中濱家住宅物置とは
中濱家住宅物置は、愛知県名古屋市緑区有松にある昭和初期の平屋建の建物で、平成20年(2008年)に登録有形文化財(建造物)に登録された。旧東海道に面する主屋の東側に続き、敷地の東南角で矩の手に折れ曲がる平面をとる。登録番号は23-0280、員数は1棟である。
建築面積は37平方メートル。屋根は片方の流れを長くとった招屋根で、桟瓦葺とする。玉石を積んだ基礎の上に建ち、腰は簓子下見板張、その上の小壁は黒漆喰で塗る。物を納めるための建物でありながら、通りに向いた面には主屋や塀と同じ手が加えられている。
有松は慶長13年(1608年)に東海道の鳴海宿と池鯉鮒宿のあいだへ尾張藩が開いた集落で、絞り染めの産地として知られる。名古屋市緑区の記録によれば、絞商の商いは明治後期から昭和初期にかけて最も盛んだった。中濱家住宅物置が建てられたのは、その最盛期にあたる。
登録の理由と価値
中濱家住宅物置の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。屋敷のなかで最も実用に徹した建物が、町並みへの効きかたを理由に登録されたことになる。
理由は外観の扱いにある。文化庁の解説は、通り側の外観が板塀と同じ構成になっており、敷地の周囲で意匠の統一が図られていると記す。玉石積の基礎、簓子下見板張の腰、黒漆喰の小壁という順序は、この物置でも塀でも変わらない。歩いてくる人の目には、塀が続いているうちに建物へ移り変わり、また塀に戻る。境界の線が一本の帯として読める。
倉庫や納屋は、ふつう敷地の奥に置かれる。中濱家住宅物置が街道側に顔を出しながら景観を乱さないのは、置き場所を隠す代わりに、見え方を揃える方針をとったからである。有松の町並みは平成28年(2016年)に重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、この建物もその区域に含まれる。
見どころ
屋根の形から見たい。中濱家住宅物置の招屋根は、棟を境に片側の流れだけを長く伸ばす形式で、切妻の左右対称とは違う。主屋に寄り添う側を短く、外へ向かう側を長くとることで、隣り合う建物のあいだに雨落ちの逃げ場をつくっている。
腰の簓子下見板張は、横板を重ね、その上から刻みを入れた細い竪材で押さえる張り方である。竪材が等間隔に並ぶので、板の水平線と細い縦の線が格子のように交差して見える。近くで見ると、板の重なりが落とす影も細かく揃っている。
基礎の玉石は角のとれた丸い石で、大きさをそろえずに積む。上に載る板張りの直線と、下の石の輪郭の不揃いが対比になる。
もうひとつ、平面の折れに気づきたい。中濱家住宅物置は東南の角で直角に向きを変える。敷地の角をなぞる形で、外から見れば塀の折れと区別がつきにくい。名古屋市緑区の記録は、この屋敷の東隣がかつて染め物工場だったと記している。物置の東の先には、絞りの仕事場が続いていた。
見学方法
中濱家住宅物置は個人の所有で、内部は公開されていない。外観は旧東海道の公道から見学でき、見学料も時間の制限もない。
最寄り駅は名鉄名古屋本線の有松駅で、徒歩約5分。駅から南へ下って旧東海道に出たら、主屋の東側に目を向けるとよい。板塀からこの建物へ移り変わる部分は、通りの北側の歩道からいちばん分かりやすく見える。
撮影は公道からであれば差し支えない。敷地に立ち入ることは避けてほしい。主屋は絞りの店として使われているが、営業日と営業時間は変わることがあるため、店に入りたい場合は訪問前に確かめておくとよい。
Q&A
- 中濱家住宅物置はどこにあり、どうやって行けばよいですか?
- 愛知県名古屋市緑区有松2603にあります。名鉄名古屋本線の有松駅から徒歩約5分で、旧東海道に面する主屋の東側に続いて建っています。
- 中濱家住宅物置は見学できますか。内部は公開されていますか?
- 内部は公開されていません。個人の住まいの一部であるためです。外観は旧東海道の公道から自由に見ることができ、見学料はかかりません。
- 中濱家住宅物置はいつの建物で、いつ登録有形文化財になりましたか?
- 昭和初期の建物です。国の登録有形文化財(建造物)に登録されたのは平成20年(2008年)で、登録番号は23-0280です。
- 中濱家住宅物置の屋根の形は何と呼ばれますか?
- 招屋根と呼ばれる形式です。棟を境に片側の流れだけを長くとった屋根で、左右対称の切妻屋根とは形が異なります。葺き方は桟瓦葺です。
- 中濱家住宅物置と板塀の外観が似ているのはなぜですか?
- 通り側の外観が板塀と同じ構成になるよう仕上げられているためです。玉石積の基礎、簓子下見板張の腰、黒漆喰の小壁という順序をそろえ、敷地の周囲で意匠を統一しています。
基本情報
| 名称 | 中濱家住宅物置(なかはまけじゅうたくものおき) |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市緑区有松2603 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号23-0280 |
| 指定年 | 平成20年(2008年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積37平方メートル(木造平屋建) |
| 所有者 | 個人(文化庁の国指定文化財等データベースに所有者名の記載なし) |
| 公開状況 | 内部非公開。外観は旧東海道の公道から見学可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 中濱家住宅物置(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006853
- 国指定文化財等データベース 中濱家住宅石垣及び塀(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006855
- 有松伝統的建造物群保存地区及び有松町並み保存地区(名古屋市)
- https://www.city.nagoya.jp/kankou/rekishi/1017254/1017261.html
- 有松周辺のみどころ一覧3(名古屋市緑区)
- https://www.city.nagoya.jp/midori/miryoku/1024793/1024801/1024809.html
- 有松の歴史と沿革(名古屋市緑区)
- https://www.city.nagoya.jp/midori/miryoku/1024793/1024794/1024800.html
最終更新日: 2026.09.02