京都御所の西に建つ現役の官公庁建築

下立売通に南面して建つ赤煉瓦の建物は、明治37年(1904年)12月20日に竣工した。以来、京都府はその一部を執務室や会議室として使い続けている。創建時の姿を保ったまま現役で使われている官公庁建築としては、国内で最も古いとされる。

この場所には、もともと幕末の京都守護職の上屋敷があった。守護職を務めたのは会津藩九代藩主の松平容保で、府庁が建つ以前、この地に屋敷を構えていた。

設計を担当したのは京都府技師の松室重光である。文部技師久留正道の指導のもとで計画が進められ、明治34年(1901年)11月に起工、3年後に完成した。東京、兵庫に次いで全国で3番目に建てられた府県庁舎にあたる。

重要文化財に指定された理由

京都府庁旧本館は、平成16年(2004年)12月10日に国の重要文化財に指定された。指定基準は、意匠的に優秀なものであること、歴史的価値の高いものであること、の二点である。

評価の核心は、この建物が置かれた時代の位置にある。明治中期は、日本人建築家が外国人技師に頼らず西洋建築様式を本格的に扱えるようになり始めた時期であり、旧本館はその到達点の一つに数えられる。さらに、府会の議事堂を庁舎本体に組み込んだ平面は、その後の府県庁舎の定型となった。議場一体型の庁舎建築として後続の模範となった点も、歴史的意義として認められている。

見どころ

外観はローマ・ルネサンス式を基調とし、細部に折衷的な意匠を交える。外壁は石造を模した塗りで仕上げ、柱型などの要所には花崗石を用いる。各面は左右対称に構え、四隅には角形のマンサード屋根を載せる。南正面の中央は前面に張り出し、二階にコリント式の角柱がペディメントを戴く構成とし、その下にローマ・ドリス式の石造車寄を突き出す。

内部に入ると印象が変わる。中庭側からは大理石の大階段が立ち上がり、二階中央には正庁と呼ばれる広間が置かれている。同じ階の四隅には、知事室、貴賓応接室、府会議長室、参事会室が配されていた。創建時の窓ガラスが多く残り、厚みの不均一なガラス越しに中庭の景色や光がわずかに歪んで見える。洋風の外殻の内側には質の高い和の木工技術が組み込まれており、室内意匠は時間をかけて見るに値する。

背面には、独立した棟のように旧議場が建つ。マンサード屋根の下に半円アーチの窓を並べた高窓層があり、その下に傍聴席、階下にアーケードを巡らせた三層構成をとる。現存する議場としては国内最古とされる。

中庭には6種7本の桜がある。中央の枝垂れ桜は、円山公園の初代祇園しだれ桜から育った実生木である。南西に立つのは容保桜で、この地がかつての京都守護職上屋敷跡であったことにちなみ、桜守として知られる16代佐野藤右衛門が松平容保の名をとって命名した。山桜と大島桜の特徴を併せ持つ品種で、この名で呼ばれる桜はここにしかない。春には中庭を公開する観桜祭が開かれ、夜間のライトアップも行われる。

周辺の情報とアクセス

旧本館は京都御所とその周囲の御苑から歩いてすぐの場所にあり、午前中の散策と組み合わせやすい。令和5年(2023年)には1階にカフェ「salon de 1904」が開業し、日中を通して営業している。最寄り駅は地下鉄烏丸線の丸太町駅で、市バスは府庁前で停まる。建物の見学は無料だが、公開日が限られているため、訪問前に日程を確認しておきたい。秋には同じ部屋を会場に観芸祭も催される。

Q&A

Q建物の中を見学できますか。
Aできます。公開は火曜日から金曜日と第1・第3・第5土曜日の午前10時から午後5時までで、祝日と年末年始は休みです。入場は無料です。10名以上での見学は事前予約が必要です。
Q今も役所として使われていますか。
Aはい。二階の一部は現在も執務室や会議室として使われています。この継続的な利用が、現役の官公庁建築として国内最古とされる理由の一つです。
Q桜の見頃はいつですか。
A例年3月下旬から4月上旬です。その時期に中庭を公開する観桜祭が開かれ、夜桜のライトアップも行われます。
Qどうやって行けばよいですか。
A地下鉄烏丸線の丸太町駅から徒歩、または市バスの府庁前バス停が便利です。京都御所のすぐ西側に位置します。

基本データ

名称京都府庁旧本館(きょうとふちょうきゅうほんかん)
所在地京都府京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
指定区分重要文化財(近代/官公庁舎)
指定年月日平成16年(2004年)12月10日
員数1棟
構造煉瓦造一部石造、2階建一部地下室付、木造トラス小屋組、天然スレート葺
建築面積2,822.43平方メートル
竣工明治37年(1904年)12月20日
設計松室重光(京都府技師)
所有者京都府
公開火曜日〜金曜日、第1・3・5土曜日 午前10時〜午後5時(祝日・年末年始を除く、入場無料)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00003894
文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/149091
京都府ホームページ「重要文化財 京都府庁旧本館」
https://www.pref.kyoto.jp/qhonkan/
京都観光Navi「京都府庁旧本館 観桜祭」
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=7651

最終更新日: 2026.06.02