葛塚の稲荷神社(新潟市)

稲荷神社(新潟市)は、新潟市北区葛塚にある神社で、文化12年(1815年)に再建された本殿と拝殿及び幣殿、江戸末期の神輿庫、境内社である開市神社の拝殿の4棟が、平成20年(2008年)7月8日に国の登録有形文化財となった。

読みは「いなりじんじゃ」。新潟市北区観光協会などは地名を冠して「葛塚稲荷神社」と呼ぶ。祭神は倉稲魂命(うかのみたまのみこと)である。同じ名の神社は各地にあるので、このサイトでは市名を添えて区別している。

稲荷神社は古くから葛塚の町の氏神として信仰を集めてきた。境内を囲む玉垣は、葛塚の豪商だった三條屋(弦巻家)が中心になって寄進したもので、狛犬や灯籠などの石造物にも町の人々の奉納が多い。

稲荷神社(新潟市)の由緒

創立のくわしい経緯は分かっていない。新潟市北区郷土博物館の説明板は、いくつかの資料から、享保18年(1733年)から翌年ごろにこの地へ小さな祠が建てられたと考えている。当初は、このあたりを治めていた新発田藩の家老、溝口内匠家の邸内にまつられた開墾宮だったらしい。

その後、寛延3年(1750年)2月7日に同家の溝口富昭が稲荷神社を建立し、以後は葛塚の産土神になったとみられる。新発田の安田蕉鹿が著した『蕉鹿年代記』のこの日の項に「葛塚稲荷宮御遷宮」の記事があり、説明板はこれを根拠に挙げている。

稲荷神社の現在の社殿は文化12年(1815年)の再建で、平成13年(2001年)に一部が改修された。社殿には明治天皇の外祖父にあたる中山忠能(なかやまただやす)の筆による「稲荷大明神」の額がかかり、参道の赤い鳥居には、水原代官を務めた男谷彦四郎思孝(おだにひこしろうひろたか)が書いた「正一位稲荷大明神」の額が掲げられている。思孝は勝海舟の伯父にあたる人物である。

稲荷神社(新潟市)で登録された4棟

4棟はそろって第60回の登録で、登録番号は本殿が15-0299、拝殿及び幣殿が15-0300、神輿庫が15-0301、開市神社拝殿が15-0302と続く。登録基準は、稲荷神社の3棟が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、開市神社拝殿が「造形の規範となっているもの」である。

文化庁のデータベースによれば、本殿は文化12年(1815年)の建築で、建築面積は14平方メートル。拝殿及び幣殿は本殿と同じころの建築で、平成13年(2001年)に改修を受けており、建築面積は49平方メートルある。神輿庫は江戸末期(1830〜1867年)の建物で、建築面積21平方メートル。開市神社拝殿は明治4年(1871年)の建築で、昭和44年(1969年)に移築・改修された。建築面積は20平方メートルである。

開市神社は、葛塚市の開設に尽くした庄屋の遠藤七郎左衛門宗寿ら遠藤家の3人をまつる神社で、昭和44年(1969年)に常盤町から稲荷神社の境内へ移ってきた。

稲荷神社(新潟市)の境内の配置

稲荷神社の社殿は西を向いている。拝殿の正面に立つと、その背後に幣殿を挟んで本殿が続く。本殿は境内の東北の隅にあり、拝殿の前からは陰になりやすい。

神輿庫は本殿の南にあり、開市神社拝殿は稲荷神社拝殿の南に、北を向いて建つ。拝殿の前で参拝したら南側へ回ると、本殿の側面、神輿庫、開市神社拝殿を順に見ていくことができる。

稲荷神社(新潟市)の祭礼と葛塚まつり

北区郷土博物館の説明板によれば、稲荷神社の祭礼は春が4月13日〜14日、秋が9月7日〜8日である。秋祭りは石動神社の祭礼とあわせて「葛塚まつり」と呼ばれ、9月6日から8日まで続く。境内には夜店が並び、参道から社殿へ勢いよく走り込む「他門(たもん)の神楽」の入れ舞が7日と8日に奉納される。最終日の8日の夜には、近くで灯籠の押し合いが行われる。

祭りの起こりは葛塚市の開設と結びついている。宝暦11年(1761年)10月8日、幕府から葛塚市を開く許しが出たことを記念して、稲荷神社と石動神社で祭りが行われるようになった。旧暦の10月はすでに冬で不便だったため、翌宝暦12年(1762年)から8月7日・8日に改められた。明治5年(1872年)12月に太陽暦へ切り替わると、翌年からは旧暦8月8日にあたる新暦9月8日に稲荷神社の秋の祭礼が営まれている。市の許しを得て水原代官所から戻った人々が喜び、桟俵(さんだわら)を頭に載せて舞ったのが他門の神楽の始まりと伝えられている。

稲荷神社(新潟市)の参拝と行き方

稲荷神社(新潟市)の境内では外から社殿を見ることができ、拝観料の定めは公表されていない。登録された4棟について、内部を一般に公開する案内は見当たらなかった。撮影に関する掲示や案内も確認できていないので、参拝や祭礼の妨げにならない範囲で外観を撮るにとどめたい。

最寄りはJR白新線の豊栄駅である。境内は駅の南東にあり、道のりで約750メートル、歩いて10分ほどかかる。登録上の所在地は新潟市北区葛塚字相生町3293(開市神社拝殿は3294-1)。駐車場の案内は確認できなかったので、公共交通で訪ねるのが確実である。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):稲荷神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007198
国指定文化財等データベース(文化庁):稲荷神社拝殿及び幣殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007199
国指定文化財等データベース(文化庁):稲荷神社神輿庫
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007200
国指定文化財等データベース(文化庁):開市神社拝殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007201
新潟市:市内の国登録文化財一覧
https://www.city.niigata.lg.jp/kanko/bunka/rekishi/bunkazai/ichiran/touroku.html
新潟市北区郷土博物館:文化財等説明板
https://www.city.niigata.lg.jp/kita/shisetsu/yoka/bunka/kyodo/webhakubutukan/setumeiban2.html
新潟市北区郷土博物館:説明板「稲荷神社(国登録文化財 葛塚)」(PDF)
https://www.city.niigata.lg.jp/kita/shisetsu/yoka/bunka/kyodo/webhakubutukan/setumeiban2.files/inarijinja.pdf
新潟市北区郷土博物館:説明板「開市神社(国登録文化財 葛塚 稲荷神社境内)」(PDF)
https://www.city.niigata.lg.jp/kita/shisetsu/yoka/bunka/kyodo/webhakubutukan/setumeiban2.files/kaiichijinjya.pdf
新潟市北区観光協会:葛塚稲荷神社
https://www.nk-kankou.com/gallery/otakara21/
新潟市北区観光協会:葛塚市と開市神社
https://www.nk-kankou.com/gallery/otakara22/

最終更新日: 2026.10.05

基本情報

名称稲荷神社(新潟市)
所在地新潟県新潟市北区葛塚字相生町3293
所有者宗教法人稲荷神社
指定登録有形文化財 4件
座標37.91547, 139.22091