格を下げて造られた、もう一方の門
宮崎県庁舎東門門柱は、宮崎県宮崎市橘通東二丁目35にある県庁敷地の東面、本館東側の通りに面して立つ昭和7年(1932年)建設の工作物で、平成29年(2017年)5月2日に国の登録有形文化財に登録された。
間口は五・四メートル。主柱の高さは二・一メートル、開口の北側に高さ一・八メートルの脇柱が一本だけ添う。通りから門に向かって見れば右手にあたる。鉄筋コンクリート造に石張仕上げ、柱の軸部はいずれも四角形である。
この数値を南面の正門門柱と並べると、設計の考え方が読める。正門は間口八・一メートル、主柱は八角形で高さ三・二メートル、脇柱は東西両側に付く。東門はそれより低く、狭く、断面は八角ではなく四角で、しかも脇柱を片側にしか持たない非対称である。昭和初期の官庁施設は入口に序列を与えるのが当然で、東門は儀礼の動線と張り合う位置に置かれていない。
それでも意匠の系統は保たれている。柱頭は小塔状にまとめられ、本館パラペットの小尖塔の形を意識したものと文化庁の解説は記す。簡略化され、背を落とし、角を立てながら、出所は同じである。解説文は東門門柱が敷地東面の景観を整えると評価する。設計者が建物の背面をも正面と同じ密度で扱ったことの、控えめな言い換えといえる。
同じ日に登録された四件
平成29年5月2日の登録は、宮崎県内の四件を同時に対象とした。県庁舎本館が45-0086、正門門柱が45-0087、この東門門柱が45-0088、そして宮崎市大字富吉の青木橋が45-0089である。青木橋は大正14年(1925年)の石造橋で、橋長九・五メートル、幅四メートル。四件のうち三件がひとつの敷地の中にある。
門柱二件の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、本館は「造形の規範となっているもの」で、基準が分かれている。登録有形文化財は指定文化財より規制が緩く、おおむね建設後五十年を経た建造物を、使い続けることを前提に守る枠組みとして平成8年(1996年)に始まった。
門柱を独立した一件として登録する意味は、しばしば見落とされる。県庁舎は改修を重ねる建物である。宮崎県庁舎本館も昭和37年(1962年)と同46年(1971年)に手が入っている。敷地の外周部にある工作物は、駐車場の整備や道路拡幅の際に真っ先に姿を消しやすい。昭和七年の設計が敷地の縁までどう及んでいたかを現物で確かめられる県庁が残っていること自体が、めずらしい。東門門柱は本来なら失われていた側の要素である。
本館の設計は置塩章、施工は大林組。鉄筋コンクリート造三階地下一階建、建築面積二五三七平方メートル、塔屋と煙突を備える。現役の都道府県庁舎本館としては全国四番目に古く、九州最古にあたる。建設費は七十二万円ほどで、その相当部分が県内の水力発電開発に関わる電力会社からの寄付でまかなわれたとも伝わるが、文化庁の記載は建設費に触れておらず、この数字は言い伝えの域を出ない。
敷地そのものが重みを持つ理由は県の成り立ちにある。宮崎県は明治6年(1873年)に置かれたのち、三年後に鹿児島県へ併合され、明治16年(1883年)の再置県で復活した。初代の庁舎は田畑の中に建てられ、官庁街はその周囲に形成されていく。昭和七年の建物は同じ土地に立つ。門柱が街路の付属物ではなく都市形成の一部として読まれるのは、この経緯による。
見に行くときの順路
手続きは何もいらない。門柱は敷地東面の公道に面しており、時間帯を問わず無料で見られ、撮影も自由である。東側は官庁街の通りで、勤務時間を外せば人通りは少ない。背の低い四角い柱は、目当てにして歩かないと通り過ぎてしまう。北側から近づくと、片側だけの脇柱が本館を背景にした輪郭の中で目に入る。
そこから南へ回り込めば、二分ほどで正門に着く。規模の差は並べて見た瞬間に分かる。両方を続けて見るのに十分もかからず、それぞれの門が何のために造られたのかを理解するにはこの順路が最も早い。
内部を見るなら無料の見学ツアーがある。毎月第一日曜日の十時と十一時、ボランティアガイドが本館と前庭を案内する。所要三十分から四十分、予約は不要。集合場所は東門ではなく南面の正門付近である。一月は第三日曜日に実施される。五名以上の団体は平日の団体ツアーがあり、二週間前までに事務局へ申し込む。案内内容は随時見直されるため、県の公式観光サイトで確認してから訪ねたい。
第一・第三日曜日には県庁前の楠並木通りが歩行者天国となり、平成21年(2009年)から続く楠並木朝市が開かれる。樹齢百年を超えるとされる楠の下に県産の農水産物やキッチンカーが並ぶ。その賑わいのあいだも東門の周辺は静かなままで、門柱をじっくり見るにはむしろ好都合である。
JR宮崎駅から県庁までは西へ徒歩十五分ほど。駅の側から歩いてくると、四件のうち最初に出会う登録建造物がこの東門門柱になる。
Q&A
- 宮崎県庁舎東門門柱はどこにあり、自由に見学できますか。
- 宮崎市橘通東二丁目35の県庁敷地東面、本館東側の通りに面して立っています。公道からの見学であるため予約も料金も不要で、時間帯の制限もなく、撮影も自由に行えます。
- 宮崎県庁舎東門門柱と正門門柱は何が違うのですか。
- 東門は間口五・四メートル、四角形の主柱が高さ二・一メートル、北側に高さ一・八メートルの脇柱が一本のみ付きます。正門は間口八・一メートル、八角形の主柱が高さ三・二メートル、東西両側に脇柱が付きます。東門のほうが小さく簡素で、非対称である点が副門としての性格を示しています。
- 宮崎県庁舎東門門柱はいつ、どの登録番号で登録されましたか。
- 平成29年(2017年)5月2日、第86回登録で登録番号45-0088として登録されました。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。同日、県庁舎本館・正門門柱と、宮崎市富吉の青木橋も登録されています。
- 宮崎県庁舎東門門柱を見たあと、本館の内部も見学できますか。
- 毎月第一日曜日の十時と十一時に実施される無料の定時ツアーで見学できます。所要三十分から四十分、予約は不要で、集合は南面の正門付近です。一月は第三日曜日、五名以上の団体は二週間前までの申込制となります。
- 宮崎県庁舎東門門柱が登録に値すると判断されたのはなぜですか。
- 昭和七年の設計が敷地の副次的な縁にまで及んでいたことを示すためです。柱頭には本館パラペットの小塔状意匠が簡略化された形で反復されており、同時代の県庁舎で外周の工作物が当初のまま残る例は多くありません。
- 宮崎県庁舎の二つの門柱を両方見るにはどれくらい時間がかかりますか。
- 十分ほどです。東門から南面の正門までは徒歩二分程度で、続けて歩けば柱の断面や高さの違いをその場で比べられます。
基本情報
| 名称 | 宮崎県庁舎東門門柱(みやざきけんちょうしゃひがしもんもんちゅう) |
|---|---|
| 所在地 | 宮崎県宮崎市橘通東二丁目35 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 45-0088/登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」 |
| 指定年 | 平成29年(2017年)5月2日登録、第86回登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 間口5.4メートル、主柱高2.1メートル(四角形)、北方脇柱高1.8メートル、鉄筋コンクリート造石張仕上げ |
| 所有者 | 宮崎県 |
| 公開状況 | 公道から常時見学可、無料。本館内部は毎月第一日曜10時・11時の無料ツアー(正門付近集合、予約不要)。1月は第三日曜。 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 宮崎県庁舎東門門柱
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011607
- 文化庁 国指定文化財等データベース 宮崎県庁舎正門門柱
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011606
- 文化庁 国指定文化財等データベース 青木橋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011608
- 文化遺産オンライン 宮崎県庁舎東門門柱
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/285756
- みやざき観光ナビ 宮崎県庁見学ツアー
- https://www.kanko-miyazaki.jp/feature/kenchokengakutour
最終更新日: 2026.08.06