松本家住宅(広陵町)とは

松本家住宅は、奈良県北葛城郡広陵町大字古寺の環濠集落にある豪農の屋敷で、明治期から昭和前期にかけて建てられた主屋・蔵・納屋・門・塀の13件が、平成29年(2017年)に国の登録有形文化財に登録された。読みは「まつもとけじゅうたく」。

古寺は、奈良盆地の中ほどの平地にある集落である。文化庁の解説は、松本家住宅主屋を「大和盆地中心部の環濠集落に建つ」住宅と位置づけている。周りを濠で囲んだ村の中に、1軒の農家が道の南北にまたがる2つの屋敷地を構えている。

13件のうち12件は昭和前期(1926〜1945年)、1件は明治期の建物で、昭和5年(1930年)と年代が特定されているのは北屋敷の乾蔵だけである。家財道具を納めた蔵、唐臼を据えたとされる納屋、下男部屋や柴小屋まで揃っており、文化庁は道具蔵や北東納屋の解説で、この屋敷を豪農の住まいとして記している。

松本家住宅の13件と登録

松本家住宅の13件は、平成29年(2017年)10月27日付でまとめて登録された。登録番号は29-253から29-265まで続く。主屋と内蔵の2件は「造形の規範となっているもの」、残る11件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」が登録の基準である。文化庁のデータベースに載る年代と規模は次のとおり。

  • 主屋:昭和前期。木造2階建、瓦葺、建築面積243㎡
  • 表門:昭和前期。木造平屋建、瓦葺、建築面積21㎡、西方潜戸及び土塀付
  • 内蔵:昭和前期。土蔵造2階一部木造平屋建、瓦葺、建築面積25㎡
  • 辰巳蔵:明治期。土蔵造2階建、瓦葺、建築面積74㎡
  • 道具蔵:昭和前期。土蔵造2階一部木造平屋建、瓦葺、建築面積38㎡
  • 下男部屋及び柴小屋:昭和前期。木造平屋建、瓦葺、建築面積40㎡
  • 南屋敷南東納屋:昭和前期。木造平屋建、瓦葺、建築面積24㎡、門付
  • 南屋敷北東納屋:昭和前期。木造平屋建、瓦葺、建築面積8.1㎡、門付
  • 南屋敷南及び西面塀:昭和前期。土塀、瓦葺、延長39m
  • 北屋敷乾蔵:昭和5年(1930年)。土蔵造2階建、瓦葺、建築面積45㎡、土塀付
  • 北屋敷米蔵及び納屋:昭和前期。土蔵造平屋一部2階建、瓦葺、建築面積143㎡、納屋付
  • 北屋敷西納屋:昭和前期。木造平屋建、瓦葺、建築面積15㎡、板塀付
  • 北屋敷門屋:昭和前期。木造平屋建、瓦葺、建築面積39㎡、板塀付

13件はいずれも昭和54年(1979年)から平成23年(2011年)にかけて改修を受けており、その年も棟ごとにデータベースに記録されている。昭和前期の建物が一まとまりで残り、しかも屋敷の中の役割分担がそのまま読み取れる点が、松本家住宅の13件を一括で登録した理由と考えられる。

道を挟んだ南屋敷と北屋敷

松本家住宅の屋敷地は、東西に通る道路を挟んで南と北に分かれる。文化庁の解説は南側を「南屋敷」、北側を「北屋敷」と呼んでいる。

南屋敷の中心は主屋である。主屋の北、道に面して表門が建ち、その東西に土塀が延びる。表門の東の土塀のさらに東には北東納屋が続き、道沿いの長い塀の構えをつくる。主屋の北西の端には内蔵が蔵前を介して接し、内蔵の南西の角から南へ土塀が延びて屋敷の南西隅を囲う。主屋の東には下男部屋及び柴小屋、南東には辰巳蔵と道具蔵が建ち、辰巳蔵は屋敷の南側の境を画している。南東納屋は辰巳蔵の東の端から道具蔵の東側にかけて建つ。

北屋敷は、主屋から見て道の向こう側にある。道に面した南辺には門屋が建ち、番小屋と門と塀が一続きに並ぶ。北辺には東西に長い米蔵及び納屋、北東の隅には乾蔵、南西の方には西納屋が建つ。米や農具を扱う作業の場は北屋敷、住まいと家財の蔵は南屋敷という大まかな分担が、配置から見てとれる。

道の側から眺めると、南の表門と北東納屋、北の門屋が向かい合い、道の両側に腰を板張とし上を白い漆喰で塗った壁が続く。文化庁は門屋の解説で、表門などと合わせて街路の景観をつくる建物と評している。各棟の構造と見どころは、それぞれのページにまとめた。

松本家住宅の見学とアクセス

松本家住宅は個人の住まいで、一般には公開されていない。敷地や建物の中に入ることはできず、見られるのは道路からの外観に限られる。特別公開の案内は、2026年9月の時点では見つからなかった。撮影は公道からにとどめ、門の前で長く立ち止まることは控えたい。

道を挟んで南北の屋敷が向かい合うため、松本家住宅の門と塀の構えは、屋敷の間を通る道路に立つといちばんよく分かる。古寺は濠と細い道が入り組んだ集落で、車の通り抜けにも気を配りたい。

公共交通では、近鉄大阪線の大和高田駅から広陵町のコミュニティバス「広陵元気号」中央幹線に乗り、「古寺」停留所で降りる。令和7年(2025年)4月改正の時刻表では、近鉄高田駅の乗り場から古寺までおよそ22分で、日中はおよそ1時間半に1本の運行である。運賃は大和高田駅で乗り降りする場合200円。停留所から屋敷までの道のりは地図で確かめてから歩いてほしい。見学者向けの駐車場はない。運行内容は変わることがあるので、乗る前に広陵町の案内で最新の時刻を確かめてほしい。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011997
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅表門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012004
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅内蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011998
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅辰巳蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011999
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅道具蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012000
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅下男部屋及び柴小屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012003
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅南屋敷南東納屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012001
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅南屋敷北東納屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012002
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅南屋敷南及び西面塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012005
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅北屋敷乾蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012006
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅北屋敷米蔵及び納屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012007
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅北屋敷西納屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012008
国指定文化財等データベース(文化庁)松本家住宅北屋敷門屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012009
文化遺産オンライン 松本家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/245718
奈良県 奈良県登録有形文化財一覧(PDF)
https://www.pref.nara.lg.jp/documents/22241/bunkazaiitiran.pdf
広陵町 広陵元気号中央幹線の運行について
https://www.town.koryo.nara.jp/0000006194.html
広陵町 広陵元気号中央幹線バス時刻表(PDF)
https://www.town.koryo.nara.jp/cmsfiles/contents/0000006/6194/250401_diagram.pdf

最終更新日: 2026.09.30

基本情報

名称松本家住宅(広陵町)
所在地奈良県北葛城郡広陵町大字古寺308
指定登録有形文化財 13件
座標34.55250, 135.75293