重要伝統的建造物群保存地区とは

重要伝統的建造物群保存地区は、市町村が定めた伝統的建造物群保存地区のうち、我が国にとってその価値が特に高いものとして文部科学大臣が選定した地区である。文化財保護法第144条に根拠がある。

制度は昭和50年の文化財保護法改正で発足した。城下町、宿場町、門前町など、全国各地に残る歴史的な集落や町並みを保存するための枠組みで、建物を1棟ずつ守るのではなく、伝統的な建造物群とこれと一体をなして価値を形成している環境を面として保存する点に特徴がある。同法第2条第1項第6号は、周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している価値の高い伝統的な建造物群を文化財の一種として定義している。

手続は二段構えになる。まず市町村が、都市計画区域内であれば都市計画に、それ以外の区域では条例によって伝統的建造物群保存地区を決定する。あわせて条例で現状変更の規制と保存のため必要な措置を定める。そのうえで市町村からの申出を受けて、国が価値の特に高いものを選定する。地区を決めるのは市町村であり、国が行うのは選定である。

令和8年8月1日現在、重要伝統的建造物群保存地区は129地区である。令和6年8月15日時点では106市町村に129地区が所在し、合計面積は約4,066.1ヘクタール、約30,680件の伝統的建造物及び環境物件が特定されて保護されている。

建物の指定との違い

同じ町並みのなかに、重要文化財登録有形文化財の建物が含まれていることは珍しくない。それらは建物ごとの制度であり、地区の選定とは別に効力を持つ。地区に選定されたからといって、区域内の建物すべてが重要文化財になるわけではない。

地区の保存では、修理だけでなく修景という考え方が使われる。伝統的建造物そのものを直すのが修理、伝統的でない建物の外観を町並みに調和させるのが修景にあたる。国は市町村が行う修理・修景事業、防災設備の設置、案内板の設置などに補助を行い、税制上の優遇措置も設けられている。

住民が暮らし、商いを続けている区域が対象になるため、現状変更の規制は市町村の条例に基づいて運用される。訪ねる側から見れば、公開施設として整備された建物と、人が住み続けている建物が同じ通りに並んでいることになる。私有地への立ち入りや撮影については、現地の掲示に従うのが確実である。

参考文献

e-Gov法令検索 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0100000214
文化庁 文化財の紹介 伝統的建造物群保存地区
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/hozonchiku/
文化庁 文化財指定等の件数(令和8年8月1日現在)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/shitei.html

最終更新: 2026.08.30