高さ1.8メートル、延長12メートルの土塀

原山家住宅塀は、長野県長野市松代町松代の馬場町にある江戸時代後期の土塀で、平成22年(2010年)9月10日に国の登録有形文化財に登録された。高さ約1.8メートル、延長は12メートルに及ぶ。

位置は敷地の東辺、表門から北へ続く区間である。柱間1.2メートルで方柱を建て、その間を土で塗り込める。屋根は桟瓦葺で、腕木が持ち出して支える。登録名称は「塀」だが、文化庁の構造欄は土塀と記し、平成22年7月の文化審議会答申を伝えた地元団体の記録も土塀と呼んでいる。呼称に幅があるだけで、指しているものは同じである。

登録番号は20-0362。原山家住宅では仲間部屋(20-0360)、表門(20-0361)とあわせて三件が同日に登録された。三つの登録番号が連番になっているのは、これらが一組として審議されたことの反映である。

表と裏で仕上げを変える

この塀のいちばんの見どころは、同じ壁でありながら外側と内側で構法が違う点にある。通り側は大壁とし、中塗仕上げ。柱を土のなかに塗り込め、面をつなげてしまう。一方、敷地の内側は真壁とし、貫をあらわす。柱と、柱を横に貫く貫材が、そのまま目に見える。

外から見れば連続した土の面、内から見れば構造がむき出しの骨組。どちらが本当の姿かという問いは意味をなさない。塀という部材は、そもそも二つの顔をもつように作られている。

屋根を支える腕木も、外側へ持ち出して庇を出す仕掛けである。雨水を壁面から離すための実用が第一だが、結果として通りには軒の影が落ち、瓦の線が水平に走る。土壁だけでは得られない奥行きがここで生まれる。

柱間1.2メートルという寸法も見ておきたい。約4尺。12メートルの延長を1.2メートルで割ると10間分になり、この塀が規則的な割り付けで組み立てられていることが分かる。

「歴史的景観に寄与」という登録基準

登録有形文化財の制度は平成8年(1996年)に始まった。重要文化財の指定が個々の建物の価値を厳しく見極めるのに対し、登録は届出制を基本とし、所有者に相当の自由を残しながら数多くの建物を保護の枠に入れる仕組みである。基準は三つあり、原山家住宅塀が該当するのは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の一項目だけである。

この基準の下では、塀のような部材が、建物と対等な一件として登録される。原山家住宅で登録されたのが仲間部屋・表門・塀の三件で、主屋が含まれていないのも同じ理屈による。評価の対象は屋敷そのものではなく、通りに向かって連続する外皮なのである。塀は建築としての内部をもたないが、通りの側から見れば、門と仲間部屋のあいだをつなぎ、屋敷地の輪郭を描く不可欠な一辺として働く。

この判断には現実的な背景もある。長野市の伝統環境保存審議会の議事録には、松代でブロック塀への置き換えが進み、武家屋敷の解体も続いてきたという趣旨の発言が残る。土塀は雨と凍結に弱く、部分修理を重ねなければ保てない。維持の手間が大きいものから先に失われる、というのが景観保全の現場で繰り返されてきた事態である。江戸後期の土塀が12メートル残っていること自体が、松代では当たり前ではない。

原山家住宅は個人の住まいで、敷地内は公開されていない。塀は通りに面しているため外側の面は道路から自由に見られるが、真壁で貫をあらわした内側の面を見る機会はない。撮影も公道上からに限りたい。訪ねるなら、長野駅善光寺口からアルピコ交通の【30】松代線で約30分、松代駅バス停で降り、南へ約800メートル歩く。松代城跡や真田宝物館、公開されている旧横田家住宅などと合わせて半日ほどの散策になる。

Q&A

Q原山家住宅塀はどのくらいの大きさですか。どこにありますか。
A高さ約1.8メートル、延長12メートルの土塀です。長野市松代町松代字馬場町1422-1、原山家住宅の敷地東辺にあり、表門から北へ続く区間を占めます。柱間1.2メートルで方柱を建て、屋根は桟瓦葺です。
Q原山家住宅塀の外側と内側で造りが違うと聞きました。どう違うのですか。
A通り側は大壁で、柱を土のなかに塗り込めて中塗仕上げとしています。敷地の内側は真壁で、柱と貫をそのまま見せます。外から見れば連続した土の面、内から見れば骨組が見える面になります。
Q原山家住宅塀はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A登録基準のうち「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に該当したためです。建物単体の希少性ではなく、通りに向かって並ぶ屋敷の外構えとしての働きが評価されました。原山家住宅では仲間部屋・表門と合わせて三件が同日に登録されています。
Q原山家住宅塀は見学できますか。内側も見られますか。
A通りに面した外側は、前面の道路からいつでも見られます。ただし原山家住宅は個人の住まいで敷地内は非公開のため、真壁で貫をあらわした内側を見ることはできません。撮影も公道上からにとどめてください。
Q原山家住宅塀へのアクセスは。最寄りのバス停はどこですか。
A長野駅善光寺口からアルピコ交通【30】松代線でおよそ30分、松代駅バス停が最寄りです。そこから南へ約800メートル、徒歩10分ほどの馬場町にあります。バスは概ね1時間に2本の運行です。

基本データ

名称原山家住宅塀(はらやまけじゅうたくへい)
所在地長野県長野市松代町松代字馬場町1422-1
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 20-0362/第68回登録
指定年平成22年(2010年)9月10日 登録
員数1棟
寸法高さ約1.8メートル、延長12メートル。土塀、瓦葺(桟瓦葺)
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況非公開。前面道路から外側の面のみ見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース ― 原山家住宅塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00008279
長野市 ― 登録文化財制度のあらまし
https://www.city.nagano.nagano.jp/n151100/contents/p002907.html
長野市 ― 国登録文化財一覧
https://www.city.nagano.nagano.jp/n151100/contents/p002914.html
長野市 ― 令和4年度 長野市伝統環境保存審議会 議事録
https://www.city.nagano.nagano.jp/documents/21495/gijirokudenkan.pdf

最終更新日: 2026.08.04