邸内の気配を告げる門

髙添家を訪れる者は、洋館や和館を目にする前に、まず門と出会う。髙添家住宅木戸門は、敷地西側の道路際に、南北を棟とする向きで建っている。登録が認める建造物のなかでも最も小さな種類にあたり、建物ではなく工作物として分類され、間口はおよそ3.8メートル。それでいて、この小ささには多くの意匠が込められ、門の先に何があるかを告げるという大切な役目を果たしている。

門は腕木門の形式を基本とする。主柱から突き出した腕木が屋根を支えるのを助ける形式で、これ自体はよく見られる型である。この門を際立たせているのは、茶室の数寄屋意匠から引かれた、細部への惜しみない手のかけようである。登録の記録は木戸門を昭和前期のものとし、西暦としては1945年を挙げる。三十年をかけて形をととのえた敷地のなかでは、後の方の普請にあたる。

登録の理由と価値

木戸門は、平成28年(2016年)11月29日、第85回の登録で国の登録有形文化財(建造物)となった。登録番号は28-0657。登録基準は「造形の規範となっているもの」で、洋館と同じ区分である。その造作がとりわけ考え抜かれた工作物にふさわしい。

各部を見ていきたい。主柱は角材ではなく丸太で、自然の節が表面に出るよう選んだ出節付とし、あえて素朴な味わいを残す。両開きの扉は桟唐戸、すなわち框で組んで面を嵌め込んだ戸で、ここでは各扉が三段に作り分けられている。下段は、木目を砂摺で浮かせた鏡板。中段は、まっすぐな柾目の挽割板。上段は、格子のように並べた連子状の板である。その上に屋根がかかり、まずこけら板を葺き、さらに杉皮で仕上げる。丸太、砂摺の木目、杉皮。いずれも茶庭の素材であり、それを実用の門に用いている。一つひとつの選択に払われた心配りが、この門に登録の座を与えている。

見どころ

ここに登録された四棟のうち、通りすがりの人が最も十全に味わえるのが木戸門である。設計上、街路に面しているからだ。門の前に立ち、扉を下から上へと読みたい。砂摺の鏡板、柾目の板、格子のような連子。それぞれの段が木に対してわずかに違う手を加えており、その順序こそが眼目である。

そして屋根を見上げ、こけら板の上に葺かれた杉皮に気づきたい。瓦屋根とはまるで異なる、やわらかく肌理のある仕上げである。この種の門は、訪れる客を門の先の家へと導き、到着の瞬間に静かな洗練の調子を定めるためのものだった。門の敷居に立ち、背後に丘の住宅地を仰げば、髙添家が公の道から私の地への移り目をいかに丁寧に扱っていたかが感じ取れる。

Q&A

Q門をくぐれますか。
Aくぐれません。個人所有の住宅の入口であり、住宅は非公開です。門は道路から見ることができますが、住民の私生活にご配慮のうえご覧ください。
Q腕木門とは何ですか。
A主柱から短い腕木を突き出し、それで屋根を支えるのを助ける形式の門です。広く用いられる伝統的な型で、この門ではとりわけ丁寧に、数寄屋風の造作をもって仕上げられています。
Q桟唐戸とはどのような扉ですか。
A框で組んだ枠に、板や連子を嵌め込んだ扉です。この門では両開きの扉がそれぞれ三段に分かれ、下段の砂摺の鏡板から上段の格子状の連子まで、段ごとに違う手が加えられています。
Q屋根はなぜ杉皮なのですか。
Aこけら板の上に葺いた杉皮は、数寄屋や茶室の造りに通じる、やわらかく自然な仕上げをもたらします。格式ばった構えより、控えめな洗練を旨とする門に似合います。
Qいつ建てられたのですか。
A登録の記録では昭和前期とされ、西暦は1945年と記されています。髙添家の敷地の四棟の一つで、いずれも2016年の同じ日に登録されました。

基本情報

名称髙添家住宅木戸門(たかぞえけじゅうたくきどもん)
所在地兵庫県宝塚市雲雀丘山手一丁目148
指定区分登録有形文化財(建造物)平成28年11月29日登録(第85回)登録番号28-0657
登録基準造形の規範となっているもの
建築年昭和前期(記録上の西暦1945年)
構造木造、杉皮葺、間口約3.8メートル、1棟
交通阪急宝塚本線・雲雀丘花屋敷駅北側の丘陵地
公開状況個人住宅につき非公開

References

文化庁 国指定文化財等データベース 髙添家住宅木戸門
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011369
文化庁 文化遺産オンライン 髙添家住宅木戸門
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/284436
宝塚市公式ホームページ 文化財一覧
https://www.city.takarazuka.hyogo.jp/1060683/1060709/rekishi/1026244/1003729.html

最終更新日: 2026.07.11