馬と馬車のための蔵
主屋の正面に、東西に棟を通した平屋の蔵が建つ。建築面積はおよそ七十三平方メートル。明治蔵と呼ばれるこの蔵は明治二十二年(一八八九)頃に建てられ、蔵でありながら馬屋を兼ねるという珍しい役割をもつ。内部には馬を繋ぐための金物が今も残る。
構造は土蔵造の平屋建、切妻造の桟瓦葺で、南面には下屋を差し掛ける。西端の桁行一間の部分は南面を開放し、北面を両開の扉とすることで、馬車が敷地内へそのまま通り抜けられるようになっていた。
登録の理由
明治蔵は平成二十八年(二〇一六)十一月二十九日、吉岡家の六棟の一つとして登録された。登録番号は43―0160。登録の根拠は、他の建物と同じく地域の歴史的景観への寄与にある。
馬車の通路を組み込んだ蔵は珍しく、在郷町の屋敷がどのように動いていたかをよく示す。十九世紀末の来民では荷は馬で運ばれ、蔵はその出入りを許すかたちにつくられた。登録は、こうした実用の理屈を整えて消してしまうのではなく、読み取れるまま残している。
見どころ
西端の一間で壁のリズムが変わる点に注目したい。他は閉じた塗り壁だが、この一間だけが開き、反対側の両開扉が往時の馬車道を示す。内部に残る馬繋ぎの金物が、蔵という見方を裏返す細部となっている。
南面の下屋によって軒線に段がつき、敷地の反対側に建つ背の高い江戸蔵とは異なる表情を見せる。二棟の蔵と主屋を合わせて眺めれば、吉岡家が明治の年月をかけて建物を加えていった様子がうかがえる。個人の敷地内にあり、見学は外観に限られる。
Q&A
- 明治蔵の珍しい点は何ですか。
- 馬屋を兼ねていた点です。西端が馬車の通り抜けられる通路とされ、内部には馬を繋ぐ金物が残ります。
- いつ建てられましたか。
- 明治二十二年(一八八九)頃です。平成二十八年(二〇一六)十一月二十九日に登録番号43―0160で登録されました。
- 南面の下屋とは何ですか。
- 建物の一面に差し掛けた補助的な屋根です。ここでは南面に沿って設けられています。
- 見学はできますか。
- 個人所有の住宅の一部のため非公開で、外観のみ通りから見ることができます。
基本情報
| 名称 | 吉岡家住宅明治蔵(よしおかけじゅうたくめいじぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 熊本県山鹿市鹿本町来民字今古閑2032-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 2016年(平成28年)11月29日 |
| 登録番号 | 43-0160 |
| 構造・形式 | 土蔵造平屋建、瓦葺、建築面積約73㎡ |
| 員数 | 1棟 |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 個人所有の住宅で通常非公開 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース — 吉岡家住宅明治蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011428
- 山鹿市 — 指定文化財一覧
- https://www.city.yamaga.kumamoto.jp/kiji00396/index.html
- 山鹿市 — 文化財・史跡・施設
- https://www.city.yamaga.kumamoto.jp/list00191.html
最終更新日: 2026.07.04