別府タワー:泉都のシンボルが語る日本の塔建築の歴史
大分県別府市の海岸沿いに堂々とそびえる別府タワーは、日本屈指の温泉地・別府のランドマークとして約70年にわたり人々に愛されてきました。1957年(昭和32年)に完成したこの観光塔は、東京タワーよりも1年早く建てられた日本で3番目の高層タワーであり、2007年(平成19年)には国の登録有形文化財に登録されています。「塔博士」と称された構造家・内藤多仲の設計による「タワー六兄弟」の一つとして、戦後日本の建築技術の粋を今に伝えるとともに、展望台からは別府湾、温泉の湯けむり、そして周囲の山々が織りなす絶景を楽しむことができます。
歴史的背景
別府タワーは、1957年(昭和32年)3月20日に開催された「別府温泉観光産業大博覧会」の目玉施設として構想されました。地元財界人らが設立した「別府観光開発」が2億8000万円を投じてこの壮大なプロジェクトを推進しましたが、資金繰りの都合で工事が遅れ、博覧会の開幕には間に合いませんでした。タワーの完成は同年5月10日で、完成後は瞬く間に別府を代表する観光名所となりました。
当初は「観光センターテレビ塔」という名称でしたが、1961年(昭和36年)に「別府タワー」へと改称されました。最盛期には年間約90万人の来場者を迎え、修学旅行シーズンには1日4,000食を提供するほどの賑わいでした。完成時の従業員募集では数千人の応募者が当時の別府駅前通りまで列をなしたといわれ、タワーが地域にもたらした期待と興奮の大きさがうかがえます。
その後、経営難や所有者の変遷を経て、2021年(令和3年)にカイセイ地所トラスト株式会社がタワーを取得。2022年5月から大規模改修工事を実施し、2023年(令和5年)1月27日にリニューアルオープンしました。この改修では竣工当時の外装色が忠実に再現され、高さも90メートルから元の100メートルに復元されています。
文化財指定の理由
別府タワーは、建造から50年を迎えた2007年(平成19年)10月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。この登録は、タワーが持つ建築的・歴史的価値に基づいています。
設計者は、日本の建築構造学の第一人者であった内藤多仲(1886〜1970年)です。「塔博士」「耐震構造の父」と称された内藤は、早稲田大学名誉教授として耐震構造理論を確立し、歌舞伎座や旧日本興業銀行本店など関東大震災にも耐えた建築物の構造設計を手がけました。戦後は放送塔や観光塔の設計に注力し、生涯で60基以上のタワーを手がけています。
別府タワーは、内藤が1950年代から1960年代にかけて設計した6基のタワー「タワー六兄弟」の一つです。建造順に、名古屋テレビ塔(1954年)、通天閣(1956年)、別府タワー(1957年)、さっぽろテレビ塔(1957年)、東京タワー(1958年)、博多ポートタワー(1964年)と続きます。別府タワーは「三男」にあたり、この類まれな建築群の中で重要な位置を占めています。
構造面では、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)4階建の建屋の上に高さ約74メートルの鉄塔を組み、総高を100メートルとしています。塔身の断面は下部が八角形、中部が四角形、上部が三角形と変化する独特の形状を持ち、展望室のカーテンウォールには俯瞰を考慮した傾斜が付けられています。秒速160メートルの台風にも耐えうる堅牢な構造は、内藤の耐震技術の集大成といえるものです。
見どころ・魅力
展望台「海と山と湯のまち展望台」
地上55メートルの高さにある展望フロアは17階と16階の2層構成となっています。17階には「天空スクリーン 光のステージ」のほか、竣工当時の設備展示、土産品の販売、「展望カフェ〜湊〜」があります。16階には宇宙をイメージした「スペースファンタジー ギャラクシーウォーク」があり、それぞれ異なる趣で360度のパノラマ絶景を楽しめます。別府湾の碧い海、温泉街から立ち上る湯けむり、背後に連なる鶴見岳の山並み、そして晴天時には四国の海岸線まで見渡すことができます。
キタハマデッキと中間展望デッキ
5階屋上に設けられた「キタハマデッキ〜空と光のテラス〜」は、人工芝の上でくつろぎながら景色を楽しめるオープンエアスペースです。また、5階から上がれる中間展望デッキではタワーの外側から街並みを眺めることができ、通常の展望台とは一味違った視点を提供します。
夜景とライトアップ
2023年のリニューアルで設置された日本初のLED照明は、季節やイベントに応じてグラデーション変化する美しいライトアップを実現しています。展望台は22時まで営業しているため、宝石箱のように輝く別府の夜景を存分に堪能できます。この夜景の美しさが評価され、2023年8月に「日本夜景遺産」に認定されました。
おおいた温泉座
1階の「おおいた温泉座 別府本店」では、地域限定の土産品やグッズの販売に加え、足湯を楽しみながら地酒の利き酒や温泉フードを味わえます。地獄蒸し玉子や温泉ホットドッグなど、別府ならではのユニークなグルメが人気です。
アクセス・来訪情報
別府タワーは国道10号線沿いの北浜地区に位置し、JR別府駅から徒歩約10分とアクセス至便です。展望台の営業時間は9:00〜22:00で、16階のラウンジCELINEは深夜1:00まで営業しており、夜景をゆっくり楽しむことができます。入場料は高校生以上200円、小中学生100円、未就学児は無料です。駐車場も完備されており、館内はバリアフリー対応でエレベーターでの移動が可能です。レンタサイクルサービスも行われており、タワーを拠点に別府市内の散策を楽しむこともできます。
周辺情報
別府タワーの周辺には、別府温泉をはじめとする多彩な観光スポットが集まっています。徒歩圏内にある竹瓦温泉は、1938年(昭和13年)築の唐破風造りの壮麗な建物で、こちらも国の登録有形文化財に登録されています。名物の砂湯では、温かい砂に体を埋めるユニークな入浴体験ができます。
北浜公園や的ヶ浜公園は海沿いの遊歩道で結ばれており、別府湾を眺めながらの散策に最適です。別府八湯(浜脇・別府・観海寺・堀田・明礬・鉄輪・柴石・亀川)と呼ばれる8つの温泉郷では、それぞれ異なる泉質と風情を楽しむことができます。色とりどりの熱泉が沸き立つ「地獄めぐり」も別府を代表する人気観光コースです。タワー2階の別府アートミュージアムでは美術作品の展示も行われています。
Q&A
- 別府タワーと東京タワーにはどのような関係がありますか?
- 両タワーとも、「塔博士」と呼ばれた構造家・内藤多仲が設計しました。別府タワー(1957年)は東京タワー(1958年)より1年早く完成しており、内藤が手がけた「タワー六兄弟」の中で3番目に建造されたタワーです。名古屋テレビ塔、通天閣、さっぽろテレビ塔、博多ポートタワーも同じく内藤の作品です。
- 別府タワーの高さはどのくらいですか?
- 別府タワーの総高は100メートルです。1957年の竣工時に100メートルで建設されましたが、その後アンテナの撤去などにより約90メートルとなっていました。2023年のリニューアルで避雷針を付け替え、建設当時の100メートルに復元されています。展望台は地上約55メートルの高さにあります。
- 夜に別府タワーを訪れることはできますか?
- はい、展望台は22時まで営業しており、16階のラウンジは深夜1時まで利用できます。別府タワーは「日本夜景遺産」にも認定されており、季節ごとにグラデーション変化する日本初のLED照明によるライトアップも見どころの一つです。
- JR別府駅から別府タワーへのアクセス方法は?
- JR別府駅から徒歩約10分です。駅前通りを東(海側)に向かって進めば、タワーが見えてきます。車の場合は、大分自動車道の別府インターチェンジから約15分です。駐車場も完備されています。
- 展望台からはどのような景色が見えますか?
- 地上55メートルの展望台からは、別府湾の雄大な海景、温泉街から立ち上る湯けむり、背後に連なる鶴見岳などの山並みを360度一望できます。晴天時には四国の海岸線まで見渡せることもあります。夜は宝石箱のように輝く市街地の夜景が広がります。
基本情報
| 名称 | 別府タワー(べっぷタワー) |
|---|---|
| 所在地 | 〒874-0920 大分県別府市北浜三丁目10-2 |
| 構造設計 | 内藤多仲(ないとう たちゅう) |
| 竣工 | 1957年(昭和32年)5月10日 |
| 高さ | 100メートル(総高)、展望台は地上約55メートル |
| 構造 | SRC造4階建の建屋上に鉄骨造の鉄塔を架設 |
| 文化財登録 | 国登録有形文化財(2007年10月2日登録) |
| 所有者 | カイセイ地所トラスト株式会社 |
| 営業時間 | 9:00〜22:00(展望台) |
| 入場料 | 高校生以上 200円、小中学生 100円、未就学児 無料 |
| アクセス | JR別府駅より徒歩約10分、別府ICより車で約15分 |
| 電話番号 | 0977-21-3939 |
| 公式サイト | https://bepputower.co.jp/ |
参考文献
- 別府タワー - 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/143731
- 別府タワー - Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/別府タワー
- 【公式】別府タワー
- https://bepputower.co.jp/about/
- 別府タワー|カイセイ地所トラスト株式会社
- https://www.kaisei-gr.com/business/beppu-tower/
- 別府タワー | 観光スポット | 別府たび
- https://beppu-tourism.com/spot/beppu-tower/
- 別府タワー | 日本一の「おんせん県」大分県の観光情報公式サイト
- https://www.visit-oita.jp/spots/detail/5879
最終更新日: 2026.03.28