旧山田家住宅の成り立ち
旧山田家住宅は、長野県中野市大字江部にある山田庄左衛門家の屋敷で、享保9年(1724年)に4代庄左衛門が構えた屋敷地に、弘化5年(1848年)の質蔵及び文庫蔵から昭和28年(1953年)の新座敷までの7件が建ち並び、平成28年(2016年)11月29日にそろって国の登録有形文化財に登録された。
中野市の案内によると、山田家の先祖は戦国浪人で、元和年間(1615~1624年)ころに江部へ移り住んだと伝わる。寛文年間(1661~1673年)から「庄左衛門」を名乗って酒造を始め、千曲川の水害地帯で質地を集める地主として家を大きくした。
7代庄左衛門は山田松斎の号で知られる地方の文人で、江戸や京都の儒者・漢詩人と交わり、著作を出版している。江戸時代後期には幕府の中野陣屋で郡中取締役を務め、掛屋として陣屋の金融を引き受けるとともに、千曲川の流れを付け替える「瀬直し」の実現に奔走した。明治以降も、11代荘左衛門が草創期の地方行政に携わり、12代荘左衛門は貴族院議員・衆議院議員として横浜の生糸貿易や銀行経営にかかわった。13代荘左衛門は養蚕・製糸と産業組合の事業に力を注いでいる。
屋敷と収蔵資料は中野市に移り、改修を経て令和6年(2024年)4月1日に「中野市旧山田家住宅」として開館した。いまは建物のほか、江戸時代から昭和20年代までの古文書、書画、工芸品、民具などを保存し、展示している。
屋敷の配置と見て回る順序
旧山田家住宅の敷地は、北を国道403号、西を市道に接する角地にある。文化庁の解説を重ねると、登録された7件は通りに面した北辺と西辺を土蔵の列で囲み、内側に座敷と庭園を抱える配置になっている。
- 北辺(国道403号沿い):東から質蔵、文庫蔵、台所味噌蔵、事務所、裏門と続き、北西の角を隅蔵が押さえる
- 西辺(市道沿い):北の隅蔵から、南北に長い六間蔵及び二間蔵、その南端に接する酒売場へと続く
- 敷地の中央:庭に面した奥座敷と、これに矩折れで接続する新座敷
通りから眺めると、白漆喰の壁と腰の下見板張、水路沿いのボタモチ石積みが北面にも西面にも連なり、豪農の屋敷らしい塀のような構えが読み取れる。そのなかで酒売場だけは柱を見せる真壁造で、外構の列に変化を付けている。
内側では、江戸時代後期の作庭とされる庭園を囲んで奥座敷と新座敷が建つ。登録されていない母屋は展示室と事務室に使われており、見学はここを起点にして庭と座敷、蔵の順に回ることになる。
7件の登録有形文化財
旧山田家住宅の7件は、いずれも平成28年(2016年)11月29日に登録有形文化財となった。中野市で最初の国登録有形文化財建造物であり、登録基準は7件とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。江戸時代末期から昭和中期まで、100年を超える幅で建て継がれた建物がひとつの屋敷に残る。
- 奥座敷:明治中期、昭和26年(1951年)ころ移築、木造平屋建、建築面積47㎡
- 新座敷:昭和28年(1953年)、木造平屋建、建築面積30㎡
- 質蔵及び文庫蔵:弘化5年(1848年)、土蔵造2階建、建築面積76㎡
- 裏門・台所味噌蔵及び事務所:明治13年(1880年)ころ、木造平屋一部2階建、建築面積87㎡
- 隅蔵:江戸末期、土蔵造平屋建、建築面積54㎡
- 六間蔵及び二間蔵:明治13年(1880年)ころ、土蔵造平屋建、建築面積139㎡
- 酒売場:明治中期、木造2階建、建築面積128㎡
名称と読み
旧山田家住宅は「きゅうやまだけじゅうたく」と読む。文化庁のデータベースでは7件がそれぞれ「旧山田家住宅奥座敷」のように独立した名称で登録されており、施設としての正式な呼び名は「中野市旧山田家住宅」である。
当主の名乗りは、江戸時代の「庄左衛門」に対し、市の案内では明治以降の当主を「荘左衛門」と書き分けている。所在地は文化庁の記載が「大字江部字長井田46-3」、市の施設案内が「大字江部46-3」で、字名の有無が違うだけで同じ場所を指す。
旧山田家住宅への行き方と見学の条件
旧山田家住宅は、長野電鉄長野線の信州中野駅から西へ約2キロメートルの位置にある。市の案内では徒歩で約30分、車なら約10分である。車で向かう場合は、上信越自動車道の信州中野ICから東へ約3.5キロメートル、約15分となる。
開館時間は午前10時から午後4時まで。休館日は毎週火曜日(祝日の場合は開館)と、12月29日から1月3日の年末年始である。観覧料は一般300円、高校生以下150円で、20名以上の団体はそれぞれ240円、120円になる。未就学児や障害者手帳を持つ人とその介護者1名などは無料の扱いがある。
中野市は、観覧を希望する場合も事前の予約が必要としている。電話は0269-23-2955(火曜休館)。観覧できるのは奥座敷、新座敷、裏門、台所味噌蔵及び事務所、隅蔵、六間蔵及び二間蔵、母屋の展示室、庭園で、質蔵及び文庫蔵と酒売場は市の一覧に入っていない。
奥座敷・新座敷・庭園などは貸館として使うこともでき、座敷は1室2時間600円、庭園は2時間2,000円である。展示室では定期的に展示替えがあり、学芸員による展示解説や講座も開かれている(2026年9月確認)。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田家住宅奥座敷
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011303
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田家住宅新座敷
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011304
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田家住宅質蔵及び文庫蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011305
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田家住宅裏門・台所味噌蔵及び事務所
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011306
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田家住宅隅蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011307
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田家住宅六間蔵及び二間蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011308
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧山田家住宅酒売場
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011309
- 中野市 中野市旧山田家住宅
- https://www.city.nakano.nagano.jp/docs/2020092500033/
- 中野市 国の登録有形文化財に登録された「旧山田家住宅奥座敷」ほか6件の建造物
- https://www.city.nakano.nagano.jp/docs/2016112900037/
- 長野県 カルチャー・ドット・ナガノ 中野市旧山田家住宅
- https://www.culture.nagano.jp/facilities/653/
最終更新日: 2026.09.25
基本情報
| 名称 | 旧山田家住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 長野県中野市大字江部字長井田46-3 |
| 所有者 | 中野市 |
| 指定 | 登録有形文化財 7件 |
| 座標 | 36.73603, 138.34534 |