旧京街道に西面する大型町家
小田垣商店店舗は、兵庫県丹波篠山市立町にある江戸時代後期の町家建築で、平成19年(2007年)10月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。篠山城下の東方に広がる商家地区を南北に貫く旧京街道に面し、街道側である西を正面とする。
規模は桁行約15メートル、梁間約12メートル。建築面積はおよそ193平方メートルに及ぶ。切妻造、桟瓦葺、平入の木造建築で、通りに面して長い側面を見せる構えをとる。上部にはつし二階、すなわち天井の低い中二階を設ける。居住のためではなく、荷や道具を納める階である。内部は北半を土間とし、地面と同じ高さのまま奥へ通す。荷車も俵も、街道からそのまま入ってこられる寸法になっている。
軒下を見上げると、垂木がむき出しになっていない。漆喰で塗り込め、火の粉に強い面をつくっている。妻面には水切瓦を数段まわし、壁を伝う雨を前方へ振り落とす。いずれも丹波から瀬戸内にかけての商家建築に共通する造作で、湿った冬を越す土壁を守るための工夫である。
この建物を使う小田垣商店の創業は享保十九年(1734年)。明治のはじめに種物商へ転じ、以後は丹波黒大豆を主力として今日に至る。同社の敷地内では10棟が国の登録有形文化財となっており、そのうち街路に接するのがこの店舗、登録番号28-0283である。
登録の理由と価値
登録有形文化財の制度は平成8年(1996年)に始まった、指定文化財より緩やかな保護の枠組みである。築後50年を経ていることに加え、三つの基準のいずれかを満たすことが求められる。小田垣商店店舗が該当するのは第一の基準、国土の歴史的景観に寄与しているものという項目だ。文化庁の解説文も、街道景観の中核をなす大型町家という評価を与えている。
この言い回しは含みが深い。評価の焦点は珍しい仕口や名工の手わざではなく、一本の街道のなかで建物が果たす役割の側にある。慶長14年(1609年)に始まる篠山城下の町割では、城から延びる街道沿いに商家町が置かれた。立町もそのひとつである。
南へ少し歩けば河原町に至る。こちらに残る町家はほとんどが妻入で、間口が狭く敷地が細長く奥へ延びる。平成16年(2004年)に重要伝統的建造物群保存地区に選定された一帯だ。対して小田垣商店店舗は平入をとり、間口15メートルを街道に開く。徒歩十分の距離に二つの流儀が並んでいることになる。角に立って見比べてみると、丹波の商家町の幅の広さが見えてくる。
なお本件は、デカンショ節を主題とする日本遺産ストーリーの構成文化財にも数えられている。文化庁のストーリー解説では、塗屋づくりの重厚な外観と、18世紀後期の老舗商店らしい屋敷景観が挙げられている。
2021年の改修と、訪ねるときの実際
令和3年(2021年)4月、敷地全体の改修を経て小田垣商店本店はリニューアルオープンした。店舗棟は物販売り場となり、カフェ「小田垣豆堂」が併設されている。設計を手がけたのは新素材研究所。現代美術作家の杉本博司氏と建築家の榊田倫之氏が主宰する設計事務所で、10棟のうち5棟を第1期として改修し、以降の工事で全棟に及ぶ計画とされる。
いちばん目を引くのは足元である。土間には京都の町家で使われていた町家石が敷き詰められた。瀬戸内周辺で採れる、わずかに赤みを帯びた花崗岩の錆石。相続による敷地の細分化や集合住宅への建て替えで行き場を失っていた石材を集め直したものだという。産地も年代もまちまちな石を並べたため、床面は一色に落ち着かず、淡い色味が混ざり合って揺れる。部屋の中心には、かつて庭にあった棗型の手水鉢が据えられ、黒豆の量り売りと商品の陳列を受け止めている。
実用面を書いておく。本店ショップは9時30分から17時30分、定休は年末年始のみ。カフェ小田垣豆堂は11時から17時(ラストオーダー16時)で、木曜定休、木曜が祝日にあたる場合は翌平日が休みとなる。駐車場は道路を挟んだ向かいにある。公共交通ならJR福知山線(JR宝塚線)篠山口駅から神姫グリーンバス篠山営業所行きに乗り、約20分の上立町下車すぐ。車では舞鶴若狭自動車道の丹南篠山口インターチェンジから10分ほどである。
撮影について明文の規定は公表されていない。営業中の店舗とカフェであるから、屋内で撮る際はスタッフに一声かけ、他の客が写り込まないよう配慮するのが穏当だろう。外観は公道から自由に撮れる。西正面は午後遅くの光をよく受ける。
Q&A
- 小田垣商店店舗の内部は見学できますか。拝観料は必要ですか。
- 見学できます。拝観料はかかりません。建物は物販店として営業しており、9時30分から17時30分まで開いています。定休は年末年始のみですので、ほぼ通年で内部に入れます。
- 小田垣商店店舗が登録有形文化財になったのはいつですか。登録番号は。
- 平成19年(2007年)10月2日、第56回の登録です。登録番号は28-0283。同じ敷地の作業場や旧酒蔵など、他9棟も同日に登録されています。
- 小田垣商店店舗へは公共交通機関でどう行きますか。
- JR福知山線篠山口駅から神姫グリーンバス篠山営業所行きに乗車し、約20分の上立町で下車、徒歩すぐです。バスの本数は多くないため、帰りの時刻を先に確かめておくと安心です。
- 小田垣商店店舗と、近くの河原町妻入商家群の建物はどう違うのですか。
- 河原町の町家は多くが妻入で、狭い妻面を街道に向け、敷地が奥へ長く延びます。小田垣商店店舗は平入で、桁行15メートルの長い面を街道に見せます。両者は徒歩十分ほどの距離にあり、丹波の商家建築の幅を比べる材料になります。
- 小田垣商店店舗で食事や喫茶はできますか。
- 併設のカフェ「小田垣豆堂」で、黒豆茶や丹波黒大豆・丹波栗・丹波大納言小豆を使った菓子が供されます。営業は11時から17時、ラストオーダー16時、木曜定休です。週末は行列ができることがあり、持ち帰りだけなら物販カウンターのほうが早いこともあります。
基本情報
| 名称 | 小田垣商店店舗(おだがきしょうてんてんぽ) |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県丹波篠山市立町19-5(文化庁データベースの記載は「篠山市」。平成31年/2019年に市名変更) |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 28-0283 |
| 指定年 | 平成19年(2007年)10月2日登録(第56回) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行約15m、梁間約12m、建築面積約193㎡/木造平屋一部2階建、瓦葺 |
| 所有者 | 文化庁データベースに記載なし。敷地は株式会社小田垣商店が使用 |
| 公開状況 | 物販店として公開(9:30〜17:30、年末年始休) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース ― 小田垣商店店舗
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006235
- 文化遺産オンライン ― 小田垣商店店舗
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/197229
- 小田垣商店 公式サイト ― 店舗のご案内
- https://www.odagaki.co.jp/store/
- 日本遺産ポータルサイト ― 小田垣商店(店舗他9件)
- https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/882/
- 新素材研究所 ― 小田垣商店
- https://shinsoken.jp/works/odagaki-shoten/
最終更新日: 2026.08.05