川西市郷土館とは
川西市郷土館は、兵庫県川西市下財町にある川西市の博物館で、大正7〜8年(1918〜1919年)に建てられた旧平安家住宅の15件と、旧平賀家住宅の3件が国の登録有形文化財に登録されている。銅の製錬を家業とした平安家の旧宅を使って、昭和63年(1988年)11月に開館した。
「平安」はここでは「ひらやす」と読む。文化庁のデータベースのふりがなも「きゅうひらやすけじゅうたく」で、時代名の平安(へいあん)とは関係がない。館内では旧平安家住宅を「旧平安邸」、旧平賀家住宅を「旧平賀邸」と呼んでいる。
敷地には和風の旧平安邸と洋館の旧平賀邸のほか、平成7年(1995年)に開いた美術館ミューゼレスポアール、平成22年(2010年)に開いたアトリエ平通、平安家の製錬所跡がある。川西市郷土館は、大正期の和洋2軒の住まいと、この土地の鉱山の歴史を1か所で見られる施設である。
平安家と多田銀銅山の製錬
川西市郷土館の一帯は、多田銀銅山の製錬町として栄えた下財屋敷にあたる。多田銀銅山の鉱脈は川西市・猪名川町・宝塚市から大阪府の能勢町・豊能町・箕面市・池田市まで広がり、豊臣秀吉の時代から江戸時代前期にかけてが最盛期だったとされる。
下財屋敷の北部にあった平安家は、明治以降も銅の製錬を続けた。川西市の説明によれば、明治期の製錬所は現在の旧平賀邸の北側にあり、大正時代には近代化した製錬所を旧平安邸の北東に新たに建て、昭和10年(1935年)頃まで操業した。多田銀銅山で最後まで残った製錬所である。
発掘調査と聞き取りから、この製錬所は溶鉱炉・真吹炉・送風機小屋・煙突で構成されていたことが分かっている。送風機を備えながら、仕上げには江戸時代以来の真吹炉を使っていた。川西市郷土館の敷地には、この平安製錬所跡が現地で保存されている。
旧平安家住宅の屋敷構え
旧平安家住宅は、主屋を中心に、中庭を囲んで建物が並ぶ屋敷である。中庭のまわりに蔵4棟と離れ座敷・浴室が配され、その外側の東の縁には蔵と納屋が南北一列に連なる。川西市はこれを、二重の構成をもつ大きな屋敷と説明している。
主屋の南面に玄関棟が建ち、その東脇に玄関門が立つ。敷地の西南には、玄関へ向かう道の左手から座敷の西南角まで瓦屋根付きの板塀が延びる。家人がふだん出入りした長屋門は、敷地の東面の北寄りにある。蔵は建つ方角で呼び分けられ、東南の巽蔵(たつみぐら)、西北の乾蔵(いぬいぐら)、北蔵、西蔵の4棟がある。
登録されている旧平安家住宅の15件は次のとおり。年代はいずれも大正7〜8年(1918〜1919年)である。
- 住まいの中心:主屋(建築面積217平方メートル)、玄関(41平方メートル)、離れ(44平方メートル)、浴室(31平方メートル)
- 門と塀:玄関門(一間薬医門)、長屋門(36平方メートル)、屋根塀(延長48.2メートル)
- 蔵:北蔵(60平方メートル)、乾蔵(29平方メートル)、巽蔵(27平方メートル)、西蔵(22平方メートル)
- 納屋:大納屋(40平方メートル)、南納屋(22平方メートル)、北納屋(15平方メートル)、西納屋(9.4平方メートル)
大きな主屋から10平方メートルに満たない西納屋まで、屋敷を形づくる建物がそろって登録されている点が、旧平安家住宅の特徴である。各棟の構造と見どころは、それぞれのページで扱っている。
旧平賀家住宅と平賀義美
旧平賀家住宅は、平賀義美(よしみ)博士が大正7年(1918年)に猪名川沿いの川西市小戸に建てた洋館である。平成2年(1990年)11月に、川西市郷土館の敷地へ移築復元された。
平賀義美は安政4年(1857年)に福岡県で生まれた化学者で、東京大学を卒業後、関西の財界で多くの要職を務めた。川西市の説明では、欧米への外遊を7回重ねており、その経験が住宅の意匠に表れているという。文化庁の解説によれば、設計は大林組の松本兎象、施工は鴻池組で、英国のカントリーハウスにならった平屋建の住宅である。
旧平賀家住宅として登録されているのは、主屋(建築面積152平方メートル)、実験研究棟(32平方メートル)、東屋の3件である。実験研究棟は化学者だった施主の実験施設で、主屋と2階部分を空中廊下でつなぐ。旧邸にあった東屋・門・橋・胸像も、あわせてこの地に移された。
川西市郷土館の登録と改修
川西市郷土館の建物のうち、旧平安家住宅主屋と旧平賀家住宅主屋は、登録制度が始まった年の平成8年(1996年)12月20日に、第1回の登録として登録有形文化財になった。登録番号は28-0004と28-0005である。翌平成9年(1997年)5月7日には、旧平安家住宅の残る14件と旧平賀家住宅実験研究棟が登録され、旧平賀家住宅東屋は平成31年(2019年)3月29日に加わった。
登録基準はいずれも「造形の規範となっているもの」である。文化庁は旧平安家住宅主屋を、伝統的な手法を受け継ぎながら要所に変化を加えた大正期の大規模邸宅の好例と評価している。旧平安家住宅は兵庫県の景観形成重要建造物等にも指定され、旧平賀家住宅は「ひょうごの近代住宅100選」に選ばれている。
旧平安邸では令和5年(2023年)10月3日から約1年にわたって耐震補強などの改修工事が行われ、令和6年(2024年)10月12日に見学の受け入れを再開した。施工は株式会社金剛組である。
川西市郷土館の見学とアクセス
川西市郷土館の開館時間は午前10時から午後4時30分までで、入館は午後4時までである。令和8年(2026年)4月1日から開館日が木曜日から日曜日に変わり、月曜日・火曜日・水曜日が休館になった。休館日が祝日にあたるときは開館する。12月28日から1月4日までは休館である。
入館料は18歳を超える人が300円(20人以上の団体は200円)、18歳以下が150円(団体100円)である。兵庫県内に住むか県内の学校に通う小学生・中学生と、就学前の子どもは無料で、65歳以上の川西市民は半額になる(2026年10月確認)。
電車では、阪急電鉄の川西能勢口駅かJR川西池田駅で能勢電鉄に乗り換え、山下駅で降りて歩いて約15分である。川西市は山下駅からの道順を写真つきで公開している。車では新名神高速道路の川西インターチェンジから北へ約10分で、普通車13台分の駐車場がある。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)川西市郷土館(旧平安家住宅主屋)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000078
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧平賀家住宅主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000079
- 国指定文化財等データベース(文化庁)川西市郷土館(旧平安家住宅玄関)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000142
- 国指定文化財等データベース(文化庁)川西市郷土館(旧平安家住宅屋根塀)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000155
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧平賀家住宅実験研究棟
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000156
- 文化遺産オンライン 川西市郷土館(旧平安家住宅主屋)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/135848
- 川西市 郷土館
- https://www.city.kawanishi.hyogo.jp/shiseijoho/shokai/kankouannai/1003058/kankou_kyodo.html
- 川西市 郷土館の施設説明
- https://www.city.kawanishi.hyogo.jp/shiseijoho/shokai/kankouannai/1003058/kyodokan_syosai.html
- 川西市 【令和8年4月1日から】文化財資料館及び郷土館の開館日を変更します
- https://www.city.kawanishi.hyogo.jp/kurashi/shimin/sports/1009251/1023735.html
- 川西市 山下駅から郷土館への道順
- https://www.city.kawanishi.hyogo.jp/shiseijoho/shokai/kankouannai/1003058/1022709.html
- 川西市プレスリリース 川西市郷土館 旧平安邸が耐震補強改修を終え、見学受け入れを再開(PR TIMES)
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000356.000098199.html
最終更新日: 2026.10.01
基本情報
| 名称 | 川西市郷土館 |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県川西市下財町4-1 |
| 所有者 | 川西市 |
| 指定 | 登録有形文化財 18件 |
| 座標 | 34.89796, 135.40929 |