警察本部から文化庁へ
旧京都府警察本部本館(文化庁京都庁舎本館)は、京都市上京区にある昭和3年(1928年)竣工の鉄筋コンクリート造庁舎で、令和6年(2024年)3月6日に国の登録有形文化財に登録された。
建つのは京都府庁の敷地東側。すぐ西には明治37年(1904年)竣工の京都府庁旧本館があり、こちらは重要文化財に指定されている。煉瓦造で装飾を全面に展開する明治の庁舎と、タイル貼で平滑に納めた昭和の庁舎。四半世紀を隔てた二棟が同一敷地に並ぶ例は、そう多くない。
竣工年には意味がある。昭和3年11月、京都御所で昭和天皇の即位の礼が営まれ、それに前後して京都では官公庁舎の整備が相次いだ。本館もその流れのなかに位置づけられることが多いが、文化庁の登録記録が記すのは竣工年と改修年のみである。
規模は地上3階地下1階、建築面積1,054平方メートル。内部は中廊下形式をとり、東西面の中央にそれぞれ玄関を開く。どちら側から見ても正面として成立する構成である。
警察本部としての使用は令和2年(2020年)まで続いた。令和4年(2022年)に改修が完了し、翌年3月、東京から機能の大半を移した文化庁が京都での業務を開始する。中央省庁の本格的な地方移転としては戦後初の事例となった。隣接して地上6階の新行政棟が建てられ、本館と接続している。
平滑な壁面と、玄関まわりの密度
登録基準は「造形の規範となっているもの」。評価の要点は、抑制された外観と玄関部に集中する装飾との対比にある。
外壁はタイル貼で、凹凸をほとんど持たない。付柱の反復も、重い軒蛇腹もない。昭和初期の官公庁舎に広く見られた手法で、鉄筋コンクリートが事務所建築の標準構造となったこの時期、設計者たちは箱状の躯体にどこまで装飾を負わせるかという問題に取り組んでいた。
この建物が出した答えは明快で、装飾を玄関へ集約する。玄関廻りは内外ともアーチで構え、ステンドグラスが前室と階段室に色を落とす。廊下や主要室には天井飾りと腰板が残り、令和4年の改修ではこれらを取り替えずに復原する方針がとられた。文化庁移転時に公開された写真には、当初の階段手摺や格天井が写っている。
現役の警察庁舎としては、内装の残存度がかなり高い。本部庁舎は改修の頻度が高く、文化財として評価される段階に至る前に内部を失う例が大半だからである。
訪ねるときに
見学の条件は厳しい。本館は文化庁の現用庁舎であり、一般の内部見学には応じていない。公開を想定した区画についても検討段階にとどまり、外部からの自由な出入りはできない状態が続く。府庁敷地は執務時間中は開かれているため、外観の観察と撮影に支障はない。
実際の訪問先としては、隣の京都府庁旧本館を目的に据え、そのついでに本館の外観を眺めるかたちが現実的だろう。旧本館は無料公開されており、公開日は火曜から金曜と第1・第3・第5土曜、時間は10時から17時まで、祝日と年末年始は休み。10名以上の団体は事前予約が必要となる。旧知事室、旧議場、正庁、旧食堂が公開対象で、1階南東角の旧人事委員会室には喫茶「salon de 1904」が入る。公開日程は府の行事などで変更されることがあるため、府有資産活用課への事前確認をすすめたい。
二棟の間に立てば、隔たった年代が視覚的に把握できる。煉瓦と石の役物で輪郭を刻む明治の壁面と、影の落ちない昭和の壁面。
最寄りは地下鉄烏丸線丸太町駅で、徒歩およそ10分。京都御苑の西に接する立地であり、御所周辺の散策に組み込みやすい。
Q&A
- 旧京都府警察本部本館(文化庁京都庁舎本館)の内部は見学できますか
- 一般公開は行われていません。文化庁の現用庁舎であるため内部への立ち入りはできず、京都府庁敷地から外観を見ることになります。
- 旧京都府警察本部本館はいつ、どの区分で文化財になりましたか
- 令和6年(2024年)3月6日に登録有形文化財(建造物)として登録されました。登録番号は26-0657、登録基準は「造形の規範となっているもの」です。
- 旧京都府警察本部本館に文化庁が入っているのはなぜですか
- 文化庁が東京から京都へ機能の大半を移転し、令和5年(2023年)3月に京都での業務を開始したためです。令和4年に本館を改修し、隣接して地上6階の新行政棟を設けました。
- 隣の京都府庁旧本館とはどう違いますか
- 別個の文化財で、保護の区分が異なります。明治37年竣工の旧本館は重要文化財で曜日を限って公開されていますが、昭和3年竣工の本館は登録有形文化財で公開はありません。登録は指定より緩やかな保護制度です。
- 旧京都府警察本部本館へのアクセスを教えてください
- 所在地は京都市上京区下長者町通新町西入藪之内町85-4です。地下鉄烏丸線丸太町駅から徒歩約10分、京都御苑の西側に位置します。
基本情報
| 名称 | 旧京都府警察本部本館(文化庁京都庁舎本館) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市上京区下長者町通新町西入藪之内町85-4 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号26-0657 |
| 指定年 | 令和6年(2024年)3月6日登録・告示 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄筋コンクリート造地上3階地下1階建、建築面積1,054平方メートル |
| 所有者 | 京都府 |
| 公開状況 | 非公開(外観のみ府庁敷地から見学可) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00014857
- 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/531207
- 京都府 新行政棟・文化庁移転施設整備工事
- https://www.pref.kyoto.jp/bunkachoiten/seibikouji.html
- 京都府 重要文化財 京都府庁旧本館
- https://www.pref.kyoto.jp/qhonkan/
最終更新日: 2026.08.08