下伊那教育会とは
下伊那教育会は、長野県飯田市仲ノ町に本部を置く教員の団体で、昭和13年(1938年)竣工の下伊那教育会館と同じ年の土蔵、通りの向かいに残る旧黒須家の土蔵と門の4件が、平成26年(2014年)10月7日に登録有形文化財(建造物)に登録された。
教育会の沿革によると、始まりは明治12年(1879年)7月に発足した下伊那教員会議で、明治20年(1887年)に信濃教育会下伊那支会へ改組された。昭和11年(1936年)に社団法人、平成25年(2013年)に公益社団法人となり、いまも郡市連合音楽会や郡総合展覧会、郷土調査部の研究発表会などを開いている。創立100周年の記念事業を昭和62年(1987年)に行っているので、創立の年は明治20年の改組から数えていることになる。
会館の竣工式は昭和13年(1938年)で、沿革には前年の創立50周年記念事業に続けて記されている。戦後の昭和21年(1946年)には通りの向かいの黒須邸を買い取って別館とし、屋敷に残っていた門と土蔵が教育会の持ち物になった。
登録された4件は、出自の違う二組に分かれる。教育会が自ら建てた昭和初期の会館と土蔵、そして譲り受けた屋敷の門と土蔵である。洋風の講堂と城下町の武家屋敷の門が、一つの団体のもとで通りをはさんで向き合っている。
仲ノ町の二つの敷地
仲ノ町は飯田城下の武家地にあたる町で、飯田市によれば、城下町の時代には武家の屋敷が通りに沿って連なっていた。日本画家の菱田春草が明治7年(1874年)に生まれたのもこの町で、下伊那教育会は春草の書簡を所蔵し、郷土調査部に春草の研究部門を置いている。
通りの北:会館と土蔵
下伊那教育会館(仲ノ町303-1)は通りの北側に建ち、南の通りに正面を向ける。下伊那教育会土蔵は会館の北の背面に、南を向いて建つ。会館の前には松を植えた前庭があり、通りから見えるのは会館の正面と前庭までで、土蔵は会館の陰になる位置にある。
通りの南:旧黒須家の屋敷跡
通りを挟んだ南側の敷地(仲ノ町358-3)が、昭和21年(1946年)に教育会が買い取った黒須邸の跡である。下伊那教育会旧黒須家土蔵がこの敷地に建ち、その西に下伊那教育会旧黒須家門が通りに面して構える。
教育会の公式サイトに載る写真では、門の柱に「下伊那教育会別館」の看板が掛かり、脇に「黒須邸跡」と刻んだ石標が立つ。門の奥には別館の入口が見える。沿革によれば、別館は昭和62年(1987年)に建設された。会館の駐車場の案内図にも、この南側の敷地に別館と駐車場が描かれている。
年代の重なり
文化庁のデータベースに記された年代を古い順に並べると、次のようになる。
- 旧黒須家門:江戸時代後期(データベースの西暦は1751年から1830年)
- 旧黒須家土蔵:明治時代後期(同じく1898年から1912年)
- 下伊那教育会館:昭和13年(1938年)、昭和56年(1981年)改修
- 下伊那教育会土蔵:昭和13年(1938年)
最も古いのは旧黒須家門で、飯田藩の城下町の時代にさかのぼる。旧黒須家土蔵について、文化庁の解説はクリの古材などを再利用して明治時代後期に再建された土蔵と考えている。飯田市教育委員会の『教育要覧』令和6年度(2024年度)版は、同じ土蔵を江戸時代後期の建築で明治時代以降に再建されたものと説明しており、もとの蔵の年代と再建の年代のどちらで呼ぶかで書き方が分かれている。
登録の内容
4件は平成26年(2014年)10月7日付の第78回登録で登録有形文化財(建造物)となった。登録番号は20-0451から20-0454までの連番で、4件とも登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。
- 下伊那教育会館(20-0451):木造2階建、瓦葺、建築面積342平方メートル
- 下伊那教育会土蔵(20-0452):土蔵造2階建、瓦葺、建築面積30平方メートル
- 下伊那教育会旧黒須家土蔵(20-0453):土蔵造2階建、瓦葺、建築面積36平方メートル
- 下伊那教育会旧黒須家門(20-0454):木造、瓦葺、間口2.4メートル
教育会の沿革は、この登録を「本館・旧黒須家門塀・土蔵2棟」と書いている。文化庁のデータベースの名称は「旧黒須家門」で、塀は名称に入っていない。
見学とアクセス
下伊那教育会館は教育会の事務局が入る現役の建物である。2026年10月時点で、4件のいずれについても内部の一般公開や見学受付の案内は確認できなかった。会館の正面と旧黒須家門は、仲ノ町の通りから眺めることができる。教育会の事務局の電話番号は0265-52-0808。
会館の駐車場は、会員と教育会が使用を認めた団体・利用者のためのもので、土日・祝日は閉じている。見学者向けの駐車場の案内は無い。
最寄り駅はJR飯田線の飯田駅で、会館は駅から東南東へ直線でおよそ900メートルの位置にある。歩いて15分前後が目安になる。
名称について
下伊那教育会の読みは「しもいなきょういくかい」。下伊那は長野県南部の、飯田市と下伊那郡の町村からなる地域の呼び名で、教育会の会員校もこの範囲に広がる。
文化庁のデータベースでは、4件とも「下伊那教育会」を頭に付けた名称で登録されている。旧黒須家土蔵は「しもいなきょういくかいきゅうくろすけどぞう」、旧黒須家門は「しもいなきょういくかいきゅうくろすけもん」と読む。教育会の資料では、黒須家の屋敷を「黒須邸」、門を「黒須門」とも呼んでいる。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「下伊那教育会館」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010141
- 文化庁 国指定文化財等データベース「下伊那教育会土蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010142
- 文化庁 国指定文化財等データベース「下伊那教育会旧黒須家土蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010143
- 文化庁 国指定文化財等データベース「下伊那教育会旧黒須家門」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010144
- 公益社団法人下伊那教育会「沿革」
- https://shimoinakyoikukai.jp/kyoikukai_008/
- 公益社団法人下伊那教育会「所在地」
- https://shimoinakyoikukai.jp/access/
- 公益社団法人下伊那教育会「教育会館駐車場使用について」(PDF)
- https://shimoinakyoikukai.jp/wp-content/uploads/parking_guideline.pdf
- 飯田市教育委員会『教育要覧 令和6年度』文化財保護活用課(PDF)
- https://www.city.iida.lg.jp/uploaded/attachment/70930.pdf
最終更新日: 2026.10.08
基本情報
| 名称 | 下伊那教育会 |
|---|---|
| 所在地 | 長野県飯田市仲ノ町303-1ほか |
| 所有者 | 公益社団法人下伊那教育会 |
| 指定 | 登録有形文化財 4件 |
| 座標 | 35.51619, 137.83004 |