川鶴酒造鶴鳴舘(旧瓶詰蔵)

川鶴の建物の多くは静けさのなかで働いているが、この一棟は音で満たされる。鶴鳴舘はもと瓶詰を担う蔵として建てられ、いまはコンサート会場として使われている。細長い平屋の内部は、当初の小屋組の下で音楽や集いによく応える。

建立は大正期、おおよそ1910年代から1920年代半ばにあたり、東西棟で建つ。位置は古い明治蔵の西南方である。木造平屋建、建築面積は約149平方メートルで、桟瓦葺の切妻屋根を載せる。平面は外からも読み取りやすい。北面の中央に大戸口を開き、南面には三尺角ほどの小窓を四箇所配する。川鶴酒造は明治24年(1891年)、川人清造が財田川のほとりで創業した蔵で、その水はいまも仕込みに流れている。

名について一言添えたい。会社名の鶴の字を含みながら、その読みは社名の連想からではなく、公的な登録の記載に従う。

登録の理由と価値

鶴鳴舘は平成14年(2002年)8月21日、国土の歴史的景観に寄与しているものとして登録有形文化財に登録された。登録番号は37-0124。南側敷地南辺における醸造所景観の主要素に位置づけられる。

その面白さは、敷地内で果たす役割と、第二の生の両方にある。瓶詰はかつて専用の場を要するひとつの工程だった。その用途を終えたとき、建物は朽ちるにまかされず、コンサートやイベントの場へと転じられた。こうした活用は、建物に果たすべき役割を与えることで存続させる。加えて訪れる人は、古い酒蔵の量感と光を内側から体験できる。ここの稼働する建物のなかでは得がたい機会である。

見どころ

外からは、開口部の理屈をたどりたい。北面中央の大戸口はかつて荷車や木箱を通し、南面の四つの小窓は壁を弱めずに作業を照らした。古い機具を取り払われても、建物は労働が求めた平面をとどめている。

内部は、催しのあるとき、空間そのものが見どころとなる。あらわしの小屋組の下に途切れのない一室が広がり、その光と反響は、新しく建てた専用ホールにはなかなか望めない質を備える。この雰囲気こそ、蔵がここで演奏会を開く理由でもある。

会場は常時開放ではなく催しに合わせて開くため、時期が肝心となる。訪ねる前に蔵の予定を確かめたい。通常の日には、隣接する川鶴資料館が平日の定時に開いており、敷地を見るには確実な方法となる。

Q&A

Q鶴鳴舘はもともと何の建物ですか。
A大正期に建てられた瓶詰の蔵です。現在はコンサート会場・イベント空間として使われています。
Q催しに参加できますか。
A毎日の定時開館ではなく、コンサートやイベントに合わせて開きます。事前に蔵の予定をご確認ください。敷地内の資料館は平日開館です。
Q四つの小窓は何のためですか。
A三尺角ほどの小窓を南面に並べ、室内を採光しています。荷の出入りは北面の大戸口が担いました。
Q工場の建物がなぜ文化財なのですか。
A登録有形文化財には、歴史的景観への寄与から価値づけられる建物が含まれます。鶴鳴舘は醸造所の景を形づくる川鶴の五棟のひとつです。

基本情報

名称川鶴酒造鶴鳴舘(旧瓶詰蔵)
所在地香川県観音寺市本大町1032-1
指定区分登録有形文化財(建造物) 平成14年8月21日登録 登録番号37-0124
年代大正期(1912-1925年)
構造木造平屋建、瓦葺、建築面積約149平方メートル 1棟
所有者川鶴酒造株式会社
公開状況コンサート・イベント会場として催しに合わせ開場。同一敷地の資料館は平日開館。

参考文献

国指定文化財等データベース — 川鶴酒造鶴鳴舘(旧瓶詰蔵)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002999
観音寺市 — 川鶴酒造の蔵
https://www.city.kanonji.kagawa.jp/soshiki/21/14017.html
川鶴酒造 — 公式サイト
https://kawatsuru.com/

最終更新日: 2026.07.10