袴腰をまとった三間の鐘楼
円教寺鐘楼は、兵庫県姫路市書写の書写山上にある円教寺の鐘楼で、大正2年(1913年)4月14日に重要文化財に指定された。桁行三間、梁間二間、袴腰付の入母屋造で、屋根は本瓦葺である。三之堂の広場から北側の坂を上った高みに建つ。
袴腰とは、鐘楼の下層を板張りで裾広がりに覆う仕立てをいう。柱を露出させる素朴な鐘楼と違い、下半分が台形の塊になるため、遠目には安定した二段構えに見える。円教寺鐘楼はこの袴腰に加えて腰組を備えており、上層の縁を組物で受けている。
吊られている銅鐘は兵庫県の指定文化財である。寺記は元亨4年(1324年)の鋳造と伝えるが、姫路市は確証がないとしている。
建築年代について三つの見解がある
円教寺鐘楼で注意しておきたいのは、建てられた時期に定説がないことである。三つの見解が並存している。
- 文化庁の国指定文化財等データベースは「室町後期」、西暦で1467年から1572年の幅を示す
- 姫路市の解説は、寺記が伝える元徳3年(1331年)焼失・元弘2年(1332年)建立には確証がないとしたうえで、組物などの形式と手法から14世紀前半のものと見る
- 円教寺は鎌倉時代後期の様式と説明している
いずれも様式判断に基づく推定で、建立年を直接示す墨書や棟札は見つかっていない。本記事は文化庁データベースの記載を基準としつつ、この食い違いをそのまま記す。実物を前にしたとき、どの説がしっくり来るかを自分の目で確かめられるのは、むしろこの建物の面白さである。
指定そのものは大正2年で、大講堂・金剛堂と同じ日に行われた。円教寺鐘楼は、書写山でもっとも早く国の保護を受けた3棟のひとつである。平成13年(2001年)に解体修理が完了しており、その調査で、もとの屋根は宝形造であった可能性が指摘されている。
腰組と組物を下から見る
円教寺鐘楼は小さな建物なので、近づいて細部を見るのがよい。まず袴腰の裾のラインを確認したい。板張りが下へ向かって開いていき、地面に接する位置で止まる。この角度が急すぎず緩すぎない点に、正規の鐘楼としての整いがある。
次に見上げると、袴腰の上端から腰組が張り出しているのが分かる。組物が上層の縁を受け、その上に高欄が回る。姫路市が年代判断の根拠に挙げているのは、この組物の形式と手法である。細部が年代の証拠になるという文化財の見方を、実地で追える場所といえる。
周囲は木立で、三之堂の広場のような開けた視界はない。全体を収めるなら南側の坂の途中から見上げるのが素直で、上層の入母屋屋根と袴腰が一枚に収まる。
見学方法
円教寺鐘楼は屋外にあり、周囲を歩いて自由に見学できる。ただし内部に立ち入ることはできず、鐘を撞くこともできない。銅鐘は上層に吊られているため、地上からは格子越しに輪郭が見える程度である。
三之堂の広場から北へ坂を上る短い区間は、雨のあとは滑りやすい。石段と土の道が交じるので、足元に注意したい。
境内までの経路と入山の条件は書写山円教寺のページにまとめてある。円教寺鐘楼は三之堂と奥之院を結ぶ道筋の途中にあたるので、奥之院まで足を延ばす予定なら往路で立ち寄っておくとよい。
Q&A
- 円教寺鐘楼はいつ建てられたのですか。
- 定説がありません。文化庁のデータベースは室町後期(1467年から1572年)、姫路市は様式から14世紀前半、円教寺は鎌倉時代後期の様式と、それぞれ異なる見解を示しています。
- 円教寺鐘楼の「袴腰」とは何ですか。
- 鐘楼の下層を板張りで裾広がりに覆う仕立てのことです。柱をむき出しにする形式と異なり、下半分が台形の塊になります。円教寺鐘楼は袴腰に腰組を組み合わせた正規の形式です。
- 円教寺鐘楼の鐘は撞けますか。
- 撞くことはできません。内部への立ち入りも不可で、銅鐘は上層に吊られているため地上からは格子越しに見えるだけです。銅鐘は兵庫県の指定文化財です。
- 円教寺鐘楼はどこにありますか。
- 三之堂の白砂の広場から北側の坂を上った高みに建っています。三之堂と奥之院を結ぶ道筋の途中にあたります。
- 円教寺鐘楼は修理されたことがありますか。
- 平成13年(2001年)に解体修理が完了しています。その際の調査で、もとの屋根は宝形造であった可能性が指摘されました。
基本データ
| 名称 | 円教寺鐘楼 |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県姫路市書写2968 |
| 指定区分 | 重要文化財 |
| 指定年 | 大正2年(1913年)4月14日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行三間、梁間二間、袴腰付 |
| 所有者 | 円教寺 |
| 公開状況 | 屋外につき外観は常時見学可。内部は非公開 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 円教寺鐘楼(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2257
- 円教寺鐘楼(姫路市)
- https://www.city.himeji.lg.jp/kanko/0000001727.html
- 円教寺境内(姫路市)
- https://www.city.himeji.lg.jp/kanko/0000001716.html
最終更新日: 2026.09.13