島原街道の東側、小路の分かれる角地に
清水家住宅主屋(しみずけじゅうたくしゅおく)は、長崎県島原市上の町865に建つ明治後期の町家で、平成15年(2003年)7月1日に国の登録有形文化財(建造物)となった。
敷地は島原街道の東側にあり、北側を小路が抜けていく角地を占める。建物はその角に西面して建つ。桁行6間半、梁間3間半、切妻造、桟瓦葺、平入の木造2階建。文化庁の登録記載では建築面積145平方メートル。北側を上手とし、正面の全面にわたって1間半の下屋を下ろす。
下屋が正面いっぱいに掛かるため、通りから見上げると、桟瓦の切妻屋根と下屋の庇とが二段に重なって見える。その間に生まれる横長の陰が、この家の表情をほとんど決めている。
登録番号は42-0023、第37回登録。告示は同年7月17日付である。
前庭を設けない、という指標
登録基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の解説が価値の根拠として挙げるのは、装飾でも古さでもなく、正面に前庭をつくらないという一点である。
比較の対象は近い。同じ上の町の882番地、街道沿いに十数軒北へ行った先に保里川家住宅主屋が建つ。こちらは江戸後期、桁行7間半、梁間4間の切妻造平入で、正面下手側半分に1間の下屋を下ろし、上手側半分は塀で囲んで前庭をつくる。登録日は清水家とまったく同じ、平成15年7月1日。
塀で囲った前庭を持つ江戸期の町家と、前面を街路に接して建つ明治後期の町家。この二棟が数分の距離に並んでいることで、島原の町家平面がどこで切り替わったかが実地に読める。文化庁が清水家住宅主屋を「島原町家の変遷を知るうえでの指標的事例」と評したのは、その意味においてである。
なお、登録有形文化財は指定文化財ではない。平成8年に始まった届出制の緩やかな保護制度で、原則として建設後50年を経た建造物を対象とする。島原市が公表する指定文化財一覧(令和7年3月10日現在で国6件・県10件・市77件)に本件が載らないのは、制度が別だからである。
通りの側から見る
個人の住宅であり、内部の公開は行われていない。見学は公道から西面を眺めるかたちに限られる。時間の制約はないが、生活の場であることは前提になる。
島原鉄道島原駅から徒歩5分ほど。周辺は森岳商店街で、保存地区として整えられた町並みではなく、現役の商店街の一部としてこの町家が並んでいる。角地であるため、北側の小路に回り込むと梁間方向の奥行きが把握しやすい。
街道を挟んだ向かい、上の町912番地には猪原金物店主屋がある。北側上手部分に万延2年(1861年)の棟札を持ち、南側下手部分は明治後期の増築。清水家と同日の登録である。こちらは明治10年創業の金物店として営業を続けており、店内に入ることができる。併設の茶房速魚川、店頭の湧水汲み場も含めて、上の町の顔にあたる存在といってよい。
島原の湧水は名水百選に選ばれ、島原半島ユネスコ世界ジオパークのジオサイトでもある。徒歩10分ほどの島原城跡は、令和7年(2025年)3月10日に国史跡に指定された。清水家住宅主屋の撮影自体に制限はないが、居住者の生活に配慮し、公道からの外観にとどめたい。
Q&A
- 清水家住宅主屋の内部は見学できますか。
- できません。個人の住宅であり、内部公開は行われていません。見学は公道から西面と角部を眺める範囲に限られます。市内の登録有形文化財に関する問い合わせ先は島原市教育委員会文化財課です。
- 清水家住宅主屋へのアクセスと所在地を教えてください。
- 長崎県島原市上の町865。島原鉄道島原駅から徒歩約5分、旧島原街道の東側、森岳商店街の一角に建ちます。専用駐車場はないため、車の場合は島原城周辺の有料駐車場が現実的です。
- 清水家住宅主屋はなぜ登録有形文化財になったのですか。
- 登録基準「造形の規範となっているもの」による登録です。正面に前庭を設けない近代の特徴が認められ、島原町家の平面がどのように変化したかを知るうえでの指標的事例と評価されています。
- 清水家住宅主屋は国宝や重要文化財にあたりますか。
- いずれでもありません。登録有形文化財(建造物)で、登録番号は42-0023です。国宝・重要文化財が指定制度であるのに対し、登録は届出を基本とする緩やかな制度で、保護の枠組み自体が異なります。
- 清水家住宅主屋の周辺で合わせて見ておきたいものはありますか。
- 同日登録の猪原金物店主屋(上の町912)は現役の店舗で、内部に入れます。保里川家住宅主屋(上の町882)は前庭を持つ江戸期の平面で、清水家との対比が明快です。令和7年に国史跡となった島原城跡も徒歩圏にあります。
基本情報
| 名称 | 清水家住宅主屋(しみずけじゅうたくしゅおく) |
|---|---|
| 所在地 | 長崎県島原市上の町865 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号42-0023/第37回登録/登録基準「造形の規範となっているもの」 |
| 指定年 | 平成15年(2003年)7月1日登録(告示は同年7月17日) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積145平方メートル。桁行6間半、梁間3間半、切妻造、桟瓦葺、平入。正面全面に1間半の下屋 |
| 所有者 | 国指定文化財等データベースに記載なし |
| 公開状況 | 内部非公開。公道からの外観見学のみ |
参考文献
- 清水家住宅主屋 — 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003482
- 清水家住宅主屋 — 文化遺産オンライン(文化庁)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/168792
- 保里川家住宅主屋 — 文化遺産オンライン(文化庁)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/183393
- 猪原金物店主屋 — 文化遺産オンライン(文化庁)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/188220
- 島原市の文化財 — 島原市
- https://www.city.shimabara.lg.jp/page4941.html
最終更新日: 2026.08.20