馬込教会:伊王島の高台に輝く白亜のゴシック天主堂

長崎湾を見渡す伊王島の高台に、純白の壁が青空と海に映える美しいゴシック様式の教会堂があります。馬込教会(まごめきょうかい)、正式名称「大天使聖ミカエル天主堂」は、江戸時代の禁教令のもとで命がけで信仰を守り抜いた潜伏キリシタンの子孫たちが、1931年(昭和6年)に建立した鉄筋コンクリート造の教会です。2000年に国の登録有形文化財に登録されたこの教会は、現在も礼拝の場として使われており、島の住民の半数以上が今もカトリック信徒であるという、まさに「祈りの島」のシンボルです。

歴史的背景:迫害から祈りの自由へ

伊王島のキリスト教の歴史は、江戸時代の禁教令下にさかのぼります。天草や外海をはじめ各地から、厳しいキリシタン弾圧を逃れて海を渡ってきた潜伏キリシタンたちがこの島に辿り着き、移り住んだのが始まりです。聖職者の不在のなか、彼らは何世代にもわたって密かに信仰を伝え続けました。

1865年の「信徒発見」(長崎・大浦天主堂で約250年ぶりに潜伏キリシタンが神父に信仰を告白した歴史的出来事)を経て、1873年にキリシタン禁制の高札が撤廃されると、伊王島の信徒たちもついに公に信仰を実践できるようになりました。禁教令がまだ正式に解かれていなかった1871年(明治4年)には、すでに木造瓦葺の仮聖堂「椎山小聖堂」が建てられており、信仰への強い思いがうかがえます。1884年には馬込地区の住民全員がカトリック信徒となりました。

1890年(明治23年)には、パリ外国宣教会のジョゼフ・フェルディナン・マルマン神父の設計により、レンガ造りで漆喰仕上げの本格的なゴシック様式天主堂が建設されました。しかし、落雷や二度の台風により大きな被害を受け、修復が不可能となったため、信徒たちは島の厳しい気候に耐えうる新たな教会堂の建設を決意しました。

文化財指定の理由と建築的価値

馬込教会は2000年(平成12年)12月4日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。この登録は、建物の建築的・歴史的な重要性を評価したものです。

教会は鉄筋コンクリート造の平屋建て、瓦葺で、建築面積は340平方メートル。三廊式の構成をとり、外部は重層屋根、内部は三層構成で、八分割リブ・ヴォールト天井を備えています。正面はバットレス(控壁)、尖塔、ピナクル(小尖塔)などで華やかに飾られ、中世ヨーロッパの城郭を思わせる荘厳な佇まいです。

日本における初期の鉄筋コンクリート造教会建築として、馬込教会は建築史上特筆すべき存在です。1920年代後半、関東大震災の教訓からレンガ造の耐震性の低さに着目した早坂久之助長崎教区司教は、教会建築を煉瓦造から鉄筋コンクリート造へ転換する方針を強力に推進しました。馬込教会は、1929年から1931年にかけて長崎県下で建設された6棟の鉄筋コンクリート製教会のひとつです。

地元・伊王島船津の大工棟梁である大和和吉と、指導者・松岡孫四郎神父の創意工夫の跡が随所に窺われ、西洋の教会建築様式に日本の職人技が見事に融合した貴重な建築作品として高く評価されています。

見どころと魅力

馬込教会の最大の魅力は、何といっても白亜の外壁と青い海・空とのコントラストの美しさです。ゴシック様式の正面ファサードに並ぶ大小の尖塔やピナクルは、まるで中世ヨーロッパの城のような風格を漂わせています。

堂内に足を踏み入れると、優美なリブ・ヴォールト天井が視線を天へと導きます。色鮮やかなステンドグラスから差し込む光が空間を柔らかく彩り、正面祭壇の上には守護聖人である大天使聖ミカエルの像が創建当時から掲げられています。光と聖なるイメージが織りなす幻想的な雰囲気は、訪れる人の心を深く打ちます。

毎夜、日没から22時までライトアップが行われ、闇の中に浮かび上がる教会堂の姿はひときわ荘厳です。クリスマスシーズンにはイルミネーションが施され、さらに華やかな景観を楽しむことができます。

アクセス・拝観情報

馬込教会は伊王島の沖之島側に位置しています。2011年3月に伊王島大橋が開通して以来、長崎市中心部から車で約30分でアクセスできるようになりました。教会の丘の下には無料の見学者用駐車場が完備されており、そこから徒歩数分で教会に到着します。

公共交通機関を利用する場合は、JR長崎駅から長崎バスで約55分、または長崎港から長崎汽船の高速船で約20分です。リゾート施設「i+Land nagasaki」を利用する場合は、JR長崎駅からの無料送迎バス(予約制)も利用可能で、リゾートから教会までは約1キロの距離です。

馬込教会は現在も信仰の場として使われていますので、見学の際はマナーを守り、静粛にお過ごしください。ミサや教会行事の際は堂内見学ができない場合があります。写真撮影の可否は現地でご確認ください。

周辺の見どころ

伊王島には教会以外にも多くの魅力があります。リゾート施設「i+Land nagasaki」には温泉、ビーチ、アウトドアアクティビティ、バーベキュー施設などが充実しているほか、カナダのモーメントファクトリー社が手がけた体験型ナイトウォーク「ISLAND LUMINA」も人気を集めています。

島内にはもうひとつのカトリック教会である大明寺教会(聖パウロ教会)もあります。1879年(明治12年)に建立された旧大明寺教会堂は、愛知県の博物館明治村に移築保存されており、日本の近代化の歴史を伝える貴重な建物として今も見ることができます。

長崎のキリスト教の歴史にさらに触れたい方には、2018年にユネスコ世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産巡りもおすすめです。馬込教会自体は世界遺産の構成資産ではありませんが、潜伏キリシタンの信仰と苦難の歴史という同じ文脈に連なる教会として、深い感銘を受けることでしょう。

Q&A

Q馬込教会の正式名称は何ですか?
A正式名称は「大天使聖ミカエル天主堂」です。「馬込天主堂」「沖之島教会」「沖ノ島天主堂」など多くの異称でも知られています。
Q教会の内部は見学できますか?
A外観は自由に見学できます。堂内の見学はミサや教会行事がない時間帯に可能な場合がありますが、現地での確認が必要です。現在も信仰の場として使われていますので、マナーを守ってお過ごしください。
Q長崎駅からのアクセス方法を教えてください。
AJR長崎駅から長崎バスで約55分、車で伊王島大橋経由約30分、または長崎港から高速船で約20分です。「i+Land nagasaki」利用者はJR長崎駅からの無料送迎バス(予約制)も利用できます。
Q夜のライトアップは何時まで行われていますか?
A毎夜、日没から22時までライトアップされています。クリスマスシーズンには特別なイルミネーションも施されます。
Q馬込教会はユネスコ世界遺産ですか?
A馬込教会はユネスコ世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産には含まれていません。ただし、潜伏キリシタンの信仰と苦難という同じ歴史的背景を共有しており、国の登録有形文化財として独自に指定されています。

基本情報

名称 馬込教会(まごめきょうかい)/大天使聖ミカエル天主堂
文化財指定 国登録有形文化財(建造物)(2000年12月4日登録)
竣工年 1931年(昭和6年)
構造 鉄筋コンクリート造平屋建、瓦葺、建築面積340㎡
建築様式 ゴシック様式(三廊式、リブ・ヴォールト天井、バットレス、尖塔、ピナクル)
施工・設計 大工棟梁 大和和吉(やまとわきち)/指導者 松岡孫四郎神父(まつおかまごしろう)
所有者 カトリック長崎大司教区
所在地 〒851-1201 長崎県長崎市伊王島町2-617
アクセス JR長崎駅から車で約30分(伊王島大橋経由)/長崎港から高速船で約20分/JR長崎駅から長崎バスで約55分
駐車場 無料(教会下の丘に見学者用駐車場あり、24時間利用可能)
ライトアップ 毎夜 日没〜22:00

参考文献

馬込教会 — 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/139371
カトリック馬込教会 — 長崎市公式観光サイト「あっ!とながさき」
https://www.at-nagasaki.jp/spot/1083
馬込教会 — おらしょ こころ旅(長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産)
https://oratio.jp/p_resource/magome-kyokai
馬込教会【見どころ・礼拝ガイド】(伊王島)— たのしい長崎
https://tanoshi-nagasaki.jp/magome-church
国指定文化財等データベース — 文化庁
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002101
祈りの島・伊王島で岬めぐり — おらしょ こころ旅
https://oratio.jp/p_burari/inorinosimaioujimademisakimeguri

最終更新日: 2026.03.28