東酒造場―万延元年創業の蔵元に残る12棟

東酒造場(ひがししゅぞうじょう)は、石川県小松市野田町にある万延元年(1860年)創業の造り酒屋、東酒造株式会社の酒蔵と住まいで、敷地に建つ12棟が平成21年(2009年)1月8日に登録有形文化財に登録された。醸す酒の銘柄は「神泉(しんせん)」で、会社の英語名は Higashi Sake Brewing Company と表記される。

蔵元によれば初代は源右衛門で、いまの当主は7代目にあたる。昭和11年(1936年)の火災で酒造場は西蔵を残してほぼ焼け、その年のうちに店舗兼主屋が建て直された。酒蔵のほうは戦後の昭和20年代に、地元で切り出した石を使って順に再建されている。

12棟の年代を文化庁の国指定文化財等データベースで並べると、移築された西蔵の慶応4年(1868年)を別にすれば、昭和11年(1936年)の主屋から昭和27年(1952年)の茶室までの十数年に収まる。登録番号は17-0193から17-0204までの続き番号である。

このページでは東酒造場の敷地全体の成り立ちと歩き方、見学の条件をまとめる。各棟の構造や登録の理由は、それぞれのページで扱う。

観音下石の蔵と小松の石の文化

東酒造場の外観を決めているのは、観音下石(かながそいし)を積んだ蔵の列である。小松市観音下の山で採れる凝灰岩で、きめが細かく加工しやすい。蔵元は、当時としては断熱の効果にすぐれていたことを、この石を選んだ理由に挙げている。

小松市の日本遺産「『珠玉と歩む物語』小松~時の流れの中で磨き上げた石の文化~」は、平成28年(2016年)に認定されたストーリーで、東酒造の石蔵を構成文化財の一つに挙げる。日本遺産ポータルサイトの紹介文は、昭和20年代に観音下石で築いた石蔵が5棟並んで建つ場所としている。同じサイトの特集記事は、石蔵が冬は暖かく夏は涼しいため酒造りの温度管理に向き、いまも仕込みや貯蔵に使われていると伝える。

石蔵のあいだには、慶応4年(1868年)の土蔵造の西蔵、下見板張にステンドグラスの窓をもつ検査室、茶室と客間の数寄屋建築が混じる。造り酒屋の作業棟と住まいが一つの敷地にまとまって残る点も、東酒造場を見るときの手がかりになる。

東酒造場の敷地の配置と歩く順序

文化庁の解説文をもとに東酒造場の配置をたどると、次のようになる。

  • 東辺の中央、通りから少し入ったところに大門が蔵に挟まれて建つ。長屋門の形式で、ここが正面の出入口にあたる。
  • 大門を入ると、敷地の中央やや北寄りに店舗兼主屋が東を向いて建つ。
  • 南辺には東から東蔵、作業場の酒母室、中蔵、検査室、西蔵が一列に並ぶ。作業場は東蔵と中蔵の北面にも釜場として続き、大門の南半分とひと続きの空間をつくる。
  • 西辺では西蔵の北に麹室が接し、その北に茶室の桂松庵がある。桂松庵は主屋の西側に広がる庭園に面し、北西の隅には待合兼客間の緑寿庵が建つ。
  • 北辺には主屋の東に勝手口、さらに東に道具蔵が続く。

南の通り沿いに続く石積みの壁と、東側の大門まわりは、敷地に入る前から目に入る。作業場に付くレンガ造の煙突は背が高く、蔵元も来訪の目印に挙げている。

主屋西側の庭園は金沢の丸岡樹仙の作と蔵元は伝えており、茶室とあわせて昭和26年(1951年)に着工したという。庭園そのものは登録の対象に含まれていない。

東酒造場の見学案内とアクセス

東酒造場の最寄り駅はIRいしかわ鉄道の能美根上駅で、駅からタクシーでおよそ5分かかる。小松駅寄りの隣駅にあたる明峰駅からは、歩いておよそ20分である。北陸新幹線で小松駅に着いた場合は、IRいしかわ鉄道に乗り換えて明峰駅か能美根上駅へ向かうとよい。

車の場合、駐車場は建物の正面にあり、小松市の観光サイトによれば普通車5台と大型バス1台が停められる。直売所「神泉石蔵本店」の営業は午前9時から午後6時までで、日曜日が定休日とされる。行事などで休みが変わることがあるので、蔵元が公開している休日予定も見ておきたい。

建物の内部は、蔵元が案内する蔵見学でのみ見られる。蔵元の案内では、見学は予約制で希望日の7日前までに申し込み、受付は4名からとなる(4名に満たない場合は4名分の料金)。料金は1人1,100円で500円分の商品券が付き、所要時間は見学30分と売店での試飲を合わせて50分ほど。年末年始の12月28日から1月7日までは休みで、醸造期は日程が変わる。毎年5月3日の酒蔵開放では、無料の見学ツアーが行われている。

茶室の桂松庵と待合の緑寿庵は地震で大きな被害を受け、改修が終わるまで案内を見合わせている(2026年9月時点の蔵元の告知)。建物内での撮影の可否は公表されていないため、予約の際に確認しておくと安心である。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「東酒造場店舗兼主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007467
文化庁 国指定文化財等データベース「東酒造場西蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007471
文化庁 国指定文化財等データベース「東酒造場大門」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007477
文化遺産オンライン「東酒造場店舗兼主屋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/198459
日本遺産ポータルサイト「東酒造」
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/1990/
日本遺産ポータルサイト「『珠玉と歩む物語』小松」
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story027/
日本遺産ポータルサイト「日本遺産巡り#30『珠玉と歩む物語』小松」
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/special/128/
小松市「日本遺産『珠玉と歩む物語』小松~時の流れの中で磨き上げた石の文化~」
https://www.city.komatsu.lg.jp/soshiki/1015/kankou_shoku/4/1132.html
こまつ観光ナビ「東酒造株式会社」
https://www.komatsuguide.jp/spot/detail_117.html
ほっと石川旅ねっと「東酒造株式会社」
https://www.hot-ishikawa.jp/spot/detail_5579.html
IRいしかわ鉄道「明峰駅」
https://www.ishikawa-railway.jp/station/meiho/

最終更新日: 2026.09.15

基本情報

名称東酒造場
所在地石川県小松市野田町丁35
所有者東酒造株式会社
指定登録有形文化財 12件
座標36.43219, 136.48029