屋敷の南面を画す46メートルの石垣

宮村家住宅石垣は、熊本県菊池市西寺の宮村家住宅の敷地南面に築かれた大正前期(1912〜1918年)の石垣で、平成25年(2013年)6月21日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。石造、総延長46メートル、員数は1基である。

東西に長く伸び、東寄りに出入口を開く。天端には植栽がほどこされ、道路側から見ると石積みの帯の上に緑の縁取りが載る形になる。

用いられた石材は阿蘇山に由来する溶結凝灰岩である。阿蘇カルデラの噴火が繰り返し流した火砕流の堆積物が、自らの熱と重みで溶結して固結した岩石で、鋸で挽けるほど軟らかく、風雨には長く耐える。熊本県中部では古くから石段、基礎、橋台、塀に用いられてきた石で、この地に石垣を築くにあたって選ばれたのは、いわば足元の地層そのものであった。

布積という選択、台形という断面

積み方は布積である。目地の横筋が面に沿って連続する積み方で、石を方形に整えたうえで水平を通す手間を要する。近世以来の民家の石垣に多い乱積が石の形なりに積み上げるのに対し、布積は線が通る。この石垣の面が定規で引いたような表情を見せるのはそのためである。

断面は台形をなす。基部が広く、上に行くほど内側へ勾配をとる。裏込めの土圧を石の自重で受け止める空積の擁壁が成り立つのは、この勾配があるからだ。

ただし、いま目にする姿は当初の姿ではない。文化庁の解説によれば、現在の高さは1メートル弱だが、周辺が埋め立てられる以前は二倍近い高さがあったという。つまり現存部分は、より高い石垣の上半にあたり、基部は現在の地盤面の下に埋もれている。道路に立ち、田面をもう1メートル沈めて想像したとき、この屋敷構えが平野に向けて示していた本来の高さが見えてくる。

登録の意味と、訪ねる際の見どころ

登録番号は43-0125、第75回登録である。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。背後に建つ主屋は同じ日に43-0124として登録されており、両者は屋敷構えを構成する一組として評価された。

平成8年(1996年)に始まった登録有形文化財の制度は、届出制を基本とする緩やかな保護措置である。建物本体だけでなく、門、塀、石垣、土蔵といった敷地を構成する要素を独立した文化財として扱う点に、この制度の特徴がある。主屋の付属物としてではなく、石垣そのものを1件として登録した本例は、その考え方の実践といえる。

見学にあたっては、宮村家住宅が個人の住まいであることに留意したい。公開時間や拝観料の設定はなく、内部の見学はできない。一方、石垣は敷地南側の道路に面しており、登録された二件のうち旅行者が正面から見ることができるのはこちらである。公道からの撮影に支障はないが、敷地内への立入りは所有者の許可を要する。一時公開の有無は菊池市の教育委員会に確認するとよい。

交通については、昭和61年(1986年)2月に熊本電気鉄道菊池線の御代志以北が廃止されて以来、菊池市内に鉄道駅はない。熊本市の桜町バスターミナルから菊池プラザまでバスで約75分、そこから西寺までは車での移動となる。南面する石垣は、光の低い朝のうちのほうが布積の目地に影が落ち、面の表情がよく分かる。

Q&A

Q宮村家住宅石垣はどんな石で積まれていますか。
A阿蘇山に由来する溶結凝灰岩です。火砕流堆積物が溶結して固まった岩石で、熊本県中部では石段や塀の石材として古くから使われてきました。
Q宮村家住宅石垣の長さと高さはどれくらいですか。
A総延長46メートルです。現在の高さは1メートル弱ですが、周辺が埋め立てられる前は二倍近い高さがあったとされます。
Q宮村家住宅石垣は見学できますか。
A敷地南側の公道から外観を見ることができます。住宅は個人の住まいで非公開のため、敷地内への立入りはご遠慮ください。
Q宮村家住宅石垣の「布積」とはどのような積み方ですか。
A目地の横筋が連続するように石を整えて水平に積む方法です。この石垣は断面が台形で、上に行くほど内側へ勾配をとっています。
Q宮村家住宅石垣はいつ登録されましたか。主屋との関係は?
A平成25年(2013年)6月21日、登録番号43-0125で登録されました。同じ敷地の主屋(43-0124)も同日登録で、屋敷構えを構成する一組として扱われています。
Q宮村家住宅石垣へのアクセスと最寄り駅を教えてください。
A菊池市内に鉄道駅はありません。熊本市の桜町バスターミナルから菊池プラザまで約75分、以降は車での移動となります。自動車では熊本市中心部から約1時間です。

基本情報

名称宮村家住宅石垣(みやむらけじゅうたくいしがき)
所在地熊本県菊池市西寺字雷1075
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号43-0125
指定年平成25年(2013年)6月21日登録 第75回登録
員数1基
寸法石造、総延長46メートル(現状の高さは1メートル弱)
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況住宅は非公開。石垣は隣接道路から視認可能

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 宮村家住宅石垣
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009685
国指定文化財等データベース(文化庁) 宮村家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009684
文化庁 登録有形文化財登録基準
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei_kijun.html
菊池市 指定文化財
https://www.city.kikuchi.lg.jp/article/list/1309.html

最終更新日: 2026.08.06