通りの縁を画する塀

門から北へ、そして主屋の東側から北側にかけて伸びるのが吉岡家住宅の塀である。総延長はおよそ三十五メートル。見過ごしやすいが、この塀は単独で登録されている。境界のありようが、屋敷全体が町のなかにどう収まるかを決めるからである。

塀は割石積の基礎の上に土台石を並べ、竪板張の上部を透いてたすき桟を入れる。頂部には笠木を通し、鉄板葺の細い屋根を載せる。建築は明治十六年(一八八三)頃で、門や屋敷の整備と同じ時期にあたる。

塀にふさわしい町、来民

来民は山鹿の古い在郷町で、市が歴史的風致の地区として挙げる一つである。とりわけ柿渋を塗った来民渋うちわの産地として知られ、かつては京都・丸亀と並ぶうちわの産地に数えられた。吉岡家の屋敷は、その落ち着いた町並みの一角にある。

塀は平成二十八年(二〇一六)十一月二十九日、吉岡家の六棟の一つとして登録された。登録番号は43―0163、登録基準は共通して地域の歴史的景観への寄与である。背後の建物だけでなく境界の塀まで登録したことは、通りに面した表構えこそがこの場所を残すに値させていることを認めるものだ。

見どころ

塀と門が同じ言葉を分け持つ点に注目したい。上部の透かしとたすき桟が両者に現れ、門と別個の壁ではなく、ひとつづきの設えとして目に映る。割石の基礎が、路沿いに木部を端正に据えている。

門から北へ塀をたどれば、敷地そのものの輪郭がなぞれ、背後に蔵や主屋が立ち上がる。個人の住宅であるから、塀は公道から表構えを静かに歩いて眺めるのがよい。門と合わせて、この屋敷が景観の価値ゆえに登録された理由をもっともよく示す。

Q&A

Q塀の長さはどのくらいですか。
A総延長は約三十五メートルで、門から主屋の東側・北側にかけて伸びます。
Qどのような造りですか。
A割石積の基礎に土台石を並べ、竪板張の上部を透いてたすき桟を入れ、笠木に鉄板葺の屋根を載せます。
Qなぜ塀を登録するのですか。
A境界の塀が屋敷と通りの接し方を定めるためです。その表構えは登録が守ろうとした歴史的景観の一部です。
Q来民は他に何で知られますか。
A柿渋を塗る来民渋うちわの産地として知られ、かつては京都・丸亀と並ぶうちわの産地に数えられました。

基本情報

名称吉岡家住宅塀(よしおかけじゅうたくへい)
所在地熊本県山鹿市鹿本町来民字今古閑2034
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日2016年(平成28年)11月29日
登録番号43-0163
構造・形式木造、鉄板葺、総延長35m
員数1棟
所有者個人
公開状況個人所有の住宅で通常非公開

参考文献

国指定文化財等データベース — 吉岡家住宅塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011431
山鹿市 — 指定文化財一覧
https://www.city.yamaga.kumamoto.jp/kiji00396/index.html
山鹿市 — 文化財・史跡・施設
https://www.city.yamaga.kumamoto.jp/list00191.html

最終更新日: 2026.07.04