長谷園とは

長谷園(ながたにえん)は、三重県伊賀市丸柱にある天保3年(1832年)開窯の伊賀焼の窯元で、敷地に残る13棟の建物と1基の登り窯が平成23年(2011年)と平成27年(2015年)の2回に分けて登録有形文化財となった。運営するのは長谷製陶株式会社で、来訪者向けには「伊賀焼の郷 長谷園」「伊賀焼窯元 長谷園」の名でも案内されている。

名前の「長谷」は「はせ」ではなく「ながたに」と読む。創業家の姓であり、英語では Nagatani-en と書く。丸柱は四方を山に囲まれた焼き物の集落で、いまも窯元が点在している。長谷園は古琵琶湖層から採れる耐火性の高い伊賀の陶土を使い、創業のころから土鍋や行平などの直火にかける道具を焼いてきた。

天保の開窯から登録まで

長谷園の沿革によれば、天保3年(1832年)に長谷源治が初代当主として丸柱に窯を開いた。三代目のころには京都などから職人を雇って仕事を広げ、四代目が社を組織して製造に加えて商いも始めた。昭和38年(1963年)には六代目の長谷彰三が長谷製陶株式会社を設立している。

敷地の斜面に築かれた登り窯は昭和40年代(1965〜1974年)まで火を入れていたと長谷園は説明する。その後、平成11年(1999年)に丸柱の本社敷地内へ直営店舗の伊賀本店を開き、休憩所や展示室を整えて訪れる人を迎えるようになった。工房や倉として使われてきた古い建物が、展示室や休憩の場として使われはじめたのはこのころからである。

平成23年(2011年)10月28日、旧事務所の大正館と登り窯の2件が登録された(登録番号24-0118・24-0119)。続いて平成26年(2014年)11月に文化審議会が主屋など12件の登録を答申し、平成27年(2015年)3月26日に登録された(同24-0190〜24-0201)。14件の登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。伊賀市はこれらを「13棟・1基」の一群として紹介している。

長谷園の敷地をたどる

三重県の答申資料は、長谷園の建物群を、主屋や別荘などの住まいと、伊賀焼の生産を担った工房とが明治から大正にかけて建てられ、当時のまま残るものと説明している。文化庁のデータベースの解説を合わせると、敷地はおおよそ三つのまとまりに分けて歩ける。

当主の住まい

  • 主屋は住宅部の東寄りに南面して建つ茅葺の住宅で、明治期の建築。建築面積は185平方メートル。
  • 離れは主屋の北西に渡廊下でつながる客間で、別荘へ渡る通路の役もかねる。明治期、62平方メートル。
  • 別荘は敷地の西端に建つもとの隠居部屋で、玄関脇に洋間が付く。大正期、119平方メートル。
  • 蔵は主屋の背面に建つ帳簿蔵で、奥の蔵は離れの西に接して建つ。いずれも明治期の土蔵造2階建である。
  • 門及び塀は、主屋正面の表門、別荘正面の西門、両者のあいだの中庭門と、総延長106メートルの塀からなる。

通り沿いの展示室と工房

  • 展示室一は通り沿いで主屋の東隣に建つ。当初は味噌蔵などに使われ、施設のなかでもっとも大きい展示室になっている。
  • 展示室二は展示室一の南に向き合い、当初は馬小屋に使われたとされる。展示室三はさらにその南に建つもとの米蔵などで、背が高い。
  • 工房一と工房二は大正期の作業棟で、工房一にはろくろへ動力を伝えた機械の一部が残る。工房二はL字形の大型工房である。
  • 体験工房は通りの東側に延びる長さ25メートルの建物で、登り窯の薪置場や釉薬の試験に使われた。

山裾の大正館と登り窯

  • 大正館は山裾の敷地西寄りに、高く積んだ石垣の上に建つ旧事務所で、大正後期の建築。正面入口の上にアーチ形の庇を付ける。
  • 登り窯は大正館の東南の斜面に築かれた江戸末期の連房式登り窯で、全長34メートル、高低差9.6メートル。文化庁の解説は燃焼室を15室と数え、長谷園は「16連房」と呼んでいる。

住まいと工房と窯が一つの敷地にそろっているため、長谷園では窯元の暮らしと仕事の場所を同じ一日のうちに見比べられる。茅葺の主屋から通りを渡って工房へ、さらに斜面を上って窯へと歩くと、建物の格や仕上げが用途によってはっきり変わることに気づく。

長谷園の見学と行き方

長谷園の伊賀本店と散策エリアは午前10時から午後5時まで開いている。定休日は火曜日(祝日・休日は営業)で、年末年始とお盆の期間も休む。敷地の散策は無料で、展示室のショップのほか、大正館の休憩スペース、登り窯、窯を見渡せる展望台を見て回れる。営業時間と定休日は2026年10月5日に長谷園の公式サイトで確かめたもので、変わることがある。

住まいの建物(主屋・離れ・別荘・蔵・奥の蔵)は、ふだんは公開されていない。外部の旅行企画では、通常は非公開の家屋と庭園を案内する特別見学が紹介されている。

体験工房では作家の指導による陶芸教室が開かれている。5名以上での申し込みが条件で、1週間前までに電話で予約する(土曜・日曜・祝日を除く午前9時から午後5時まで受付)。料金は絵付けが2,750円から、土いじりが土1キログラムで5,500円からである。毎年5月2日から4日には、敷地とその周辺で陶器まつり「窯出し市」が開かれる。

鉄道を使う場合は、JR関西本線の伊賀上野駅からタクシーでおよそ10分、伊賀鉄道の上野市駅からはタクシーでおよそ20分かかる。車では名阪国道の壬生野インターチェンジから阿山・信楽方面へおよそ10分で、敷地に駐車場がある。

参考文献

国指定文化財等データベース 長谷園大正館(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009028
国指定文化財等データベース 長谷園登り窯(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009029
国指定文化財等データベース 長谷園主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010464
国指定文化財等データベース 長谷園別荘(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010465
国指定文化財等データベース 長谷園離れ(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010466
国指定文化財等データベース 長谷園蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010467
国指定文化財等データベース 長谷園奥の蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010468
国指定文化財等データベース 長谷園展示室一(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010469
国指定文化財等データベース 長谷園展示室二(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010470
国指定文化財等データベース 長谷園展示室三(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010471
国指定文化財等データベース 長谷園工房一(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010472
国指定文化財等データベース 長谷園工房二(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010473
国指定文化財等データベース 長谷園体験工房(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010474
国指定文化財等データベース 長谷園門及び塀(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010475
三重県 国の登録有形文化財(建造物)の新登録について(2014年11月)
https://www.pref.mie.lg.jp/TOPICS/2014110304.htm
三重県 答申された文化財の概要(PDF)
https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000371116.pdf
伊賀市デジタルミュージアム 長谷園大正館・登り窯・主屋ほか
https://adeac.jp/iga-city/catalog/mp404530-100040
三重県 まちかど博物館「伊賀焼の郷 長谷園」
https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/Miebunka/detail?cls=mica_col06&pkey=0000000062
伊賀焼窯元 長谷園 長谷園について
https://igamono.co.jp/at-first/
伊賀焼窯元 長谷園 会社概要・沿革
https://igamono.co.jp/about-us/company/
伊賀焼窯元 長谷園 店舗情報
https://igamono.co.jp/at-first/shop/
伊賀焼窯元 長谷園 窯出し市について
https://igamono.co.jp/at-first/pottery-festival/
観光三重 伊賀焼窯元 長谷園
https://www.kankomie.or.jp/spot/33
THE KANSAI GUIDE 老舗窯元 長谷園の特別見学ツアー
https://www.the-kansai-guide.com/ja/article/item/20288/

最終更新日: 2026.10.05

基本情報

名称長谷園
所在地三重県伊賀市丸柱569
指定登録有形文化財 14件
座標34.83743, 136.13005