曜日(月曜が祝日の場合はその翌日)と、年末年始の12月29日から1月3日までです。
Q旧来住家住宅主屋へは西脇市駅からどう行けばよいですか。
AJR加古川線・西脇市駅から約1.5キロ、徒歩でおよそ20分です。路線バスやコミュニティバスなら10分足らずで、最寄り停留所から徒歩すぐ。駐車場もあります(大型バスは要相談)。
Q旧来住家住宅主屋の建築上の見どころはどこですか。
Aつし2階に虫籠窓を開けた伝統的な外観と、中廊下型に近い近代的な間取りとの対比です。軒や鴨居の垂下がりを防ぐ桔木と鉄棒の併用、畳敷きの中廊下、床の間の矢筈張天井、縞柿の欄間彫刻も見逃せません。
Q旧来住家住宅主屋の部屋を借りることはできますか。
A母屋の和室は1室1時間あたり100円で利用できます。利用を希望する場合は事前に旧来住家住宅(電話0795-22-5549)へ連絡してください。

基本情報

名称旧来住家住宅主屋(きゅうきしけじゅうたくしゅおく)
所在地兵庫県西脇市西脇394-1
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 28-0092
指定年登録年月日 平成14年(2002年)2月14日/登録告示 同年3月12日
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積242平方メートル
所有者西脇市
公開状況午前10時~午後6時(10月~3月は午後5時まで)/月曜・年末年始休館/入館無料

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 旧来住家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002673
文化遺産オンライン 旧来住家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/182583
西脇市 旧来住家住宅(きゅうきしけじゅうたく)
https://www.city.nishiwaki.lg.jp/kakukanogoannai/kyouikuiinkai/kyouikukanribu/syougaigakusyuka/syougaigakusyuu/kishi/1356660051070.html
西脇市 旧来住家住宅(観光資源・観光施設)
https://www.city.nishiwaki.lg.jp/kankotokusan/nishiwakikitaharimanokanko/kankou_shigen/1359418680509.html
西脇市観光物産協会 旧来住家住宅
https://www.nishiwaki-kanko.jp/guide/sightseeing/kyukishikejutaku.html
西脇市 地場産業「播州織」
https://www.city.nishiwaki.lg.jp/kakukanogoannai/sangyoukatsuryokusaiseibu/syoukourouseika/koyosangyosinko/syoukoshinko/jibasangyou/bansyuori.html
西脇市 西脇小学校(旧西脇尋常高等小学校)が国重要文化財に指定
https://www.city.nishiwaki.lg.jp/kakukanogoannai/kyouikuiinkai/kyouikukanribu/kyoudoshiryoukan/nishiwaki.html

最終更新日: 2026.08.26