勧進所に建つ校倉の経蔵

大仏殿の西、素朴な土塀の奥に、小ぶりな堂舎が寄り合う勧進所という一画がある。その八幡殿の傍らに、三角材を井桁に組み上げて壁とする校倉造の高床倉が建つ。東大寺勧進所経庫、経巻を納めるための経蔵である。

建物は方三間、寄棟造の本瓦葺で、平安時代前期の建立と考えられている。用いられた校倉の工法は、近くに建つ正倉院宝庫と同じもので、積み上げた材が季節に応じてわずかに伸縮し、内部の空気を安定させるはたらきをもつ。この経庫は、古文書を守るその古い工夫を、小さな規模でくり返している。

いくつもある校倉の、どれか

この建物は、身内の校倉のなかに置いて見るとわかりやすい。東大寺には校倉の倉が複数あり、名前も紛らわしいためだ。本坊経庫は奈良時代の建物で国宝、正倉院宝庫はこれとは別に国宝であり世界遺産の構成資産でもある。勧進所経庫はそれらとは別の建物で、明治35年(1902年)に重要文化財に指定された。法華堂経庫とともに、正倉院の西方にあった倉を移したものと伝えられる。

こうして並べてみると、校倉という形式が古代の大寺にとってどれほど中心的だったかがわかる。大寺は膨大な経典や法具、記録を抱えており、近代の専用収蔵庫が生まれるはるか以前、この種の校倉こそがそれらを守る標準の手立てだった。

訪ねるときは

勧進所はふだん閉ざされ、経庫を含む建物の内部に入ることはできない。一画が公開されるのは毎年10月5日、転害会にあわせた日で、そのとき囲いの内から堂舎と経庫を見ることができる。

勧進所は、大仏殿の裏の塀ぞいを西へ少し歩いた、寺の西側の一画として捉えるとよい。ここには八幡殿もあり、その僧形八幡神坐像は快慶の作になる国宝である。公開日に訪ねれば、経庫だけにとどまらない見どころが待っている。

Q&A

Q勧進所経庫とは何ですか。
A勧進所の八幡殿の傍らに建つ、校倉造の小さな経蔵です。かつて経巻を納めた倉で、重要文化財に指定されています。
Qいつのものですか。
A平安時代前期の建立と考えられ、明治35年(1902年)に重要文化財に指定されました。
Q正倉院や本坊経庫と同じものですか。
A別のものです。正倉院宝庫と奈良時代の本坊経庫はいずれも国宝で、勧進所経庫はそれらとは別の平安時代の建物です。
Q校倉造とはどのような工法ですか。
A三角材を井桁に積み重ね、隅で組み合わせて壁とする工法で、近くの正倉院宝庫と同じ造りです。
Q見学できますか。
A勧進所はふだん非公開ですが、毎年10月5日に公開され、囲いの内から経庫を見ることができます。

基本情報

名称東大寺勧進所経庫(とうだいじかんじんしょきょうこ)
所在地奈良県奈良市雑司町
指定区分重要文化財(建造物)
指定年月日明治35年(1902年)7月31日
時代平安前期
構造桁行三間、梁間三間、校倉、寄棟造、本瓦葺
員数1棟
所有者東大寺
公開勧進所は10月5日に公開

参考文献

国指定文化財等データベース — 東大寺
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2446
東大寺 — 勧進所
https://todaiji.or.jp/contents/guidance/guidance12.html
宮内庁正倉院 — 宝庫について
https://shosoin.kunaicho.go.jp/about/repository/
東大寺 — Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/東大寺

最終更新日: 2026.07.04