大正の火災から昭和3年に再建された長田神社の社殿群

長田神社は、兵庫県神戸市長田区長田町3丁目にある神社で、昭和3年(1928年)に再建された本殿・幣殿・拝殿をはじめ境内の建物16件が、平成14年(2002年)2月14日に国の登録有形文化財に登録された。地元では「長田さん」の愛称で呼ばれ、祭神は事代主神(ことしろぬしのかみ)である。

神社の由緒は『日本書紀』にさかのぼる。神功皇后摂政元年の春2月、新羅から戻る途中の皇后が武庫の水門で「吾を長田の国に祠れ」との託宣を受け、山背根子の娘・長媛に祀らせたのが始まりとされ、神社はこれを西暦201年のことと伝えている。平安時代の延喜式では名神大社に列し、明治29年(1896年)に官幣中社となった。神社の説明では、奉仕のために充てられた神戸(かんべ)41戸が「神戸」という地名の由来である。

寛文元年(1661年)に建てられた社殿は、大正13年(1924年)1月の漏電による火災で焼け落ちた。いま見る朱塗りの社殿は、その後に境内を組み直して建てられたもので、昭和3年に完成した。文化庁の解説によれば、本殿の設計者は香川定太郎である。

長田神社の登録有形文化財16件と境内の配置

長田神社の16件は、登録番号28-0076から28-0091までの連番で、第32回の登録としてそろって登録された。登録基準はいずれも「造形の規範となっているもの」である。内訳は、本殿・幣殿・拝殿・東楽所・西楽所・透塀及び門・天照社・八幡社・月読社・出雲大社・蛭子社・松尾社・神門・神符授与所及び附属屋・廻廊及び脇門・神楽殿である。

16件のうち12件は昭和3年の新築で、残る月読社・出雲大社・蛭子社・松尾社の4件は、火災を免れた江戸時代後期の末社である。この4社は再建にあわせて新しい石積の基壇の上へ移され、もとは素木だった木部に丹塗が施された。古い小社を新しい社殿の色に合わせて取り込んだことになる。

境内は南から北へ奥行きをもって組み立てられている。参道を進むと、石垣の上に神門と廻廊・脇門・神符授与所が一文字に並び、外苑と内苑を区切る。神門をくぐった正面が拝殿で、その奥に幣殿、さらに奥に本殿が続く。拝殿の背面の両端には東楽所と西楽所が控え、そこから透塀が延びて本殿を三方から囲む。透塀の内側、本殿の東に天照社、西に八幡社がある。

末社のうち、月読社と松尾社は拝殿の東側に、蛭子社と出雲大社は拝殿の西側にあり、東西で向かい合う。神楽殿は脇門を入った右手、拝殿の東南に西を向いて建つ。神社自身は東西の楽所を「東西楽舎」、天照社を「天照皇大御神社」、出雲大社を「出雲社」と呼んでおり、本サイトでは各棟の名称を文化庁の登録名にそろえた。

戦災を免れ、震災から復旧した長田神社の社殿

神社によると、長田神社の社殿は第二次世界大戦の空襲による被害を受けず、神戸市内で戦災を免れた唯一の大社殿である。昭和36年(1961年)から3年をかけて漆下地の丹塗と彩色を塗り直し、昭和55年(1980年)10月には再建50年の修造として、本殿をはじめとする社殿と神門・廻廊の屋根を葺き替え、塗装をもう一度改めた。

平成7年(1995年)1月17日の阪神・淡路大震災では、社殿は倒壊こそ免れたものの、東西に動き南北に傾いて半壊に近い状態になった。慶安3年(1651年)奉納の大鳥居を含む4基の大鳥居と、約80基の灯籠などの石造物も損壊している。復旧は氏子や崇敬者の奉賛で進められ、平成12年(2000年)7月14日に竣工の奉告祭が行われた。登録はその2年後である。震災の当日から、神社は参集殿を近隣の被災者の避難所として開き、約1か月の間に150人ほどが身を寄せた。

長田神社への行き方と参拝の案内

長田神社の最寄り駅は、神戸市営地下鉄の長田(長田神社前)駅と、阪急・阪神・山陽の高速長田駅である。地下鉄の駅では西出口2番を出て鳥居をくぐり、長田神社前商店街を北へ歩く。神社は徒歩5分と案内し、神戸市の冊子は約7分としている。JRを使う場合は新長田駅で地下鉄に乗り換える。市バス3系統・4系統・17系統の「長田神社前」で降りればすぐである。車なら阪神高速31号神戸山手線の神戸長田ランプから約0.6キロメートルと神社は案内している。

境内の参拝に料金の案内はない。社務所の電話受付は午前9時から午後5時までである。祈祷は予約なしで午前9時から午後3時30分ごろまで受け付けており、神門をくぐってすぐ右手の授与所で申し込む。個人の祈祷の初穂料は1万円(1月1日から15日は1万3000円)で、申し込んだ人は拝殿に昇殿できる。御朱印は3種類あり、いずれも初穂料500円で社務所で受ける。

本殿・幣殿と透塀の内側の社は一般の参拝者が立ち入れない場所にあり、拝殿の前から拝むことになる。棟ごとのよく見える位置と見学の条件は、それぞれのページにまとめた。

行事では、2月の節分に拝殿前の舞台で行われる古式追儺式が知られる。7匹の鬼が松明と太刀を手に舞い、最後に餅を斧で割る神事で、神社は室町時代にはすでに今の形で行われていたとみている。秋の例祭は10月に行われ、令和8年(2026年)は10月18日の例祭の午後に神幸祭が予定されている。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):長田神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002657
国指定文化財等データベース(文化庁):長田神社神門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002669
国指定文化財等データベース(文化庁):長田神社廻廊及び脇門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002671
国指定文化財等データベース(文化庁):長田神社月読社
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002665
文化遺産オンライン:長田神社本殿
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/115737
長田神社:御祭神・由緒・歴史
https://nagatajinja.jp/nagatajinjatowa/yuisho.php
長田神社:御社殿・附属建物
https://nagatajinja.jp/keidai/goshaden.php
長田神社:境内地図・末社
https://nagatajinja.jp/keidai/keidai.php
長田神社:アクセス方法
https://nagatajinja.jp/access/
長田神社:長田神社のご祈祷について
https://nagatajinja.jp/gokitou/gokitou.php
長田神社:ご朱印・その他
https://nagatajinja.jp/juyohin/goshuin.php
長田神社:長田神社古式追儺式
https://nagatajinja.jp/gyouji/tsuinashiki.php
長田神社:今年の神幸祭について(2026年9月28日)
https://nagatajinja.jp/oshirase/news-detail.php?id=12
神戸市(長田区役所まちづくり課):長田区の文化財・史跡めぐり冊子(PDF)
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/29465/sukomai.pdf

最終更新日: 2026.10.01

基本情報

名称長田神社
所在地兵庫県神戸市長田区長田町3-1-1
所有者宗教法人長田神社
指定登録有形文化財 16件
座標34.67143, 135.14694