「高砂の尾上」と詠まれた住吉の社、尾上神社
尾上神社は、兵庫県加古川市尾上町長田にある住吉大明神を祀る神社で、江戸時代後期から大正時代にかけて建てられた本殿・拝殿・幣殿・随身門の4棟が、平成19年(2007年)5月15日にそろって国の登録有形文化財に登録された。
読みは「おのえじんじゃ」。加古川の河口に近い長田の集落に鎮まり、海上の守り神として船乗りの信仰を集めてきた。祭神は住吉三神(底筒男命・中筒男命・表筒男命)と息長足姫命(神功皇后)である。神社の由緒によると、朝鮮半島から戻った神功皇后がこの浜に上陸したものの長雨で軍を進められず、「鏡の池」で身を清めて住吉大明神を祀り、晴天を祈ったのが始まりと伝わる。
この辺り一帯はかつて「高砂」と総称され、尾上神社の地は「高砂の尾上」として古歌や謡曲にたびたび詠まれた。謡曲「高砂」では、肥後の阿蘇宮の神主友成が都へ上る途中で相生の松を訪ね、尉と姥の二神に出会う。神社はその舞台をこの尾上の地と伝え、夫婦和合の神としての信仰もここから生まれた。
尾上神社の沿革と4棟の登録
中世の終わりに社頭は荒れた。神社の由緒によれば、天正年間、羽柴秀吉の三木城攻めに対抗した毛利方の軍勢がこの海岸に上陸して陣を張り、初代の尾上の松も薪を取るために切り倒されたという。復興は江戸時代の初めで、慶長9年(1604年)に姫路藩主池田輝政が初代の松の根の上へ社殿を移して修築し、寛永2年(1625年)には本多忠政が鐘楼を建てた。
江戸時代には地誌『播磨鑑』や、文化元年(1804年)の『播州名所巡覧図絵』に名所として取り上げられた。司馬江漢や伊能忠敬、幕末の志士清河八郎も足を運んだと神社は伝えている。
いま境内に建つ4棟は、この復興よりあとの建物である。文化庁のデータベースによる年代は、本殿と随身門が江戸時代後期、拝殿が明治時代初期、幣殿が大正時代。4棟は第54回の登録で同じ日に登録有形文化財となり、登録番号は本殿28-0266、幣殿28-0267、拝殿28-0268、随身門28-0269と続く。登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。
規模は拝殿が建築面積64平方メートルで最も大きく、幣殿51平方メートル、随身門23平方メートル、本殿16平方メートルと続く。屋根は本殿と随身門が銅板葺、拝殿と幣殿が本瓦葺。随身門には大正時代と平成7年(1995年)にも改修の手が入っている。
建物のほかに、尾上神社には「尾上の鐘」と呼ばれる朝鮮鐘が伝わる。神社の解説では高麗時代、11世紀前半の作とみられ、明治34年(1901年)に国の指定を受けた。応仁2年(1468年)に海賊に盗まれて土佐の足摺岬の沖に沈められ、引き揚げられて高野山に納められたが、撞くと「オノエへ、イノー(帰ろう)」と響いたため尾上へ戻された、という言い伝えが残る。
尾上神社の境内の配置
尾上神社の境内は、入口に随身門が建ち、その正面に拝殿・幣殿・本殿が一列に並ぶ。文化庁の解説によれば、境内の入口の正面に社殿が建ち、本殿はその最も奥にある。拝殿の背面には太鼓橋と神饌所が付き、幣殿は本殿の前面に接して建つ。本殿の前面は幣殿の祝詞座につながっているので、手前の拝殿から奥の本殿までが1本の軸の上にある。
社殿は入口の随身門と向き合って建つ。神社は、元日の朝に境内から門を望むと、初日の出がちょうど門の中央に昇ると紹介している。参道から見えるのは拝殿の大きな瓦屋根で、幣殿と本殿はその後ろに重なる。各棟の見え方はそれぞれのページで紹介している。
社殿のそばには「都恋しき片枝の松」がある。神功皇后の跡を慕って枝がことごとく東へ伸びたと伝わる松で、昭和24年(1949年)に枯れ、いまの木は3代目にあたる。1月13日の神事「ワーワーの頭」では、かつてこの松の前に粥を供えた。
境内には相生の霊松「尾上の松」もある。1本の根から黒松(男松)と赤松(女松)が分かれて育つ姿が、夫婦和合のしるしとされてきた。神社によると、初代は天正年間に切り倒され、その株は宝物館に保存されている。3代目は大正13年(1924年)に天然記念物の指定を受けたが、昭和24年(1949年)に松くい虫で枯れた。現在の松について神社は5代目と案内しているが、8代目と紹介する観光案内もあり、代の数え方は資料によって異なる。
尾上神社の参拝と行き方
尾上神社の境内は誰でも参拝でき、拝観料はかからない。参拝時間を定めた公式の案内は見当たらないが、元日は午前0時から初詣ができると神社は案内している。尾上の鐘を見たい場合や、団体で説明を聞きたい場合は、前もって尾上神社(079-422-5676)へ問い合わせたい。
最寄り駅は山陽電鉄本線の尾上の松駅で、加古川観光協会によれば歩いて約10分。JR加古川駅からは加古川市のコミュニティバス「かこバス」に乗り、「尾上市民センター前」で降りればすぐである。車で訪れる人のために駐車場がある。
主な祭礼は、9月30日の例祭と、10月15日前後の土曜・日曜に行う秋祭り。秋祭りには天狗を先頭に神輿や布団屋根太鼓、だんじりが町内を巡る。7月最終日曜日の夏祭りには、子どもたちが作った行灯およそ100基が境内に灯る。建物をゆっくり見たいなら、祭礼の日を外して訪れたい。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):尾上神社本殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006165
- 国指定文化財等データベース(文化庁):尾上神社幣殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006166
- 国指定文化財等データベース(文化庁):尾上神社拝殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006167
- 国指定文化財等データベース(文化庁):尾上神社随身門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006168
- 加古川市:尾上神社(本殿、拝殿、幣殿、隋身門)4件/国登録文化財
- https://www.city.kakogawa.lg.jp/soshikikarasagasu/kyouiku/kakuka/kyoikushidobu/bunkazai_cyosa/bunkazai/kunitourokukaisetu/kunitourokuonoejinjakaisetu.html
- 尾上神社:御由緒
- https://onoejinja.com/yuisho/
- 尾上神社:社殿・文化財
- https://onoejinja.com/property/
- 尾上神社:尾上神社の銅鐘
- https://onoejinja.com/copper-bell/
- 尾上神社:ご祈祷
- https://onoejinja.com/prayer/
- 尾上神社:年間祭事暦
- https://onoejinja.com/festival/
- 尾上神社:交通案内
- https://onoejinja.com/access/
- 加古川観光協会:尾上神社・尾上の松
- https://kako-navi.jp/spot/18910.html
最終更新日: 2026.10.04
基本情報
| 名称 | 尾上神社 |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県加古川市尾上町長田518 |
| 所有者 | 宗教法人尾上神社 |
| 指定 | 登録有形文化財 4件 |
| 座標 | 34.74370, 134.82412 |