コの字に開く明治の校舎

旧登米高等尋常小学校校舎は、宮城県登米市登米町寺池桜小路6番地にある明治21年(1888年)建築の木造校舎で、昭和56年(1981年)6月5日に国の重要文化財に指定された。

まず地名の読みについて触れておきたい。市名は「とめ」、その中の町名は「とよま」と読む。どちらも漢字は登米である。この校舎の名称は町名の読みをとって「とよまこうとうじんじょうしょうがっこうこうしゃ」となる。

南側から近づくと、下見板張りの暗い壁の上に白いバルコニーが横に伸びているのが目に入る。その背後で建物はコの字に開く。東西41.9メートルの校舎を中央に置き、両端から長さ20.0メートルの翼が南へ突き出して中庭を三方から囲む。内庭側には吹き放しの廊下が回り、片廊下式の総二階となっている。

中央校舎の両端には、平屋建で半六角形の昇降口がつく。地元ではこれを六方と呼ぶ。

設計者と指定の理由

設計と監督にあたったのは、宮城県技手の山添喜三郎である。新潟県の出身で、この時期の県下の公共建築を数多く手がけた。その中で、彼の手法をもっとも完全な形で残しているのがこの校舎である。

文化庁の解説は明確な主張を含んでいる。初期の擬洋風とは違った和洋折衷の様式をもち、明治時代の学校建築の流れを知る上に重要な遺例である、というものだ。この区別が指定の核心にある。

明治初期の擬洋風建築は、洋風の意匠を装飾として和風の軸組に貼り付ける傾向が強かった。明治21年のこの建物では方針が変わっている。外壁は下見板張、窓は引違い窓を横に連続させて教室への採光面積を大きく取り、装飾は少ない。借り物の衣装ではなく、考え抜かれた統合として読める。

どのように建てられたか

棟札には明治21年3月19日上棟と記されている。落成までに二年半を要した。地元の材料をよく吟味して用い、堅牢に建てられている。工期の相当部分は基礎が占めた。岩盤に到達するまで杭打ちを行い、その工事だけで数箇月かかったと伝えられる。

全体は素木造りで塗装を施さない。建築面積841.7平方メートル、延床面積1,610.8平方メートル、二階建で屋根は桟瓦葺である。

校舎から資料館へ

学校は明治6年(1873年)に開校し、明治21年に移転して現在地に建てられた。以後およそ一世紀にわたり校舎として使われている。昭和60年代の半ばには、地元の登米中学校の建て替えに伴い仮校舎として再び教室に戻った時期もあった。平成元年(1989年)からは教育資料館として公開され、当時の教室を再現した部屋や、戦前の教育に関する資料、各時代の教科書が展示されている。

周辺一帯は「みやぎの明治村」を名乗る。この校舎のほかに、県指定文化財の旧登米警察署庁舎、廃藩置県当時に置かれた水沢県の庁舎を使う水沢県庁記念館が近接して残る。少し横道に入れば藩政期の武家屋敷もある。

訪ねるにあたって

建物は教育資料館として通年公開されている。入館料は大人400円、高校生300円、小中学生200円。開館時間は9時から16時30分、休館日は12月31日と1月1日である。運営は株式会社とよま振興公社(0220-52-5566)。見学の所要時間は30分ほど。

館内の撮影は個人利用の範囲で可能である。多くの人が目当てにする一枚は、実は建物の外で撮ることになる。玄関の正面軸線上に赤レンガの校門が立っており、その門越しに校舎を収める構図が知られている。敷地内からでは成立しない角度なので、帰る前に道路側から撮っておきたい。

登米への交通は少し計画が要る。仙台からは東日本急行の高速乗合バス「とよま総合支所線」がある。仙台と登米市役所前を結ぶ別系統があるため、予約の際は行き先の取り違えに注意したい。車の場合は三陸自動車道からアクセスでき、近くに駐車場がある。

教室の中

一室は明治期の授業風景を再現した形で整備されており、当時の机や黒板、教材が置かれている。廊下は中庭側が吹き放しになっているため、冬は寒く、初秋は心地よい。近年はNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」をはじめとする映像作品のロケ地としても使われ、その関係で訪れる人も少なくない。

Q&A

Q旧登米高等尋常小学校校舎は見学できますか。入館料はいくらですか。
A教育資料館として公開されています。開館時間は9時から16時30分、休館日は12月31日と1月1日です。入館料は大人400円、高校生300円、小中学生200円。問い合わせは株式会社とよま振興公社(0220-52-5566)です。
Q旧登米高等尋常小学校校舎の設計者は誰ですか。
A新潟県出身の宮城県技手、山添喜三郎です。当時の県下の公共建築を数多く手がけました。棟札には明治21年(1888年)3月19日上棟と記されています。
Q旧登米高等尋常小学校校舎はなぜ重要文化財なのですか。
A昭和56年(1981年)6月5日の指定で、初期の擬洋風とは異なる和洋折衷の様式をもち、明治時代の学校建築の流れを知る上で重要な遺例であることが評価されました。地方文化を示す建築としての意義も挙げられています。
Q旧登米高等尋常小学校校舎はどのような平面をしていますか。
A東西41.9メートルの校舎を中央に、南へ長さ20.0メートルの翼を両端から出したコの字型です。内庭側に吹き放しの片廊下を回し、中央校舎の両端に半六角形の平屋の昇降口(六方)がつきます。建築面積841.7平方メートル、延床面積1,610.8平方メートル。
Q旧登米高等尋常小学校校舎へはどう行けばよいですか。
A仙台からは東日本急行の高速乗合バス「とよま総合支所線」を利用します。仙台と登米市役所前を結ぶ別系統があるため乗り間違いに注意してください。車の場合は三陸自動車道からアクセスでき、近隣に駐車場があります。

基本情報

名称旧登米高等尋常小学校校舎(とよまこうとうじんじょうしょうがっこうこうしゃ)/現・教育資料館
所在地宮城県登米市登米町寺池桜小路6番地
指定区分重要文化財(建造物)/指定番号 02116
指定年昭和56年(1981年)6月5日
員数1棟
寸法木造二階建、桟瓦葺。建築面積841.7平方メートル。中央校舎東西41.9メートル、両翼各20.0メートル
所有者登米市
公開状況公開。9時から16時30分、休館は12月31日・1月1日。大人400円、高校生300円、小中学生200円

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/140
文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/192800
とよま振興公社 教育資料館
https://toyoma.co.jp/facilities-kyoiku/
宮城まるごと探訪(宮城県観光連盟)
https://www.miyagi-kankou.or.jp/theme/detail.php?id=11999

最終更新日: 2026.08.06