川鶴酒造麹蔵

川鶴の五棟のうち、建てられた目的の仕事を今も続けているのが麹蔵である。二階には麹室があり、建物が竣工してから一世紀を越えた現在も、そこで麹がつくられている。

麹は酒造りの静かな原動力といえる。蒸した米に麹菌を繁殖させたもので、麹菌の生む酵素が米の澱粉を糖に変え、その糖を酵母が発酵させて酒になる。麹なくして酒はなく、麹室には一定の温度と丁寧な扱いが欠かせない。だからこそ専用の、しっかりとした室が設けられた。

麹蔵は大正3年(1914年)の建立で、南北棟に建ち、西隣の西酒蔵と軒高約9メートルを揃える。土蔵造二階建、スレート葺、切妻造で、建築面積は約180平方メートル。川鶴酒造は明治24年(1891年)、川人清造が財田川のほとりで創業した蔵で、その伏流水は今も仕込みを支えている。

登録の理由と価値

麹蔵は平成14年(2002年)8月21日、国土の歴史的景観に寄与しているものとして登録有形文化財に登録された。登録番号は37-0120である。

その価値は、建築としての面と、生きて働いているという面の両方にある。北妻面は西酒蔵と一体となって醸造場の北面を構成し、この連続した壁面が敷地の景観に欠かせないものとして登録でも重んじられている。加えて、二階の麹室が一度も使われなくなることがなかった点が大きい。当初の役割を果たし続ける文化財は、壁や梁だけでなく働きそのものを保つ。同年代の産業建築のなかで、この継続はめずらしい。

見どころ

外から見るときは、隣の西酒蔵と合わせて眺めたい。二棟は軒の線を共有しており、どちらか一方ではなく、その意図的な揃えが北面に静かな秩序を与えている。

壁が何を守っているのかも考えてみたい。二階の麹室は温もりを保ち、清潔で安定した環境を必要とする。防火のために有効だった厚い土蔵の壁は、同時に室内の温度を一定に保つのにも適していた。建物の形は、内側で営まれる仕事に従っている。

麹室は稼働する作業空間であり見学はできない。醸造の建物も通常は非公開である。近くの川鶴資料館は平日の定時に開いており、蔵の営みを知るには実際的な場所となる。イベント開催時には敷地内をより広く見られることもある。

Q&A

Q麹とは何ですか。なぜ専用の建物が要るのですか。
A蒸米に麹菌を育てたもので、澱粉を発酵可能な糖に変えます。一定の温度と清潔さが必要なため、麹室という専用の室が設けられます。
Q麹室は今も使われていますか。
Aはい。二階の麹室は大正3年(1914年)の竣工以来、麹づくりに使われ続けています。
Q西酒蔵とはどのような関係ですか。
A両者は軒高を揃えて並び建ち、それぞれの妻面が一体となって醸造場の北面を形づくっています。
Q中に入れますか。
A入れません。麹室は作業空間で、醸造の建物も通常は非公開です。敷地内の資料館は平日に開館しています。

基本情報

名称川鶴酒造麹蔵
所在地香川県観音寺市本大町836
指定区分登録有形文化財(建造物) 平成14年8月21日登録 登録番号37-0120
年代大正3年(1914年)
構造土蔵造二階建、スレート葺、建築面積約180平方メートル 1棟
所有者川鶴酒造株式会社
公開状況稼働中の蔵につき通常非公開。同一敷地の資料館は平日開館。

参考文献

国指定文化財等データベース — 川鶴酒造麹蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002995
観音寺市 — 川鶴酒造の蔵
https://www.city.kanonji.kagawa.jp/soshiki/21/14017.html
川鶴酒造 — 公式サイト
https://kawatsuru.com/

最終更新日: 2026.07.10