八代本町に建つ昭和元年の二階建
作田家住宅主屋は、熊本県八代市本町二丁目にある昭和元年(1926年)建築の木造二階建住宅で、令和3年(2021年)6月24日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。建築面積は83平方メートル、屋根は桟瓦葺である。
屋根の納め方に特徴がある。東側を切妻造、西側を入母屋造とし、一棟のなかで東西の妻の見え方が異なる。西面には下屋が付き、正面には庇が張り出す。
本町は、元和8年(1622年)に築かれた八代城の城下に形づくられた商業地で、現在も本町アーケードが通る。作田家住宅は寺社の境内でも公園の一角でもなく、この商店街の住所に建つ。
登録の理由
登録番号は43-0181、第99回の登録として令和3年6月24日に告示された。適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、文化庁の解説では近代和風の好例と評価されている。伝統的な木造の技法を保ちながら、大きなガラスや新しい寸法感覚を取り込んだ二十世紀前半の住宅の系譜に属する。
同じ日に、同一敷地内の作田家住宅蔵(登録番号43-0182)も登録された。八代市はこの二棟を一組として扱い、中心市街地の歴史的景観を構成する建造物と位置づけている。
登録有形文化財は、重要文化財の指定に比べて規制のゆるやかな制度である。築50年を経た建造物を対象とし、大きな改変にあたって届出を求める一方で、日常の使用を続けることを前提とする。平成9年(1997年)頃に改修が行われた記録がある。
見どころは二階にある
注目すべきは二階である。階高(たち)が高くとられ、間口いっぱいにガラス戸が建てられているため、通りから見上げると軒より上がひと続きのガラスの帯に見える。その前面には高欄が回る。
ガラス戸の奥には、それぞれ十二畳大の座敷が二室ある。この二室が旧態をよく残す。一階は後年の改造が重なって当初の間取りを失っているので、建築としての証言はもっぱら二階が担う。
昭和元年の地方都市で、間口全面に板ガラスを入れるのは選択の結果だった。平板ガラスが一般の建物に手の届く価格になって間もない時期であり、小割りの障子や格子ではなく大きなガラス面を選んだところに、この家の姿勢が読み取れる。高欄を前に置いたことで、壁面が透明になっても二階らしい構えは崩れていない。
通りに立って数秒あれば把握できる構成である。黒い瓦、白く光るガラスの帯、その手前を横切る細い手すり。
訪ねる前に
作田家住宅主屋は個人所有の住宅で、内部の公開は行われていない。拝観時間や拝観料の設定はなく、定期的な特別公開もない。見学は公道からの外観に限られるが、もともとこの建物は通りから見られることを前提に造られている。公道からの撮影に制限はない。窓の内側にレンズを向けない配慮は必要である。
JR八代駅から約2キロメートル、徒歩で25〜30分ほど、タクシーなら数分の距離にある。九州新幹線を利用する場合は新八代駅で在来線かバスに乗り換える。同じ敷地の東寄りには作田家住宅蔵が建ち、北へ約1キロメートルの位置に八代城跡と八代宮がある。
訪問前に確認してほしいことがひとつある。令和8年(2026年)7月28日の令和8年熊本地震により、八代市中心部は震度6強の揺れに見舞われた。報道では本町アーケード一帯の商店に大きな被害が出たこと、八代宮の拝殿が倒壊し松浜軒も大きく損傷したことが伝えられている。作田家住宅の被災状況について公式の発表は出ていない。訪問を計画する場合は、事前に八代市へ現況を問い合わせ、周辺一帯が復旧の途上にあることを踏まえて行動してほしい。
Q&A
- 作田家住宅主屋の内部は見学できますか。
- できません。個人が所有する住宅で、内部は非公開です。見学は公道からの外観に限られますが、特徴である二階のガラス戸と高欄は通りからよく見えます。
- 作田家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
- 昭和元年(1926年)の建築です。令和3年(2021年)6月24日に、登録番号43-0181で国の登録有形文化財(建造物)となりました。
- 作田家住宅主屋へは八代駅からどう行きますか。
- JR八代駅から約2キロメートル、徒歩25〜30分ほどです。九州新幹線の場合は新八代駅で在来線またはバスに乗り換えてください。
- 作田家住宅主屋と作田家住宅蔵はどう違いますか。
- 同一敷地に建つ別々の登録建造物です。主屋は昭和元年の木造二階建住宅、蔵は大正10年(1921年)の木造及び木骨レンガ造三階建で、構造も用途も異なります。
- 作田家住宅主屋は令和8年熊本地震で被災しましたか。
- この建物についての公式発表は出ていません。令和8年(2026年)7月28日の地震で八代市中心部は大きな被害を受けているため、訪問前に八代市へ現況を確認してください。
基本データ
| 名称 | 作田家住宅主屋(さくたけじゅうたくおもや) |
|---|---|
| 所在地 | 熊本県八代市本町二丁目5-3他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号43-0181 |
| 指定年 | 令和3年(2021年)6月24日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積83平方メートル |
| 所有者 | 個人(国のデータベースに所有者名の記載なし) |
| 公開状況 | 内部非公開。公道から外観の見学のみ可能 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース — 作田家住宅主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013901
- 文化遺産オンライン — 作田家住宅主屋
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/597869
- 八代市 — 作田家住宅主屋及び作田家住宅蔵(国登録)
- https://www.city.yatsushiro.lg.jp/kiji00324765/index.html
- 八代市 — 令和8年熊本地震 関連情報
- https://www.city.yatsushiro.lg.jp/kiji00326750/index.html
最終更新日: 2026.08.08