馬場町の通りに開く薬医門

原山家住宅表門は、長野県長野市松代町松代の馬場町にある江戸時代後期の薬医門で、平成22年(2010年)9月10日に国の登録有形文化財に登録された。木造・瓦葺の一棟で、間口は3.6メートルである。

敷地は東側の通りに面する。その東辺に建物と塀が南から北へ並び、表門は仲間部屋の北隣に位置する。屋根は切妻造の桟瓦葺。中央に両開きの扉を吊り、左右に袖壁が付く。袖壁の幅は北側が0.9メートル、南側が0.6メートルで、左右で寸法が違う。北側の袖壁には潜りが開けられ、扉を開けずに人が出入りできる。

袖壁の上部は漆喰仕上げ。本柱と控柱のあいだにも漆喰の腰壁を設けてあり、白い帯が門の下半分を横に走る。

薬医門は、本柱の後ろに控柱を立て、棟を本柱寄りに置く形式をいう。扉の通り芯と棟の芯がずれるため、前面の軒が深く張り出す。松代の武家屋敷には薬医門のほか、長屋門、冠木門、腕木門、棟門が残っており、そのなかで薬医門は格の高い門とされてきた。

主屋ではなく、通りに面した三件が登録された

登録番号は20-0361、第68回登録にあたる。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の一項目のみで、建物単体の希少性ではなく、まちなみへの寄与が評価されたことになる。

原山家住宅で登録有形文化財となったのは、仲間部屋・表門・塀の三件である。主屋は含まれていない。屋敷のうち通りに向かって並ぶ部分だけが選ばれた、と言い換えてもよい。表門はその列の中ほどにあって、通りと屋敷地を仕切る役目を負う。

同じ平成22年9月10日には、松代から五明家住宅の離れ座敷と文庫蔵、恵明寺の本堂・鐘楼・山門も登録された。三か所八件がまとめて登録された形で、長野市教育委員会と地元のまちづくり団体が所有者と連携して登録を進めてきた経過がある。松代の登録有形文化財が寺社と武家屋敷の双方に広がっているのは、こうした地道な積み重ねの結果である。

門の前で見ておきたい三つのこと

ひとつめは、左右の袖壁の非対称。北0.9メートル、南0.6メートルという30センチの差は、正面に立つとはっきり分かる。潜りが北側にあることと無関係ではない。日常の出入りは潜りで足り、両開きの扉が開くのは限られた場面だけだった。

ふたつめは軒の深さ。薬医門は棟が本柱側に寄るぶん、前へ出る軒が深くなる。雨の日に門前へ立つと、その寸法が体で分かる。

三つめは漆喰の白。袖壁の上部と、本柱・控柱間の腰壁が白く仕上げられている。隣の仲間部屋や北へ続く塀の外壁が中塗仕上げでやや粗い肌をもつのに対し、門まわりだけが滑らかで明るい。仕上げの差が、そのまま門という部分の格を示している。

原山家住宅は個人の住まいで、門の内側や屋敷内は公開されていない。見学は前面道路からの外観のみとなる。撮影も公道上からであれば妨げられないが、敷地内へ立ち入ったり、門扉の隙間から中へレンズを向けたりすることは避けたい。

アクセスは、長野駅善光寺口からアルピコ交通の【30】松代線に乗り、松代駅バス停で下車。所要はおよそ30分で、バスは概ね1時間に2本ある。松代駅は平成24年(2012年)に廃止された長野電鉄屋代線の駅舎がそのまま残る場所で、現在はバスの発着点として使われている。馬場町はそこから南へ約800メートル、徒歩10分ほど。真田宝物館や旧横田家住宅、旧白井家表門など公開されている施設と組み合わせて歩ける距離にある。

Q&A

Q原山家住宅表門は見学できますか。内部は公開されていますか。
A原山家住宅は個人の住まいのため、門の内側や屋敷内は公開されていません。見学は前面の道路から外観を眺める形になります。門の正面は通りに開いているので、道路上から袖壁や軒の造りは十分に観察できます。
Q原山家住宅表門はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A文化庁の国指定文化財等データベースは建設年代を江戸後期(1751年から1829年ごろ)としています。登録有形文化財への登録は平成22年(2010年)9月10日、登録番号は20-0361です。
Q原山家住宅表門の「薬医門」とはどのような形式の門ですか。
A本柱の後ろに控柱を立て、屋根の棟を本柱寄りに置く形式です。扉の位置と棟の位置がずれるため、正面側の軒が深く出ます。松代に残る武家屋敷の門のなかでは格の高い形とされ、真田勘解由家や樋口家などにも例があります。
Q原山家住宅表門へのアクセス方法は。最寄りのバス停はどこですか。
A長野駅善光寺口からアルピコ交通【30】松代線でおよそ30分、松代駅バス停が最寄りです。そこから南へ約800メートル、徒歩10分ほどの馬場町に位置します。松代駅は鉄道駅としては平成24年(2012年)に廃止され、現在はバスターミナルとして機能しています。
Q原山家住宅では表門のほかに何が登録有形文化財になっていますか。
A仲間部屋(登録番号20-0360)と塀(20-0362)が、表門と同じ日に登録されています。いずれも敷地東辺の通りに面する部分で、主屋は登録の対象に含まれていません。

基本データ

名称原山家住宅表門(はらやまけじゅうたくおもてもん)
所在地長野県長野市松代町松代字馬場町1422-1
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 20-0361/第68回登録
指定年平成22年(2010年)9月10日 登録
員数1棟
寸法間口3.6メートル。木造、瓦葺(切妻造桟瓦葺)
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況非公開。前面道路からの外観見学のみ可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース ― 原山家住宅表門
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00008278
長野市 ― 国登録文化財一覧
https://www.city.nagano.nagano.jp/n151100/contents/p002914.html
松代文化財ボランティアの会 ― 松代の武家屋敷
https://ma-vol.jp/rekibun/松代の武家屋敷/
信州松代観光協会 ― アクセス
https://www.matsushiro-kankou.com/access/

最終更新日: 2026.08.04