伊藤喜商店無量子庵井戸とは
伊藤喜商店無量子庵井戸(いとうきしょうてんむりょうしあんいど)は、京都市東山区松原通の伊藤喜商店の奥、離れ無量子庵に大正15年(1926年)頃に設けられた石造の井戸で、上屋を備え、平成20年(2008年)7月8日に登録有形文化財となった。登録上の面積は0.81平方メートル。
位置は無量子庵主屋の南側の東寄りで、土蔵から見ると東北にあたる。主屋と土蔵のあいだ、日々の水仕事の動線の上に置かれている。
建物ではなく工作物として登録された1件で、井戸枠・洗い場・井戸屋形(上屋)がひとまとまりになっている。
登録の理由と価値
伊藤喜商店無量子庵井戸の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。土蔵と同じく、無量子庵の屋敷構えを成り立たせる要素として評価された。
水道が普及したあとも、京都の町家では井戸を残し、庭の手入れや洗い物に使い続けた家が多い。井戸は生活の設備であると同時に、庭の景色の一部でもあった。無量子庵の井戸が石の枠と屋形を当初の形で保っていることは、大正末の京都の住まいが水とどう付き合っていたかを具体的に示している。
見どころ
花崗岩4枚を相欠きに組んだ井戸枠
伊藤喜商店無量子庵井戸の井戸枠は、一辺0.9メートルの方形である。花崗岩の板石4枚を、それぞれの端を半分ずつ欠き取って噛み合わせる相欠(あいがき)の組み方で組み立てる。四隅は石同士の噛み合わせで納まっている。
モルタル塗の洗い場
井戸枠の周りには、モルタル塗の洗い場を設ける。汲んだ水をその場で使い、流すための床で、井戸が台所仕事や洗濯の場として使われていたことが分かる。
隅柱を1本省いた井戸屋形
井戸屋形の屋根は銅板葺の片流れで、柱の根元には花崗岩の礎石を据える。興味深いのは、主屋側にあたる北西の隅柱を省いていることである。文化庁の解説は、動線の支障になるためと説明している。4本柱の屋形から1本を抜き、住まいから井戸への出入りを優先した設計である。
見学方法
伊藤喜商店無量子庵井戸は、貸家として使われている無量子庵の敷地内にあり、公開されていない(2026年9月27日確認)。主屋の南側にあるため、松原通からは見えない。
文化庁のデータベースに写真が掲載されているので、井戸枠の石の組み方や屋形の柱の配置はそちらで確かめたい。
Q&A
- 伊藤喜商店無量子庵井戸はいつ造られましたか。
- 大正15年(1926年)頃です。無量子庵主屋と同じ時期のものです。
- 伊藤喜商店無量子庵井戸の井戸枠はどのような造りですか。
- 一辺0.9メートルの方形で、花崗岩の板石4枚を相欠に組み合わせています。
- 伊藤喜商店無量子庵井戸の屋形はなぜ柱が1本ないのですか。
- 主屋側の北西の隅柱が動線の支障になるため、省かれています。
- 伊藤喜商店無量子庵井戸はなぜ登録有形文化財になったのですか。
- 「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として平成20年(2008年)に登録されました。
- 伊藤喜商店無量子庵井戸は見学できますか。
- 住まいとして貸されている無量子庵の敷地内にあり、公開されていません。松原通からも見えません。
基本データ
| 名称 | 伊藤喜商店無量子庵井戸(いとうきしょうてんむりょうしあんいど) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市東山区松原通大和大路東入2丁目轆轤町100-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 26-0315 |
| 指定年 | 平成20年(2008年)7月8日登録 |
| 員数 | 1基(文化庁のデータベースでは1棟) |
| 寸法 | 石造、面積0.81平方メートル、上屋付、井戸枠0.9メートル角 |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開(住宅の敷地内) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 伊藤喜商店無量子庵井戸(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007230
- 伊藤喜商店(旧店舗兼主屋・無量子庵)(京都府国登録文化財所有者の会)
- https://www.kyoto-tobunkai.org/catalogue/22.html
最終更新日: 2026.09.27