綱神社に寄り添う、もう一棟の茅葺社殿
栃木県益子町の西部、上大羽の山あいに綱神社が鎮座する。石段を上がった先、本殿のすぐ脇に、いま一棟の茅葺きの社殿が建つ。これが摂社・大倉神社の本殿である。大永7年(1527年)、室町時代後期の建立とされ、本社の綱神社本殿とともに国の重要文化財に指定されている。
規模は小さい。間口一間の一間社流造で、三間社の本社に対して、同じ手法を一回り小さくまとめた姿になっている。
どのような建物か
形式は一間社流造、屋根は茅葺き。正面に一間の向拝を張り出し、切妻屋根の前流れがそのまま向拝を覆って階段の上にかかる。向拝柱は面取りした角柱、身舎の柱は円柱で、内部は八角に仕上げている。
組物は三斗組。向拝の中央には蟇股を置く。いずれも大ぶりな装飾ではないが、木鼻や組物の納まりに、室町後期らしい素朴で力のある手つきが見て取れる。本社の綱神社本殿が内部を十六角柱とするのに対し、こちらは八角で、規模に応じた作り分けがわかる。
指定の理由と価値
大倉神社の創建は大同2年(807年)と伝わる。現在は綱神社の境内に摂社として祀られ、社殿は大永7年(1527年)の建立である。建物は大正12年(1923年)に国の保護を受け、現在は重要文化財に区分される。指定には前机一脚が附(つけたり)として加えられている。
価値は、十六世紀前半の村の小社が、当時の形のまま建物として残っている点にある。本社と摂社が並び立つことで、同じ地方の大工が大小をどう作り分けたかを、その場で見比べられる。
訪れたときの見どころ
石段の下に立つと、二棟の社殿がひと組として目に入る。幅の広い綱神社本殿と、細身の大倉神社本殿。どちらも深い茅葺きの屋根をいただく。軒と柱の交わるあたりの組物、向拝の蟇股に目をとめてほしい。
境内には大きな椎の木が立つ。宇都宮朝綱の手植えと伝わり、推定樹齢はおよそ800年。益子町の天然記念物に指定されている。人気の少ない静かな境内で、ゆっくり歩く時間に向いた場所である。
周辺の見どころとアクセス
この一帯は、中世に笠間・益子を治めた宇都宮氏ゆかりの土地である。参道の下手には浄土庭園の名残とされる池があり、近くには栃木県指定文化財の宇都宮家墓所がある。隣接する地蔵院も、同じ歴史のまとまりの中にある。
上大羽には門松を立てない風習が残る。創建の神を大晦日に迎えた際、飾りを整える間がなく、机を逆さにして神を祀ったという言い伝えにちなむもので、以来この地では正月に門松を用いないとされる。
益子は焼き物の産地として知られ、笠間とともに日本遺産「かさましこ」を構成する。綱神社は焼き物の町並みからは離れ、町の西寄りの田園に位置する。車での来訪が便利で、鉄道では真岡鐵道の益子駅が最寄りとなる。
Q&A
- 社殿の中に入れますか。
- 中に入ることはできません。本殿は神を祀る社殿で、外から拝観します。屋根・組物・柱は外からよく見えます。
- 隣の綱神社本殿との違いは何ですか。
- 綱神社本殿は間口三間で内部を十六角柱とし、大倉神社本殿は間口一間で内部を八角とします。どちらも茅葺きで、ともに大永年間(1520年代)の建立です。
- 門松を立てない風習があるのはなぜですか。
- 創建の神を大晦日に迎えた際、飾りを整える間がなかったという言い伝えにちなみ、この地では正月に門松を用いないとされます。
- 写真撮影はできますか。
- 屋外の境内での外観撮影は概ね問題ありません。参道を外れず、参拝の場であることに配慮してください。
- どう行けばよいですか。
- 益子町西部の上大羽にあります。車が最も手軽です。鉄道では真岡鐵道の益子駅が最寄りで、そこからは車での移動になります。
基本データ
| 名称 | 綱神社摂社大倉神社本殿(つなじんじゃせっしゃおおくらじんじゃほんでん) |
|---|---|
| 所在地 | 栃木県芳賀郡益子町大字上大羽 |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) |
| 指定年月日 | 大正12年(1923年)3月28日 |
| 時代・年代 | 室町後期/大永7年(1527年) |
| 構造形式 | 一間社流造、茅葺 |
| 員数 | 1棟(附:前机1脚) |
| 所有者 | 綱神社 |
参考文献
- 文化遺産オンライン(文化庁)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/121204
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/394
- 益子町公式ホームページ 文化財詳細
- https://www.town.mashiko.lg.jp/cultural_property.php?mode=detail&code=29
- 日本遺産ポータルサイト(文化庁)
- https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/4859/
最終更新日: 2026.06.04