伊勢から讃岐へ渡った神明造の社殿
宇夫階神社本殿(旧多賀宮御正殿)は、香川県綾歌郡宇多津町にある神社本殿で、昭和28年(1953年)の式年遷宮にあたり伊勢神宮外宮の第一別宮である多賀宮の御正殿として建てられ、昭和51年(1976年)に宇多津へ移された建物として、平成16年(2004年)11月8日に登録有形文化財(建造物)に登録された。
伊勢の社殿は20年ごとに建て替えられる。役目を終えた建物は解体され、由緒のある神社へ譲られることがある。宇夫階神社の本殿は、その頒賜を受けた一棟である。昭和48年(1973年)の火災で社殿を失った宇夫階神社が、外宮の別宮の御正殿をそのまま拝戴し、青の山の裾に広がる小丘の上に建て直した。
建築面積は22平方メートル。桁行3間、梁間2間の小さな建物だが、形式は伊勢の系統をまっすぐ受け継いでいる。
登録の理由と、掘立柱という古い工法
登録基準は「造形の規範となっているもの」である。国土の景観への寄与を理由とする登録が多いなかで、この基準が適用された建物は数が限られる。宇夫階神社本殿の場合、伊勢の社殿形式を寸分違わず伝えている点が評価された。
屋根は切妻造で、茅葺の形をとりながら銅板で葺く。縁を廻さない。棟を支える棟持柱が妻側の壁から離れて独立し、屋根の上には鰹木と千木が載る。これらが揃った形式を神明造と呼ぶ。
注目すべきは柱の立て方である。礎石の上に柱を置くのではなく、地面に穴を掘って柱を直接埋める掘立柱の工法をとる。古墳時代から続く建て方で、耐久性では礎石建てに劣るが、伊勢神宮はこれを守り続けてきた。20年ごとの建て替えが前提だからこそ成立する工法でもある。宇夫階神社本殿は、その工法を伊勢の外で見られる数少ない建物のひとつになっている。
拝殿の脇から見る
参道の石段を上ると、鉄筋コンクリート造の拝殿が正面に構える。本殿はその奥にあり、正面からは見えない。社殿の右手へ回り込むと、鎮守の森の木立の間から宇夫階神社本殿を近い距離で見上げることができる。銅板は年月を経て落ち着いた緑褐色に変わっている。
柱の下端に目をやると、地面から柱が直接立ち上がっている様子が確認できる。礎石が見当たらないことが、掘立柱の証拠である。
本殿の背後には高さ5.5メートル、幅4メートルの巨石が横たわる。磐境(いわさか)と呼ばれ、社殿が建てられるより前の祭祀の跡と伝えられている。宇多津町の天然記念物に指定されており、宇夫階神社本殿はこの巨石を背にする位置に据えられた。建物と岩の関係を確かめられるのは、この側面からの視点だけである。
見学方法とアクセス
境内への立ち入りに料金はかからない。参道から石段を上り、拝殿前まで自由に進める。宇夫階神社本殿の内部は通常公開されていないが、外観は側面から見学でき、撮影も外観であれば差し支えない。
JR予讃線の宇多津駅から南へ徒歩約15分。駅から古街と呼ばれる古い町並みを抜けた先、小丘の上に鎮座する。境内に駐車場がある。授与所の対応時間や、社務所での御朱印の受付については、事前に社務所(電話0877-49-0805)へ確認すると確実である。
10月第4土曜日・日曜日の秋の例大祭には、町内外から人が集まる。祭礼の日は境内が混み合うため、建物をゆっくり見たい場合は平日を選びたい。
Q&A
- 宇夫階神社本殿(旧多賀宮御正殿)は見学できますか。拝観料はかかりますか。
- 境内は無料で参拝でき、宇夫階神社本殿は社殿の側面から外観を見学できます。内部は通常公開されていません。
- 宇夫階神社本殿はなぜ伊勢神宮から移されたのですか。
- 昭和28年(1953年)の式年遷宮で建てられた外宮別宮・多賀宮の御正殿が、次の遷宮で解体された後に宇夫階神社へ頒賜され、昭和51年(1976年)に移築されました。昭和48年(1973年)の火災で社殿を失っていたためです。
- 宇夫階神社本殿はいつ登録有形文化財になりましたか。
- 平成16年(2004年)11月8日に登録され、登録番号は37-0229です。登録基準は「造形の規範となっているもの」です。
- 宇夫階神社本殿への行き方を教えてください。
- JR宇多津駅から南へ徒歩約15分です。境内に駐車場があります。
- 宇夫階神社本殿の写真を撮ってもよいですか。
- 外観の撮影は差し支えありません。祭礼の最中や祈祷が行われているときは、社務所の案内に従ってください。
基本情報
| 名称 | 宇夫階神社本殿(旧多賀宮御正殿) |
|---|---|
| 所在地 | 香川県綾歌郡宇多津町1644 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号37-0229 |
| 指定年 | 2004年(平成16年)11月8日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行3間、梁間2間、建築面積22平方メートル |
| 所有者 | 宇夫階神社 |
| 公開状況 | 境内は無料。外観の見学可、内部は通常非公開 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 宇夫階神社本殿(旧多賀宮御正殿)(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004438
- 宇夫階神社(小烏さん)(宇多津町)
- https://www.town.utazu.lg.jp/uploaded/attachment/1448.pdf
- 宇夫階神社(うぶしなじんじゃ) うたづさんぽみち(宇多津町)
- https://sanpomichi.town.utazu.lg.jp/spot/entry/old/007499/
- 宇夫階神社 観光スポット(宇多津町観光協会)
- https://utazu-kanko.jp/tourism/775.html
最終更新日: 2026.09.08