五藤家住宅(五藤家安芸屋敷)とは
五藤家住宅は、高知県安芸市土居の安芸城跡に残る土佐藩家老五藤家の屋敷で、明治29年(1896年)に建てられた主屋を中心とする7件の建物と工作物が、平成20年(2008年)に国の登録有形文化財となった。市の施設としての名称は「五藤家安芸屋敷」で、地元ではこちらの呼び名のほうが通りがよい。
登録されているのは、主屋・離れ・付属屋・納屋・物置・事務所の6棟と、主屋から納屋へ延びる板塀1件である。いずれも木造の瓦葺で、2階建ては納屋だけ。明治29年(1896年)の主屋・離れ・物置・板塀と、戦後の昭和24年(1949年)の納屋・事務所、昭和29年(1954年)の付属屋という、二つの時期の建物が一つの屋敷地に並んでいる。
建物は大きくない。いちばん広い主屋でも建築面積は109平方メートルで、物置は8.3平方メートルしかない。それでも、堀と土塁に囲まれた屋敷地の中で、低い瓦屋根が中庭を囲むように寄り合う姿は、この町の武家屋敷の組み立て方をそのまま見せてくれる。
安芸城と五藤家
安芸城は戦国期に築かれた城で、慶長6年(1601年)に土佐へ入国した山内一豊は、領国の要所となる5か所の城に重臣を置いた。安芸に配されたのが、山内家と同じ尾張の出身で一豊と苦楽を共にしてきた五藤氏である。五藤氏は寛文10年(1670年)ごろに家老となり、以後、幕末まで藩政の要職を務めた。
元和元年(1615年)の一国一城令で安芸城は廃されたが、五藤氏は内堀に囲まれた「土居」の内側に屋敷を構え、枡形の櫓門や土塁上の塀を整えた。土居の外には家臣団の住む「廓中(かちゅう)」が割り付けられ、これが現在の土居廓中の町並みの骨格になっている。五藤家住宅は、その中心にあたる土居の内側、城山の麓に建つ。
今残る建物は江戸時代のものではない。文化庁の登録資料は主屋を明治29年(1896年)の建築としている。一方、安芸市観光協会の案内は屋敷を明治24年(1891年)の建築と紹介しており、資料によって年代に幅がある。本サイトでは文化庁の登録資料の年代を採った。
屋敷の配置と歩く順序
五藤家住宅の建物は、屋敷地のほぼ中央に東西棟で建つ主屋を軸にして配置されている。主屋の西に離れ、主屋の北に中庭をはさんで納屋、主屋北西の釜屋のさらに北に付属屋が建ち、付属屋と納屋のあいだに小さな物置がはさまる。事務所は敷地の東側に離れて建つ。
見学は主屋の前から始めるとよい。まず主屋の寄棟屋根と四周の下屋を眺め、玄関脇から北へ延びる板塀に沿って目を移すと、板塀が納屋の袖壁にそのまま取り付いているのが分かる。主屋・板塀・納屋が一続きの壁面をつくり、屋敷の北側を締めている構成である。そこから敷地の北側へ回ると、付属屋・物置・納屋が横に並ぶ裏手の景色になる。最後に東側の事務所を見て、主屋の西の離れで締めくくると、7件をほぼ一筆書きで回れる。
この地域では、台風の強い風向きに合わせて瓦を右瓦と左瓦に葺き分ける習いがあり、五藤家住宅の主屋と離れにもそれが残る。屋根を見上げるときは、面ごとに瓦の重なる向きが変わっていないかを確かめたい。
登録の意味と土居廓中の町並み
五藤家住宅の7件は、いずれも平成20年(2008年)3月7日に登録有形文化財(建造物)として登録された。登録の基準はすべて「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。一つひとつの建物の格式よりも、主屋と付属の建物、塀が組み合わさってつくる屋敷の景観が評価されたと読める。
屋敷の周囲は、平成24年(2012年)7月9日に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された「安芸市土居廓中」の中にある。保存地区は東西約410メートル、南北約360メートル、面積約9.2ヘクタールで、ウバメガシやドヨウダケの生垣、河原石と古瓦を赤土で固めた練り塀が続く。五藤家住宅はこの武家町の中心に位置する屋敷であり、町並みを歩いてから屋敷に入ると、家臣の家と家老の屋敷の規模の違いがよく分かる。
安芸市は平成27年(2015年)に条例で「安芸市五藤家安芸屋敷」を設け、同年度から一般の利用を始めた。茶席や花展、講演会、結婚写真の前撮りなどの会場として使われている。
見学案内(開館時間・料金・アクセス)
五藤家住宅は「五藤家安芸屋敷」として公開されており、入場は無料である。開館時間は午前9時から午後5時まで。休館日は月曜日(月曜日が祝日の場合は、その後のもっとも近い祝日でない日)と、12月29日から1月3日までの年末年始である。
条例では、入場する人はあらかじめ市教育委員会に申し出ることになっている。屋敷の使用申請は向かいの安芸市立歴史民俗資料館が受け付けているので、見学の申し出や当日の利用状況も同館に問い合わせるとよい。屋敷が貸し出されている間は入場が断られることがある。撮影会や前撮りなど、屋敷を使って撮影する場合は使用許可が要る。個人の見学での撮影について明文の定めは見当たらないため、受付で確かめてほしい。
最寄り駅は土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の安芸駅で、駅から車で約5分、歩くと約30分かかる。安芸駅で借りられる無料のレンタサイクルなら15分ほど。高知龍馬空港からは車で約40分である。土居廓中には来客用の駐車場がないため、保存地区の南へ徒歩3分の溝ノ辺公園駐車場を使う。保存地区は住民が暮らす住宅地でもあるので、散策の際は静かに歩きたい。
五藤家に伝わった武具や古文書は、屋敷の前にある安芸市立歴史民俗資料館で展示されている。こちらは有料の別施設である。
参考文献
- 五藤家住宅主屋(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006937
- 五藤家住宅板塀(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006943
- 五藤家住宅主屋(文化遺産オンライン)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/197929
- 安芸市土居廓中(文化庁 重要伝統的建造物群保存地区 紹介資料、安芸市作成)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/hozonchiku/pdf/r1392257_094.pdf
- 安芸の歴史 山内氏入国と五藤氏(安芸市)
- https://www.city.aki.kochi.jp/life/dtl.php?hdnKey=7965
- 安芸市土居廓中伝統的建造物群保存地区(安芸市)
- https://www.city.aki.kochi.jp/life/dtl.php?hdnKey=1381
- 安芸市五藤家安芸屋敷条例(安芸市例規集)
- https://www.city.aki.kochi.jp/reiki/reiki_honbun/o304RG00000834.html
- 安芸市立歴史民俗資料館 ご利用案内(安芸市)
- https://www.city.aki.kochi.jp/life/dtl.php?hdnKey=7978
- 【イベント情報】お屋敷マルシェ(安芸市観光協会)
- https://www.akikanko.or.jp/news/%E3%80%90%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%80%91%E3%81%8A%E5%B1%8B%E6%95%B7%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7/
最終更新日: 2026.09.26
基本情報
| 名称 | 五藤家住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 高知県安芸市土居土居跡955 |
| 所有者 | 安芸市 |
| 指定 | 登録有形文化財 7件 |
| 座標 | 33.51897, 133.91272 |