旧稲葉家別邸とは

旧稲葉家別邸は、大分県臼杵市大字臼杵字祇園洲にある旧臼杵藩主稲葉家の臼杵滞在所で、明治35年(1902年)に建てられた大書院を中心とする6件が、平成20年(2008年)7月8日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「きゅういなばけべってい」。現地と臼杵市の案内では「旧臼杵藩主稲葉家下屋敷」、略して「稲葉家下屋敷」の名で呼ばれている。

稲葉家は、関ヶ原の合戦での働きにより慶長5年(1600年)に美濃国の郡上八幡から臼杵へ移された大名家で、15代久通の代に明治4年(1871年)の廃藩置県を迎えるまで、およそ270年にわたって臼杵藩5万石を治めた。廃藩ののち一家は東京へ移ったが、旧稲葉家別邸はその稲葉家が臼杵に戻ったときに滞在する屋敷として建てられた。

臼杵市のパンフレットによると、東京へ移ってからも稲葉家は第百十九国立銀行や旧藩士族の会社「留恵社」に出資するなど臼杵の経済にかかわり、臼杵を訪れる機会は少なくなかったといわれる。その滞在先となったのがこの別邸だった、という説明である。

三の丸跡に建った明治の武家屋敷

旧稲葉家別邸の建つ一帯は、江戸時代には臼杵城の三の丸にあたり、評定所や米蔵といった藩の重要な施設と、重臣たちの屋敷が並んでいた。明治の建物でありながら、臼杵市は旧稲葉家別邸を「武家屋敷の様式を色濃くとどめた」建築と紹介している。城下の中心に近い土地に、旧藩主家の格式をそのまま持ち込んだ屋敷である。

旧稲葉家別邸はのちに一時期料亭として使われた。市のパンフレットは、この時期の使い方が外観を生かすものだったため、大書院の全体の構造に大きな変化はなかったと記している。現在は臼杵市が所有し、文化庁のデータベースによれば、御門は平成元年(1989年)、台所と外塀及び東門は平成2年(1990年)に改修を受けている。

旧稲葉家別邸の6件と屋敷の配置

旧稲葉家別邸で登録有形文化財となっているのは次の6件で、登録番号は44-0141から44-0146まで続いている。年代は大書院が明治35年(1902年)、ほかの5件が明治35年(1902年)頃である。

  • 大書院:木造平屋建、建築面積190平方メートル
  • 御居間:木造平屋建、建築面積112平方メートル
  • 台所:木造2階建、建築面積122平方メートル
  • 土蔵:土蔵造2階建、建築面積28平方メートル
  • 御門:木造、間口2.7メートル
  • 外塀及び東門:塀の延長45メートル、東門の間口2.3メートル

大書院・御居間・台所の3件は「造形の規範となっているもの」、土蔵・御門・外塀及び東門の3件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で登録された。住まいの中心となる建物と、屋敷の外まわりを固める建物とで、評価の軸が分かれている。

配置をたどると、旧稲葉家別邸の御門は南の通りに面して開き、その正面、敷地の中央に大書院が南を向いて建つ。大書院の東には畳廊下でつながる御居間があり、御居間の南に台所、台所の南に土蔵が続く。外塀は御門の脇から東へ延び、その東の端に通用口の東門を構える。庭園は建物群の北側に広がる。

臼杵市は、客を迎える「表」の建物を大書院、家族が日々を過ごす「奥」の中心を御居間と説明している。玄関から入って大書院、畳廊下、御居間、台所へと進む順路は、そのまま表から奥への移り変わりをたどることになる。各棟の構造や見どころは、それぞれのページで詳しく扱っている。

旧稲葉家別邸の見学とアクセス

旧稲葉家別邸は「旧臼杵藩主稲葉家下屋敷」として臼杵市が公開しており、利用時間は午前9時から午後5時まで(最終入館は午後4時30分)、年中無休である。入館料は大人(高校生以上)330円、小人(小・中学生)160円で、臼杵市民は身分証明書の提示で無料になる。臼杵石仏などとの2施設共通券(大人710円)、4施設共通券(大人1,140円)もある(2026年9月確認)。

大書院・御居間・台所と庭園からなる本棟は貸館にも使われており、貸し切りの日には観覧が制限される。臼杵市は制限の日時を市のページで告知しているので、訪ねる前に確かめておきたい。ペットの同伴は庭園に限って認められている。建物内部の撮影についての公式な案内は見当たらなかった(2026年9月確認)。

同じ敷地の西には、安政6年(1859年)頃に建てられた上級武士の住宅である旧平井家住宅があり、旧稲葉家別邸の庭園から歩いて行ける。

旧稲葉家別邸へは、JR日豊本線の臼杵駅から徒歩で約15分。車の場合は東九州自動車道の臼杵インターチェンジから約10分で、市のパンフレットの案内図には近くの市営駐車場が示されている。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)旧稲葉家別邸大書院
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007326
国指定文化財等データベース(文化庁)旧稲葉家別邸御居間
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007327
国指定文化財等データベース(文化庁)旧稲葉家別邸台所
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007328
国指定文化財等データベース(文化庁)旧稲葉家別邸土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007329
国指定文化財等データベース(文化庁)旧稲葉家別邸御門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007330
国指定文化財等データベース(文化庁)旧稲葉家別邸外塀及び東門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007331
臼杵市 旧臼杵藩主稲葉家下屋敷
https://www.city.usuki.oita.jp/docs/2014013000108/
臼杵市観光協会 旧臼杵藩主稲葉家下屋敷
https://www.usuki-kanko.com/sightseeing/%E7%A8%B2%E8%91%89%E5%AE%B6%E4%B8%8B%E5%B1%8B%E6%95%B7
臼杵市 旧臼杵藩主稲葉家下屋敷 パンフレット(PDF)
https://usuki-kanko.com/cms/wp-content/uploads/2025/01/inabakeshimoyashiki.pdf

最終更新日: 2026.09.29

基本情報

名称旧稲葉家別邸
所在地大分県臼杵市大字臼杵字祇園洲6-6
所有者臼杵市
指定登録有形文化財 6件
座標33.12136, 131.79923