藩主を迎えるために建てられた座敷
竹林寺書院は、高知県高知市五台山にある真言宗智山派寺院・竹林寺の書院造の建物で、文化13年(1816年)に建てられ、平成28年(2016年)2月9日に国の重要文化財に指定された。
高知県内では新しい部類に入る建造物指定であり、同時に見落とされやすい建物でもある。位置は下段の境内、納経所の近くで、参拝者が石段を上って向かう本堂の側ではない。八十八箇所を巡る人の多くは納経を済ませ、この建物の戸をくぐらないまま次の札所へ向かう。
書院は土佐藩主を迎えるために建てられた。江戸時代を通じて竹林寺は山内家の祈願寺であり、藩主の参詣は格式を要する行事だった。一段高い床に座る場所、雨に濡れず車寄せから入れる玄関、身分に応じて格の変わる部屋の連なり。竹林寺書院にはその仕掛けが一式そろって残り、しかも建立年代が様式からの推定ではなく記録で確定している。四国では珍しい組み合わせで、国の指定を受けた理由もそこにある。
指定が評価したもの
文化庁は本件を、重要文化財の指定基準のうち「(三)歴史的価値の高いもの」と「(五)流派的又は地方的特色において顕著なもの」の二つで指定している。公表された評価が挙げるのは主に三点。建立年代が明らかであること。四国地方に近世の書院建築がそもそも少ないこと。そして上段の間の細部意匠が、京や江戸の標準ではなく土佐地方に特徴的な手法によっていることである。
評価にはもう一点、やや異例の指摘がある。建物が外へ向かって開いている点だ。背面の座敷は後方の庭園を見るために開放的に構えられており、儀礼のためというより眺めるために設計されている。接見だけを目的とした書院なら背面は閉じる。この建物は向きを変えている。
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主体部は桁行20.2メートル、梁間14.3メートル、一重、入母屋造。内部に6室を配し、南面と西面には幅の広い広縁がめぐる。さらにその外側を落縁が回るため、室内と庭の境は一本の線ではなく段階を踏んだ移行になっている。
東面には玄関が取り付く。桁行12.8メートル、梁間7.9メートルの切妻造で、南面に車寄が付き、そこは向唐破風造とする。屋根はいずれも銅板葺。近づいて見ると、三つの異なる屋根の形が一つにまとまっていく様子が読み取れ、規模の割に外観が面白いのはそのためである。
内部に入ると、部屋の格が床の高さで分かる。背面西側の上段の間には床、棚、付書院が構えられている。藩主が座った場所である。ここの造作の細部が土佐の流儀に従っており、同じ年代の京都の書院と見比べると違いがはっきりする。写真を撮っておく価値がある箇所だ。
意外に感じられるのは背面の中室のほうだろう。床が側方の壁に寄せてあり、その分だけ部屋の後ろが庭に向かって空く。結果として、部屋全体が庭を向いた座敷になっている。前面の3室は室境に柱を立てず、上部に竹の節欄間を入れ、3室を通した天井を張って、必要なときは一続きの広い空間として使えるようにしてある。内装は素木を基調とし、欄間の一部の漆と釘隠しの金具を除けば装飾らしい装飾はない。
見るために建てられた建物と、見られるための庭
竹林寺庭園は平成16年(2004年)9月30日に国の名勝に指定された。作庭は臨済宗の僧・夢窓疎石(夢窓国師、1275年から1351年)によると伝わる。夢窓が文保2年(1318年)に竹林寺に滞在し、山麓に吸江庵を結んだことは記録に残るが、作庭を直接示す記録があるわけではない。伝承として受け取るのが妥当で、現在の庭も長い年月のうちに手が加えられている。
確実に言えるのは、これが歩き回る庭ではなく、屋内に座って眺めるための池泉観賞式の庭だということである。建物の背後の斜面をそのまま生かし、書院を複数の面から囲む形をとる。視点を移すと表情が変わり、明るく南国風に開けて見える一角があれば、閉じて静まり、中国の山水になぞらえたとも伝えられる一角もある。
広縁に腰を下ろすと、書院の設計意図がすぐに分かる。床の高さ、軒の出、縁の高さの三つが組み合わさって、絵の額縁が画面を切り取るように庭を切り取る。立ち上がると構図は崩れる。指定の評価文が背面の座敷を「開放的」と表現するのはこのことで、建物は庭を見るための装置であり、庭は建物が与える視線に合わせて整えられてきた。
拝観の実際
書院に入るには名勝庭園の拝観券が要る。大人500円、宝物館との共通券なら800円。中学生以下は半額、未就学児は無料。庭園と宝物館の受付は8時30分から17時まで。15名以上は団体料金、障害者手帳を持つ人も団体料金で拝観できる。境内と本堂の参拝自体は8時から無料だが、書院の内部は庭園拝観の順路に組み込まれているため、券を買う以外に見る方法はない。
堂内には大日如来像が安置されている。座って見ることが前提の建物なので、庭に面した広縁に腰を落ち着けたい。滞在時間を短く見積もる人が多いが、たいてい足りなくなる。撮影の可否は現地に掲示があり、特に屋内ではそれに従う。
この建物はロープの向こうに置かれた展示物ではない。高知県の文化財関係資料は、書院が結婚式やコンサートの会場として使われていることに触れている。行事が入っている日は立ち入りが制限されることがある。書院が旅の主目的なら、088-882-3085に事前に問い合わせておくとよい。紅葉期には庭園拝観の受付時間が調整された年もある。
交通は、JR高知駅前「こうち旅広場」から周遊バス「MY遊バス」で「竹林寺」下車、徒歩2〜3分。車なら高知インターチェンジから約20分、約100台分の無料駐車場がある。境内には1816年の書院と対照的な現代建築も二棟ある。平成25年(2013年)竣工の納骨堂と、令和元年(2019年)9月に新築された本坊・庫裡・納経所で、いずれも建築家・堀部安嗣の設計による。書院からそのどちらかまで歩けば、90秒ほどで日本の木造建築の二世紀分を横切ることになる。隣接地は高知県立牧野植物園である。
Q&A
- 竹林寺書院の内部は拝観できますか。料金はいくらですか?
- 拝観できます。書院は名勝庭園の拝観順路に含まれており、大人500円、宝物館との共通券は800円です。受付は8時30分から17時まで。中学生以下は半額、未就学児は無料です。
- 竹林寺書院はいつ建てられ、いつ重要文化財に指定されましたか?
- 文化13年(1816年)の建築で、平成28年(2016年)2月9日に国の重要文化財に指定されました。指定基準は「歴史的価値の高いもの」と「流派的又は地方的特色において顕著なもの」の二つです。
- 竹林寺書院と名勝・竹林寺庭園はどういう関係にありますか?
- 庭園は平成16年(2004年)に国の名勝に指定された池泉観賞式庭園で、屋内から眺めることを前提としています。書院の背面座敷と広縁はその眺めを切り取るように構えられており、両者は一体の設計として見るのが自然です。
- 竹林寺書院は何のために建てられ、上段の間は誰が使ったのですか?
- 土佐藩主が参詣する際の接待の場として建てられました。竹林寺は江戸時代を通じて山内家の祈願寺です。背面西側の上段の間には床、棚、付書院が構えられ、ここが藩主の座でした。
- 竹林寺書院が拝観できない日はありますか?
- 結婚式やコンサートの会場として使われるため、行事の日は立ち入りが制限されることがあります。紅葉期には庭園拝観の受付時間が調整された年もあり、書院が目的なら088-882-3085への事前確認をおすすめします。
基本データ
| 名称 | 竹林寺書院(ちくりんじしょいん)/客殿とも呼ばれる |
|---|---|
| 所在地 | 高知県高知市五台山(〒781-8125 高知市五台山3577) |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物)/指定番号 2641 |
| 指定年 | 平成28年(2016年)2月9日指定/文化13年(1816年)建立 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 主体部 桁行20.2メートル、梁間14.3メートル、一重、入母屋造。玄関 桁行12.8メートル、梁間7.9メートル、切妻造、南面車寄付・向唐破風造。銅板葺 |
| 所有者 | 竹林寺(真言宗智山派) |
| 公開状況 | 名勝庭園の拝観券で公開、8時30分から17時まで。行事開催時は制限あり |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) — 竹林寺書院
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00004858
- 文化遺産オンライン(文化庁) — 竹林寺書院
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/284266
- 高知市 — 文化財情報 名勝 竹林寺庭園
- https://www.city.kochi.kochi.jp/soshiki/90/cas-pref-2100100.html
- 文化遺産オンライン(文化庁) — 竹林寺庭園
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/140234
- こうち旅ネット(高知県観光情報) — 第31番札所 竹林寺
- https://kochi-tabi.jp/search_spot_sightseeing.html?id=872
最終更新日: 2026.08.09