昭和6年建設の郵便局舎 ― 2019年に登録

旧一志波瀬郵便局は、三重県津市一志町波瀬字若園2210-1にある昭和6年(1931年)建設の木造平屋建で、2019年(令和元年)9月10日に国の登録有形文化財に登録された。員数は1棟。構造及び形式は木造平屋建、瓦葺、建築面積84平方メートル。読みは「きゅういちしはぜゆうびんきょく」である。

文化庁の解説は建物の位置と構成を記す。波瀬川中流の集落中心部にある旧郵便局で、道路に東面して建つ寄棟造桟瓦葺の平屋建である。正面南側に切妻屋根の玄関を付し、下見板張ペンキ塗の外壁に縦長窓を穿つ。内部はL字形平面の東に執務空間、西に宿直室等を配する。地方の郵便局舎の様相を知る上で貴重である。

登録番号は24-0267、適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。登録は「指定」とは別の制度で、届出制を基本とし、所有者が使い続ける自由を広く残す。この建物が現在カフェとして営業できているのは、その枠組みによる。

L字形平面 ― 執務と宿直を分ける

文化庁の解説で最も具体的なのは、内部の構成である。L字形平面の東に執務空間、西に宿直室等を配する。

東は道路に面する側で、窓口業務と事務を行う。西は建物の奥にあたり、宿直室などの職員が起居する空間である。接客の場と生活の場が、平面の東西で分かれている。

宿直室があることは、郵便局が24時間の業務を担っていたことを示す。電報の受付など、夜間も対応が必要な業務があったためである。局舎が職場であると同時に住まいでもあったという運営の実態が、平面に残っている。

L字形になるのは、この二つの機能を一棟に納めた結果である。長方形の平面では、道路に面する部分と奥の部分の性格の違いが表れにくい。

下見板張ペンキ塗と縦長窓

外観の特徴は、下見板張ペンキ塗の外壁と縦長窓である。

下見板張は横板を重ねて張る工法で、洋風建築の技法にあたる。これにペンキを塗る仕上げは、明治期の官庁建築や学校建築に用いられた。縦長窓も同じ系統の意匠である。昭和初期の地方の郵便局舎に、洋風の技法が採られている点が、この建物の位置づけを示す。

屋根は寄棟造の桟瓦葺で、こちらは和風である。正面南側に切妻屋根の玄関を付す。屋根は和風、壁と窓は洋風という組み合わせになっている。

建築面積は84平方メートルと小さい。集落の郵便局として必要な規模がそのまま建物の大きさになっている。

閉局後の使われ方

旧一志波瀬郵便局が郵便局としての営業を終えたのは昭和47年(1972年)である。その後、建物は地元で保存され、平成29年(2017年)頃に改修されてカフェとして再開している。

登録有形文化財の制度は、所有者が活用しながら維持することを前提とする。閉局から登録まで47年あり、その間に用途が変わったうえで登録された。使われ続けたことが建物を残したという経緯である。

建物の前には丸型ポストが残る。郵便局であった時期の名残だが、これは登録の対象ではない。

訪ねる

建物はカフェとして営業しており、拝観料や一般公開日は設定されていない。内部に入るには飲食の利用が前提となる。

営業日と営業時間は変わりうるため、訪問前に確認したい。外観は道路から見ることができる。

旧一志波瀬郵便局は集落の中心部にあり、周囲は住宅である。撮影の際は近隣への配慮が要る。

交通はJR名松線の伊勢八太駅から車で約10分。伊勢自動車道の一志嬉野インターチェンジから車で約20分である。

Q&A

Q旧一志波瀬郵便局はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A昭和6年(1931年)の建設で、2019年(令和元年)9月10日に国の登録有形文化財に登録されました。登録番号は24-0267、員数は1棟です。木造平屋建、瓦葺、建築面積84平方メートルです。
Q旧一志波瀬郵便局が登録された理由は何ですか。
A文化庁は、道路に東面して建つ寄棟造桟瓦葺の平屋建で、正面南側に切妻屋根の玄関を付し、下見板張ペンキ塗の外壁に縦長窓を穿つこと、内部がL字形平面で東に執務空間、西に宿直室等を配することを挙げ、地方の郵便局舎の様相を知る上で貴重としています。
QL字形平面にはどのような意味がありますか。
A道路に面する東側が窓口業務と事務の場、奥の西側が宿直室などの職員が起居する空間で、接客の場と生活の場が平面の東西で分かれています。宿直室があることは、電報の受付など夜間も対応が必要な業務があったことを示します。
Q外観にはどのような特徴がありますか。
A下見板張ペンキ塗の外壁と縦長窓は洋風建築の技法で、明治期の官庁建築や学校建築に用いられたものです。一方、寄棟造桟瓦葺の屋根は和風です。屋根は和風、壁と窓は洋風という組み合わせになっています。
Q旧一志波瀬郵便局は見学できますか。
A現在はカフェとして営業しており、拝観料や一般公開日は設定されていません。内部に入るには飲食の利用が前提です。営業日と営業時間は変わりうるため訪問前に確認してください。外観は道路から見られます。

基本情報

名称旧一志波瀬郵便局(きゅういちしはぜゆうびんきょく)
所在地三重県津市一志町波瀬字若園2210-1
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号24-0267/登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
指定年2019年(令和元年)9月10日 登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積84平方メートル。道路に東面する寄棟造桟瓦葺、正面南側に切妻屋根の玄関、下見板張ペンキ塗の外壁に縦長窓。内部はL字形平面。1931年
所有者個人
公開状況カフェとして営業。拝観料や一般公開日の設定はなく、内部は飲食の利用が前提。外観は道路から見学可

参考文献

文化遺産オンライン 旧一志波瀬郵便局
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/446933
文化庁 国指定文化財等データベース 旧一志波瀬郵便局
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012932
津市 文化財
https://www.info.city.tsu.mie.jp/www/genre/0000000000000/1000000000509/index.html
観光三重 旧一志波瀬郵便局
https://www.kankomie.or.jp/spot/1588

最終更新日: 2026.09.03