禅院の境内に建つ権現造
東照宮は、京都市左京区南禅寺福地町にある南禅寺塔頭金地院の境内に建つ寛永5年(1628)造営の神社建築で、昭和31年(1956)6月28日に重要文化財に指定された。本殿・石の間・拝殿を1棟として数える。
この構成を権現造という。奥の本殿と手前の拝殿を、床の低い石の間で繋ぐ形式である。本殿は桁行三間、梁間二間、一重の入母屋造で檜皮葺。石の間は桁行三間、梁間一間、一重の両下造で本瓦葺。拝殿は桁行三間、梁間二間、一重の本瓦葺、正面に千鳥破風、その下に軒唐破風を付ける。奥は檜皮、手前は本瓦と葺材を変えており、二棟の格の差が屋根に表れている。
金地院は応永年間(1394〜1428)に洛北で開かれ、慶長10年(1605)に以心崇伝が現在地へ移して再興した。崇伝は江戸幕府の寺社政策と外交文書を差配した僧で、黒衣の宰相と呼ばれた人物である。東照宮の造営は家康の没後、寛永5年のこと。崇伝自身の塔所である開山堂は、東照宮から石段を数段下った位置にある。
京都に残る唯一の遺構として
指定を支えるのは希少性である。京都の観光関係機関の解説は、この建物を京都に現存する唯一の権現造の遺構と記す。権現造は家康の神格化と結びついた形式であり、独自の社殿伝統をもつ京都では、そもそも作例が少なかった。
寺伝によれば、家康の遺言で建てられた東照宮は久能山・日光・金地院の三所であるという。家康の遺髪と念持仏を奉安するとも伝わる。これらは寺側が伝える事柄で、国指定文化財等データベースには造営年・構造・所有者が記録されるにとどまる。読む側としては、寺の伝承として受け取っておくのが妥当だろう。
建築として見れば、日光東照宮の鎮座から11年後、その様式を小さくまとめた作例にあたる。漆と極彩色を用いながら、隣接する南禅寺の伽藍と張り合わない寸法に収めている。寛永期の幕府が京都という場所に対して選んだ規模の感覚が、そこに読み取れる。
拝殿で見上げるもの
拝殿の天井には龍が描かれ、鳴龍と呼ばれる。金地院のリーフレットは狩野探幽の筆とする。欄間には三十六歌仙の額が掲げられ、絵は土佐光起、歌は青蓮院宮尊純法親王の筆と伝わる。個々の額に寄る前に、まず一歩下がって額の連なり全体を眺めたい。
順路には注意が要る。参道に面した東照宮の楼門は閉鎖されている。金地院の拝観口から入り、明智門をくぐって弁天池の庭を経ると、その先に東照宮が現れる。東照宮の右脇の石段を下れば開山堂で、崇伝の像を中央に、左右へ十六羅漢像が並ぶ。さらに進むと小堀遠州作の枯山水「鶴亀の庭」に出る。特別名勝である。
実務的な情報を挙げておく。拝観時間は3月から11月が8時30分から17時、12月から2月は16時30分まで。受付は閉門の15分前に締まる。拝観料は近年の案内で500円とするものが多く、400円と記す資料も残るため、どちらでも足りるよう用意しておくとよい。茶室八窓席と方丈の拝観は事前予約制で、別途700円程度。ガイド付きで概ね1時間おきに設定されている。堂内は撮影不可、庭園と外観は撮影できる。
地下鉄東西線「蹴上」駅からは徒歩約7分。1番出口を出て北へ向かい、煉瓦を螺旋状に積んだ「ねじりまんぽ」をくぐると近道になる。南禅寺の三門まではさらに5分ほどで、二箇所を続けて回りやすい。
Q&A
- 金地院の東照宮は拝観できますか。
- できます。金地院の通常拝観の順路上にあり、8時30分から拝観できます。社殿は外から拝します。参道側の楼門は閉鎖されているため、金地院の拝観口から入ってください。
- 金地院東照宮はなぜ重要文化財なのですか。
- 京都に現存する唯一の権現造の遺構とされるためです。権現造は本殿と拝殿を床の低い石の間で繋ぐ形式で、この建物は寛永5年(1628)の造営、昭和31年(1956)に指定されました。
- 金地院東照宮の拝殿天井の龍は誰が描いたのですか。
- 寺伝は狩野探幽の筆とします。欄間の三十六歌仙額は土佐光起の絵に、青蓮院宮尊純法親王の筆による歌を添えたものと伝わります。
- 金地院東照宮を含む拝観の料金はいくらですか。
- 通常拝観は近年の案内で500円、資料によっては400円と記されます。茶室八窓席と方丈は事前予約制で、別途700円程度が必要です。
- 金地院東照宮で写真撮影はできますか。
- 外観と庭園は撮影できますが、堂内は撮影不可です。鳴龍や三十六歌仙額は拝殿の正面から拝見する形になり、撮影は控えるよう求められます。
基本情報
| 名称 | 東照宮(南禅寺塔頭 金地院) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市左京区南禅寺福地町 |
| 指定区分 | 重要文化財 |
| 指定年 | 昭和31年(1956)6月28日 |
| 員数 | 1棟(本殿・石の間・拝殿) |
| 寸法 | 本殿 桁行三間・梁間二間、入母屋造檜皮葺/石の間 桁行三間・梁間一間、両下造本瓦葺/拝殿 桁行三間・梁間二間、千鳥破風及び軒唐破風付、本瓦葺 |
| 所有者 | 金地院 |
| 公開状況 | 通常拝観の順路上で公開。8時30分〜17時(12〜2月は16時30分まで)。堂内撮影不可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 東照宮(金地院)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/1643
- 京都府観光連盟 金地院
- https://www.kyoto-kankou.or.jp/info_search/9503
- 京都観光Navi 金地院
- https://ja.kyoto.travel/tourism/single01.php?category_id=7&tourism_id=295
- そうだ 京都、行こう。 南禅寺 金地院
- https://souda-kyoto.jp/guide/spot/nanzenji-konchiin.html
最終更新日: 2026.08.07