中濱家住宅土蔵とは

中濱家住宅土蔵は、愛知県名古屋市緑区有松にある明治期の蔵で、平成20年(2008年)に登録有形文化財(建造物)に登録された。旧東海道に妻の面を向けて建ち、東隣の主屋とひと続きの構えをつくっている。登録番号は23-0279、員数は1棟である。

桁行7.3メートル、梁間4.5メートル。建築面積33平方メートルの2階建で、屋根は桟瓦葺、木の軸組の外側を厚い土壁で塗り込めた土蔵造である。町なかの蔵としては大きくない。それでも通りに向いた面には、蔵の造作で考えられる手がひととおり入っている。

有松は慶長13年(1608年)、東海道の鳴海宿と池鯉鮒宿のあいだに尾張藩が開いた集落である。耕地が少なく、旅人が買う土産として絞り染めが工夫された。中濱家住宅土蔵が建った明治期は、維新後に街道の往来が減って落ち込んだ絞商の商いが、意匠の刷新と卸売への転換によって立て直されていく時期にあたる。

登録の理由と価値

中濱家住宅土蔵の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。同じ敷地の主屋が「造形の規範となっているもの」で登録されたのに対し、この蔵は町並みへの効きかたが評価された。ゆるやかに曲がる旧東海道の約800メートルの区間には、間口の広い絞商の主屋と門や塀が続く。その連なりのなかで、中濱家住宅土蔵は主屋の西に立ち、通りの壁面にひと区切りをつくる。

蔵が通りに面するのは、有松では珍しいことではない。天明4年(1784年)の大火で村のほとんどが焼け、尾張藩の援助を受けた20年ほどの復興のなかで、漆喰で塗り込める工法や卯建が町に定着した。土蔵造の箱を通りぎわに据えることは、商品を守る備えであると同時に、隣家への延焼を止める備えでもあった。

有松の町並みは平成28年(2016年)に重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。大都市の街道沿いの町並みとしては初、東海道沿いでは関宿(三重県亀山市)に次ぐ選定で、中濱家住宅土蔵はその区域のなかにある。

見どころ

まず壁の色に目がいく。中濱家住宅土蔵の外壁は黒漆喰で仕上げられている。白い蔵が各地に多いなかで、有松では2階を黒く塗り込める建物が目立ち、この蔵もその調子に合っている。

腰は洗出し目地切仕上げ。表面を洗って骨材の粒を出し、目地の線を切って締めてある。離れて見れば黒壁を受ける明るい帯だが、近づくと砂利の粒立ちと直線の目地が同時に見えてくる。

1階と2階のどちらも、通りに向けて戸前を開き、掛子塗戸を吊る。掛子塗戸は戸と枠の合わせ目を段状に噛み合わせた戸で、閉めると隙間が塞がり、火と煙が入りにくい。2階に同じ戸があるのは、そこまで荷を上げて使っていたからである。

戸口の上には桟瓦葺の庇が厚く張り出す。雨のときに人が立てるだけの幅がある。正面から中濱家住宅土蔵を眺めると、黒い壁、明るい腰、瓦の庇という三本の帯が横に走り、隣の主屋の木格子と並んで通りの表情をつくっている。

見学方法

中濱家住宅土蔵は個人の所有で、内部は公開されていない。外観は旧東海道の公道からいつでも見られる。見学料はかからず、時間の制限もない。

最寄り駅は名鉄名古屋本線の有松駅で、徒歩約5分。駅から南へ下って旧東海道に出て、西へ進むと、主屋の西隣に妻を向けたこの蔵が現れる。なお有松駅まで鉄道が通じたのは大正6年(1917年)で、蔵が建ってから20年以上あとのことである。

写真は公道からであれば撮影できる。敷地に入る、戸に近づくといった行為は住まいへの立ち入りにあたるので控えたい。主屋は絞りの店として使われているが、営業日と営業時間は変わることがあるため、店内に入りたい場合は訪問前に確認しておくとよい。

Q&A

Q中濱家住宅土蔵はどこにありますか。最寄り駅からの行き方は?
A愛知県名古屋市緑区有松2603にあります。名鉄名古屋本線の有松駅から徒歩約5分です。駅から南へ下って旧東海道に出て西へ進むと、主屋の西隣に建っています。
Q中濱家住宅土蔵は内部を見学できますか。見学料は必要ですか?
A個人の住まいのため内部は公開されていません。外観は旧東海道の公道から自由に見ることができ、見学料はかかりません。
Q中濱家住宅土蔵の写真撮影はできますか?
A公道からの撮影であれば問題ありません。敷地に立ち入っての撮影や、戸口に近づいての撮影は控えてください。
Q中濱家住宅土蔵はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A建てられたのは明治期です。国の登録有形文化財(建造物)に登録されたのは平成20年(2008年)で、登録番号は23-0279です。
Q中濱家住宅土蔵の外壁が黒いのはなぜですか?
A外壁が黒漆喰で塗り込められているためです。有松では2階部分を黒漆喰で仕上げる建物が多く、この蔵の外観も町並みの調子に合わせたものになっています。

基本情報

名称中濱家住宅土蔵(なかはまけじゅうたくどぞう)
所在地愛知県名古屋市緑区有松2603
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号23-0279
指定年平成20年(2008年)登録
員数1棟
寸法桁行7.3メートル、梁間4.5メートル、建築面積33平方メートル
所有者個人(文化庁の国指定文化財等データベースに所有者名の記載なし)
公開状況内部非公開。外観は旧東海道の公道から見学可

参考文献

国指定文化財等データベース 中濱家住宅土蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006852
国指定文化財等データベース 中濱家住宅主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006851
有松伝統的建造物群保存地区及び有松町並み保存地区(名古屋市)
https://www.city.nagoya.jp/kankou/rekishi/1017254/1017261.html
有松の歴史と沿革(名古屋市緑区)
https://www.city.nagoya.jp/midori/miryoku/1024793/1024794/1024800.html
有松周辺のみどころ一覧3(名古屋市緑区)
https://www.city.nagoya.jp/midori/miryoku/1024793/1024801/1024809.html

最終更新日: 2026.09.02